表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

【改訂版】4話


「姫様!お待ちください!」

「ふふ!こっちよルイーズ!」

「城内では走らないでください!」


 王城で小さな女の子を姫様と呼び追いかけるルイーズの姿があった。周りの者たちはまたやってるのかと呆れたり、微笑ましい顔で見ている。


「だって!やっと私の妹が生まれたのよ!」

「まだ性別はわかっていませんよ」


 姫様を捕まえることに成功したルイーズは姫様が逃げ出さないように小脇に抱えた。不敬と言われそうな抱え方だが姫様の両親は公認しているので文句を言うのは姫様ただ1人だけだった。

 

「絶対妹よ!私には分かるもの!」

「もう着きますから、落ち着いて服の乱れを直しますよ」

「そうね!お姉様としてしっかりとした姿を見せないと!」

「全く……とんだお転婆姫ですよ」


 とある一室の前で姫様を降ろし、自らも制服を正すルイーズ。姫様の準備が整ったのを確認したらノックをして声をかける。するとすぐに入室を許可する返事が聞こえた。

 ルイーズが扉を開けるその隙間に一瞬で姫様は入り込んだ。お行儀が悪いが今日くらいは許されるだろう。


「失礼致します。国王陛下、王妃殿下、第二子出産おめでとうございます」

「ありがとうルイーズ」

「ありがとうございますルイーズ。さぁどうか貴女も近くへ」


 王妃に招かれ寝台の近くまで足を進める。王妃の腕に抱かれた産まれたばかりの赤ん坊は、姫様が産まれた時とよく似ていた。


「ルイーズ!私の!妹!」

「サラ、どうして妹だって分かったんだ?」

「夢で見たもの!」


 自信満々にそう答える姫様、サラが可愛らしくて自然とその場にいた人達は笑顔になった。


「お名前は?」

「まだ決めてないの。サラ、貴女はどういう名前がいいと思う?」

「アンジー!」


 その名前を聞いた瞬間、ルイーズたちは少しだけ反応した。


「どうして、その名前が良いのかしら?」

「夢で聞いたの!その時はもっと長いお名前だったけど……忘れちゃった……」

「そう、とっても素敵な名前ね。クロヴィス様」

「ああ、とてもいい名前だ」


 寄り添う家族はまるで絵画のように美しかった。

 赤ん坊はアンジェリーナと名付けられ、愛称のアンジーと呼ばれて愛されることになる。


「ねぇ、お母様。私お姉様になったのよ」

「そうね?」

「だからね、ルイーズを私の騎士にちょうだい!」

「まぁ」


 ルイーズもそれには驚いて声を出してしまった。慌てて口を閉じ、誤魔化すように咳払いをした。


「ダメよ。ルイーズは私の騎士ですからね」

「ぶぅぅぅぅ!!」

「私が回復したらルイーズは私の騎士に戻るんですから」

「サラの護衛騎士はもう少し先だ」

「ルイーズが良いのぉぉ!!」


 元気よく駄々をこねる姿についつい笑いが漏れる。

 数日の間、サラの遊び相手として派遣されただけでこの懐きようだ。どうやら騎士服を着たルイーズをとてもお気に召したらしい。

 それを見て、ルイーズは騎士になったことへのこの上ない喜びと幸せを感じた。

 そしてそんなルイーズを国王陛下と王妃殿下は嬉しそうに見つめていた。





 王様が代替わりをしてから、女性騎士という職業が誕生した。それは女性につけるための女性の騎士だった。

 初めこそ反感があったが、その有用性が示されると徐々に受け入れられていった。何せ最初の騎士が現国王の元婚約者で、王妃の護衛騎士だったのだ。表立って悪く言うものは元より少なかった。

 

 最初の女性騎士、ルイーズは晩年まで結婚することなく護衛騎士としての役目を果たした。王妃を狙った賊を1人で倒したことは代々王城で語り継がれている。

 



愛する人が出来た僕は君に婚約破棄を告げる [完]

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ