【改訂版】愛する人が出来た僕は君に婚約破棄を告げる【1話】
ちょこっと書き直したり足したりしました。
基本の部分は変わっておりません。
意見を取り入れ、ジャンルを異世界(恋愛)→ヒューマンドラマへ移行。
「愛する人が出来たんだ。ルイーズ、今夜君との婚約を破棄するよ」
午後を過ぎた暖かな日差しが注ぐ美しい薔薇園でその言葉は紡がれた。
「それは、本当ですか……殿下」
今日は週に1度のお茶会の日。いつものように王城の薔薇園で婚約者の王子殿下であるクロヴィスと共に侍従が用意した菓子と紅茶を嗜みながら薔薇を眺めている時のことだった。
ルイーズはクロヴィスから告げられた言葉を理解するのに少し時間がかかった。
ルイーズとクロヴィスは5つほど年は離れているが所謂幼馴染みというものだった。ルイーズがデビュタントを迎えるとそこに婚約者という称号が増えた。
婚約者になってから、ルイーズは国の王子の婚約者として相応しくあるべく淑女として、王子妃になるものとしての教育に熱を入れて取り組んだ。
その結果、ルイーズは貴族の中でも評判の良い淑女として皆の憧れる存在へと登り詰めたのだ。
しかし、今ルイーズはクロヴィスから婚約破棄を告げられた。
まさかこんな日が来るなんてと、手に持つカップが震え小さくカタカタと音を立てる。
「ルイーズ、君には感謝している。これまで僕の心の支えだった。それは疑いようがない事実だ」
「殿下……」
ルイーズは零れ落ちそうな涙をグッと堪え、クロヴィスの顔を見る。いつもと変わらぬ優しい瞳がルイーズを見ていた。
共に学び、共に遊び、共に生きた。その懐かしい日々がルイーズの頭の中を駆け抜ける。
このお茶会の場の薔薇園は特に思い出深い場所だった。ルイーズとクロヴィス、そしてもう1人の幼なじみと初めて出会ったのがこの薔薇園だ。子供にはつまらないお茶会を抜け出して中庭を探索したり、騎士団の訓練場に忍び込んで木剣を触ってみたり、城内で隠れんぼをしたり。
それから――……
「ルイーズ、私の誇り高き騎士。君のおかげで僕は今日この日まで守られてきた」
「私は、もう必要ないのですね……」