第九話:『死の反対は生なのか?』
色々と面倒な事にはなったが
確かにイザナミに巡る命の躍動と魔力から
適性が覚醒したのは分かった。
「今の私なら、出来るでしょうか」
「やってみりゃわかるさ」
「…ですね」
そういってもう一度魔法を使おうと目を凝らしたイザナミは
最初とは大きく違って異様なまでに鋭く魔力が放たれていた。
「『魂構築』!」
そう唱えると、先ほどは微動だにしなかった魔力が
渦のように混ざり合って何もなかった空間に
骨格が発生して、神経が巡り、肉が敷かれ
そして皮膚を張り巡らし、毛が身体を守る。
「…この子は…?」
空で丸まっていたその生物は静かに着地して目を覚ます
外見は狼のようだった、銀色の毛並みが美しい。
「『シルバーバレット』って狼のモンスターだね
中々美しい姿じゃないのかな?」
「私…しっかり…!
や、やりました!カルネ先生!」
「殆どお前のやった事じゃねぇかな」
「いえ、先生が居なくては確実にここまで来れませんでした!」
そういって手足をバタバタさせて喜んでいる
しかし、死霊を扱う程しか出来ることのない自身と比べたら
生命を生み出すこの力はどう考えても危険すぎるのでは?
『お前と違って魔力の限界があるからな』
あ~…そういう、意外だな、生命魔術には出来ないのか。
『生命を扱えるだけでお前みたいに半分人外じゃないからな』
ひでぇ言いようだ。
「っと、シルバーありがとう…
この子はどう帰すんだい?」
「作った命はそのまんま野生に返すといい
どれ『亜空接続』」
そう言うとシルバーバレットはどこかに消え去った。
「…まさか、コレで作った命は」
「君を親や主と慕う新しい生命だ、消したりとかは無理」
「ええ…!?」
「マジかよ」
俺の死霊はそのまんま地に還せるが作った命は命か…
いや、だとしてもそこそこ問題点があるのでは。
「…いえ、ならばこそ自身の力に驕らず溺れず付き合う意志が要りますね
カルネ先生!よろしくお願いします!」
「俺に参考になる面があるだろうか…」
「そういう所です!」
なんでここまで懐かれてるのかは分からないが
別の理由があるにしても助けると言ったのだから
まぁ…責任はあるだろう。
「しかし、生命魔術なんてイザナミちゃんは聖女のようですね」
「…いや、そういった者にはなれぬ立場ですよ」
何か含みのある言い方だが、掘り返す意味もない
取り敢えず、彼女の魔法の練習を手伝うか。
「イザナミ、取り敢えず魔法の練習だな」
「! わかりました!」
「あ、ならこれどうぞ」
そういうガストが紙を渡してきた
中には生命魔術出来ることが書いている。
「俺の時は口頭だけだったくせに!?」
「可愛いお嬢ちゃん相手だからね」
こいつ…。
「まぁいい…えっと『魂構築』以外だと
『選択進化』と水魔法ねぇ」
「水魔法が使用可能、なんですか?」
「生命の起源は海だから、そこら辺が作用してんだろ
それより『選択進化』がわからんな」
「…取り敢えず使ってみます
『選択進化』!」
そう唱えると、瞬く間にイザナミの肉体が
成長を遂げてまだ少し幼い肉体が
細く鍛えぬいた肉体に代わり
短かった髪が長く広がった。
「…先生、縮みました?」
「縮んでねぇかな、むしろお前が…デカい」
何となく何が起きたかはわかる
自身の肉体を大きく成長させ…ん?
「なんでしょうこれ」
「翼かねぇ?」
大きい翼が背中から広がる
もしかして、進化ってそういう…
「…多分、そういう意味合いになるんですよねコレ」
「進化を操るとはこれは…凄いな」
「どうしましょう、コレ」
「翼外す進化できるんじゃねぇの?」
「ああ、確かに…『選択進化』!」
そう唱えると翼は縮んでいき消失し
身長も小さく戻った。
「なんだか、不思議です、大きく変わってたと思えない」
「へぇ…」
中々不思議な話だが、まぁ良いとする
後は、鍛錬あるのみか。
「うっし、じゃあ…あとは慣れるまでやるか」
「わかりました!」
俺の魔法の練習ついでにしっかりやるか!
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