作戦2 周りから攻めよう
「どうせ私のことなんて好きじゃないでしょ。手を離してよ」
「あいつのところに行くのか」
「そうよ。彼は私のことを好きだって言ってくれたもの…」
そう言った瞬間、マリは強い力でシュウヤの胸に引き寄せられ、抱きしめられた。
「行くな。俺もお前が好きだ」
理子から借りた漫画を読みながら考える。
ゼロから1になるにはどうしたら良いのか。どうすれば藤崎に興味を持ってもらえるのだろう。最初シュウヤはマリに興味がなかったのに、徐々にマリの魅力に気づき、最後には好きになった。でも漫画と同じようになれるとは全然思わない。
「俺は別に仲良くしたくない」
この言葉が何度も頭の中を流れる。恥ずかしさと悲しい気持ちが交錯する。
拒絶されたのに、接近されたことへのドキドキがまだ残っていることに、情けなさを感じる。
「辛いな」
次の日学校に行くと、靴箱で藤崎にばったり会った。
「お、おはよう」
俺が声をかけると、藤崎はちらっと俺を見たが、すぐに目を逸らして
「おはよう」
と言うとそのまま行ってしまった。
無視はされなかった。そのまま立ち尽くしていると、後ろから背中を叩かれた。
「恭おはよう!何でぼーっと立ってんの?」
シバだった。
「おはよう。お前は朝からご機嫌だな」
「まぁな!恋してるから」
俺も昨日はこんな感じだったのになぁ。1日にして、天国から地獄に落ちた気分だ。
「シバはさぁ、理子がお前に興味がない感じだったらどうする?」
「え?そりゃあグイグイ迫っていって、興味をもってもらうしかないかな。今実際そんな感じだよ。こっちが好意を見せていけば、あっちが意識してくれるようになるだろ」
「そんなもんかな」
「恋の法則だろ!ってか恭も好きな人いるのか?」
「あぁ。でも、仲良くしたくないって言われた」
「まじか」
シバは憐れむような顔で俺を見て、
「お前、それは興味なしを通り越して、嫌われてるかもしれないな」
「え、そうなのか?」
「まぁ元気出せよ!!そして高井さんに俺のことすすめといてくれよー!“友達を使って俺の好感度を上げよう作戦”に協力して!」
シバの周りに花が咲いてるように見える。楽しそうでいいな。
俺って嫌われてるのかなぁ。もしかして、トビウオだなんて言ったからかな。
教室に入るとすぐに藤崎の姿を探す。いた。もう席についてる。
窓から入る風に、薄茶色の髪が揺れる。
触りたい。そんなことを思いながら見ていると、藤崎の前に立って話している谷が目に入った。
いいなぁ、谷は。藤崎と友達になれて。谷は藤崎にとって、仲良くしたい相手なのか。
その時、ふとシバの言葉が頭をよぎった。
「“友達を使って俺の好感度を上げよう作戦”に協力して!」
それだ!!