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僕は王子様に恋をする  作者: はま乃
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作戦1 お友達から始めよう

 恋をすると女の人は綺麗になるというけれど、俺には外見の変化はなかった。変わりようのない坊主頭。

 でも違う部分では、いくつかの変化があった。

 まず、朝起きたときから気分が良いこと。早く学校に行きたい。こんな気持ちになったのは小学校のとき以来だ。

 それから、教室にいるとやけに藤崎ばかりが目に止まるということ。昨日まではなんとも思っていなかったのに、藤崎の行動の一つ一つが気になってしまう。

 後ろ姿を見つめるのも楽しい。藤崎とよく一緒にいる(たに) 涼太(りょうた)が羨ましくも思える。


 ぼーっと藤崎を眺めていると、後ろから背中を叩かれる。

「貸すって言ってた本持ってきたよー!漫画が5冊と小説が1冊」

理子だ。

「いてーなぁ。ってかなんで学校に持ってくるんだよ。家に渡しに来いよ。近いんだからさ!」

「せっかく持ってきてあげたのに、ずいぶんな言いぐさだね」

「うぅ。悪い。でもあんまりみんなに知られたくないからさ。次からは俺がお前んちに借りにいくわ」

 理子は俺の教室の中を見渡すと、

「あ、やっぱり!王子がいる」

と言った。

「あ?王子?誰のこと?」

すると理子は小さい声で

「今窓側の席の前から3番目に座ってるイケメンだよ!藤崎望くん」

「お前っ!!藤崎のこと知ってんのか?」

俺は興奮しながらも小声で聞いた。

「もちろん。超有名人じゃん。アメリカ人とのハーフなんだって。背が高くてスタイル良し、顔も良し、成績も優秀らしいよ」

「不公平だな、神様は」

自分の平凡さが、急に恨めしく思えた。

「それに、中学のころからモテモテだったらしいよ」

「ふーん。あ、もしかして理子がよく6組にくるのって、藤崎目当て?」

理子は呆れた顔で

「そんなわけないでしょ。私の好みじゃないもん。王子は見た目はいいけど、めちゃくちゃ冷徹らしいよ。何人にも告られたけど、みんな冷たくあしらわれて振られたって。私はもっと優しい人がいいな」

そういうと、もう予鈴が鳴るからと足早に教室に戻っていった。

 女子からモテモテでなんでもできるパーフェクトな王子様か。俺とは違いすぎるな。思わずため息がもれる。

 「おい恭!!また高井さん来てただろー!ほんとお前ら仲良いな!その紙袋なんだ?」 

 シバが絡んでくる。

「え、別に!なんでもねぇよ!」

「うろたえるなんてますます怪しい!!見せろ!」

やばい!

「これは単なる、、…エロ本だ」

「エロ本???高井さんの??」

焦るとしょうもない嘘をついてしまうのは何故なんだろう。もっと上手くごまかせたはずなのに。

「高井さんもエロ本とか読むのか。それって最高じゃん!!!かわいい上にエロさもあるなんて!」

理子には悪いけど、その場を上手く切り抜けることができた。


 帰りのホームルームが終わると、藤崎はすぐに教室を出て行く。俺はすぐに追いかけて、声をかけた。


「藤崎、今日も部活?」

藤崎は振り返ると一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐにいつもの無表情に戻り

「うん」

そういうと、また廊下を歩き出す。

「待って」

思わず俺は腕を掴んだ。

藤崎はおもむろに嫌そうな顔をして

「何?」

と言った。やべっ、やっちまった。俺はすぐに手を離して謝る。

「ごめん」

そして続けて、今日ずっと聞こうと思っていたことを口にする。

「あのさ、ライ○交換しない?俺お前と仲良くなりたくてさ」

よし、言えたぞ。期待と不安が入り混じり、ドキドキしながら返事を待つ。

すると、藤崎は急に笑顔になって、

「お前、俺と仲良くしたいの?」

と聞いてきた。

「お、おう」

そう答えると、藤崎はフッと鼻で笑って、俺の耳元に顔を近づけた。

 俺はこのパターンをよく漫画で見た。顔を近づけられた後にくるのは、、キスしかない!!これはキスされるやつだ!!!

 心臓が高鳴る。

 しかし、俺の期待も虚しく、次の瞬間藤崎は冷たい声で

「俺は別に仲良くしたくない」

そう言い放って、俺のそばを離れていった。

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