第二話:『死んだけど死んでなかったっぽい』
目が覚めた時、俺は袋に詰められて胸にナイフがブッ刺さってた
しかも血が出まくってて、首には縄の跡が酷かった
…だが、それ以上に恐ろしいのはその状況下で俺は
非常に爽快な寝起きを感じてた、という点だ。
「ああ!カルネ君!!
だだだだっ大丈夫ですか!!」
聞きなれない声だ、誰だろうかなんて思っていたら
布を破り先生の衣装を着た女性が居た。
「昨日不審者三名が校内に入り込んだことが確認されてて
今朝その三名がここで気絶していたの!
でもカルネ君が行方不明で…良かったです!無事で!!」
涙ぐんだ目で言われると申し訳無くなる
なんか俺面倒なことになってたらしい。
「あはは…心配してくださってありがとうございます
俺は無事です」
「良かった!怪我もなさ…なさ…」
首の跡と胸の傷を見て先生が凍り付いた
そこから先は医療班に運び込まれて
俺が何か言う前に凄い治療魔法とかしてもらった。
「君、運よく心臓に傷が無かったんだねぇ
出血量からしても死んでておかしくなかったけれど
これは神に感謝した方がいいかもね」
胸の傷は塞がっていた、でも確かに凄まじい出血していたのに
良く生き延びたものだ…。
「カルネ君、犯人は誰かが雇った殺し屋だったそうです…
心当たりとかは…」
「流石に殺し屋のアテはないですね」
「あはは、そりゃあそうですよね…」
捕まったのは良いのやら悪いのやら
アテがないのは半分噓だ、何となく理由は分かる
大方スポンサーか他の生徒の差し金だろう。
「…そういや、今日の授業とかは?」
「流石に全校中止です!カルネ君も休んでてください!」
「うん、君休んだ方がいいよ」
保健室の先生と担任らしい先生がそう言うので
仕方なく寝ることにした、でも俺は不気味なほど
怪我の後遺症とか感じないんだよな、どういう事やら。
保健室のベットの上で先生…いや
担任のシェリス・マテリア先生や保健室の先生のベルルン・ゼラス先生と
話して暇つぶししていたが、会議で退出していったのもあり
窓の外眺めつつ寝てたものの、のどが渇き水瓶を取ろうにも
ちょっと遠くて難儀していた。
「念動魔法は知らねぇんだよな…」
そういうの学べるのはここにきてからだと想定してたので
ちょっと遠くのものを近づけるのすら難しい。
「意外と近づけるぐらいなら何とかならねぇかな…!」
魔力を向ける意識をしてみると、まぁ動くわけも…………ん?
動いてる、間違いなく近づいてきてるぞ!?
「"掴んでる"な」
直に持ってるわけじゃないが、魔力でなにか捕捉してるのを感じる
不可視の手が水瓶を持ち運んでいるのだ。
「………………まぁいいや」
とりあえず水を飲んで寝る、こういうのは
こんな状況じゃわかりゃしないもんな。
「………………」
とは言え、偶然じゃないか確かめるくらいは良いだろう
そんなこと思いながら窓の外の木を
掴んで揺らしたりしつつ寝たのだった。
「カルネ君、起きてますか?」
「マテリア先生?」
「そろそろ保健室閉めるそうなので
一旦寮に移動で…」
「了解です」
ふっつうに立ち上がり何となく胸をさする
なんか刺さってた跡がある、夢じゃないんだなぁ……。
「痛みます?」
「いや特には」
深呼吸すると、気分が良いのを改めて感じる
今日目覚めてから、生まれ変わったように身体の調子が良くて
謎の魔法も使えている、不思議だ。
「先生、すいません」
「どうかしました?」
「魔法を試せる場所ってあります?」
気になる事は試しておくに限る。
そう聞いてから案内された場所は
雑に用意したのであろう空き地だった。
「中央組はその…施設が許可制で…」
「充分です」
「そ、そう?ならよかった!」
空き地に落ちてる大きめの岩を見る
さっき水瓶を運んだように"掴む"
「うん、掴んでるな…」
しかし、一般的に聞く念動と違って
ここまで自由に把握できるのは不思議だな
一般的に念動魔法は掴んだものを念じる事で
単純な動きをさせられる程度だが
こちらは本当に手に掴んだように自由に動かせる。
「カルネ君……それどういうことですか…??」
「なんか座れました」
デカイ岩の上に座りつつ動かすと
所謂魔法の絨毯のように空を飛べるようだった
まぁ…おかしい、念動魔法はそこまで出力はないし
乗れるほど精密には動かない。
「満足しました、なんか朝から色々と不思議な点が多くて」
「そ、そうですか…
あ、今日の宿泊は寮ではなく
校外の宿だそうです、場所は…」
なにか怪しい点もあるが、事件現場近くの寮だし
流石に仕方ない点もある…しかし、校外か。
「了解しました」
断れることでもない、とりあえず行くことにするいやな
明日は授業があるらしいしな。
■
案の定、校外に出てからつけられている
いやな気配はしてたがこうも分かりやすいのもなぁ…。
「どうしたもんか…」
なんて考えてると、目の前にマントを羽織った誰かが居た
…誰だ?悪意は感じないが…。
「坊主、面白いことになってるな」
「ただの暴漢に狙われてるだけだぞ」
「そっちじゃねぇっての、ホレ」
背後が光り輝いて吹っ飛ぶ
暴漢共はすっ飛んでいった
…なんだこいつ。
「お前さん、五属性に適正はねぇな?」
「…おう」
「そのかわり、もっと良い才能がある」
「いや、お前誰だよ…」
「あん?俺はシャルベデ・ガストだ」
「馬鹿言うな、賢者ガストは御伽噺の人間じゃねーか」
「この顔を見てもか?」
「………………ウッソだろ、マジで化けて出た感じか」
「うん、俺は幽霊だ」
目の前の男は神話の存在と言っても過言ではない
シャルベデ・ガスト、人の身で神の魔法を使ってた大英雄
その幽霊……顔が同じでも信じがたいが
なぜだか、コイツがソレという確信があるのだ。
「ちなみに、俺が俺とわかるのはお前の才能さ
普通はただの独り歩きするマントでしかねぇ」
触れようとしたら透けた、やっぱ幽霊だ!!!????
「へへ、お前のが面白いがな」
「どこがだよ」
「お前さんだって半ば死んでるぜ」
「………………は?」
何言われるかと思えば、俺が死んでる?
「死霊魔術の適正持ってるからな」
「死霊魔術……?」
「死に基づいた魔術体系だ、それに覚醒する人間は皆
死に瀕してそれと共に覚醒する
故に半分死んでて生きてるような存在になり
俺みたいな幽霊と関われるのさ」
驚いたが、腑に落ちた
確かにどう考えても死んだ状況だったからな。
「それより今夜は遊ばないか?
俺がその魔法、教えてやるよ。」
幽霊と化した賢者が言う言葉に俺はここ最近でも一番
愉快な気分になっていた。
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