【改訂版】おまけエピソード【約束の騎士】
「ねぇルイーズ」
「なんでしょうサラ様」
「結局、私の騎士にはなってくれなかったね」
ルイーズは今、公の場に出なくなった王妃様の護衛から外れ、次女のアンジェリーナの護衛騎士に就くことが決定した。
「あーあ、私が嫁がなければルイーズは私の騎士だったのに」
結婚、やめちゃおうかな。といたずらにサラは笑う。決してやめる気などないというのに。
明日、サラは嫁いでいく。騎士団の中でも特に優秀だった侯爵家の者と恋仲になり、去年めでたく婚約をしたのだ。アンジェリーナが産まれた次の年に産まれた弟が王位を継ぐので安心してサラは嫁ぐことが出来ると嬉しげに話していた。
「どう?この婚礼衣装」
明日の結婚式に向けて衣装の最終調整のためにサラは婚礼衣装を纏っていた。
その姿はまるで女神のように美しく、ルイーズは眩しげに目を細めた。
「よくお似合いです」
「あの人、きっとまた私に惚れてしまうわね」
一体誰に似たのか、サラはとても勝気で自信家に育った。はっきりとものを言う姿は凛々しく、つり上がった眉とは対象的なたれ目が愛らしい。可愛らしい顔から放たれる容赦ない言葉に数々の男が撃墜されていったのをルイーズは思い出した。そんなサラを1人の男が射止めた時は城中が大騒ぎだった。
2人揃って王様と王妃様へ挨拶へ赴いたあの日は鮮明に思い出すことが出来る。騎士服に身を包んだ少し頼りなさげな穏やかな男と、その隣を凛と歩くサラ。本当にこの人で良いのかと王様が尋ねた時のサラの幸せそうな顔は王様によく似ていた。
「ルイーズ、アンジーをよろしくね」
「勿論です」
アンジェリーナはあれから大きくなり、今ではもう立派な淑女だ。デビュタントをまだ迎えてもいないのに、縁談の話が持ち上がるほどそれは美しく成長した。
見た目は王様に、中身は王妃様に似ていると皆が噂をするほどにアンジェリーナは2人によく似ていた。
ほんわかとした雰囲気を纏うアンジェリーナをサラはとても可愛がった。私が守るとばかりに少し過保護気味に世話を焼いたし、どこへ行くのも一緒だった。
「……あのね。私きっと王族でなかったら、騎士になったと思うわ」
「サラ様が、ですか……?」
「私、ずっとルイーズみたいになりたかった。美しくて格好良くて勇敢で強い。貴女は私の憧れだった。ううん、今も憧れの存在よ」
「……勿体ないお言葉です」
「だからね、アンジーのこと安心して任せられるわ」
そう言ってサラはとても美しく笑った。
「約束よ。アンジーのこと守ってね」
「はい。約束です」
結婚式はそれは壮大に行われた。
頻繁に街に降りては民と会話をするサラは国民たちにそれはそれは愛されていた。そのため、晴れ姿を人目見ようと多くの人が訪れたのだ。泣いて喜ぶ者の姿もあった。
幸せな笑い声に包まれたその日は、よく晴れた太陽の輝く日だった。
このお話を持ちまして、『愛する人が出来た僕は君に婚約破棄を告げる』完結と致します。
ここまでお読みくださった方、誠にありがとうございます。
これ以降、編集や続編は出ません。
誤字脱字のみ訂正致します。
拙い文ですが、お読みいただけたこと本当に嬉しく思います。




