第一話:『追放されても負けてたまるか』
俺、ハルツェン・カルネは絶体絶命の状況に追い込まれていた
国内でも最大の王立騎士学園『サルヴァトール』に入学した俺は
何とか入学にはこぎ着けたものの…。
「ハルツェン・カルネ、当生徒は西組に配属す、異論はあるか!」
「はい!」
入学式を終えて、クラス決めになった際にそれは起こった
先に西組になっていた貴族だか騎士だかの連中が口を揃えて言い出した。
「その生徒は秀でた魔術適正を持たない生徒であり
多少の基礎才覚を差し引いても我々のような適正ある生徒と
同じクラスに配属する事は望ましくないと思われます!」
魔術適正、五属性の内一つ大きく秀でたものがあれば
ソレがあると判断され、そうでないのならば無適正扱いなのがこの世の中だ
しかし、だとしても俺には魔術適正は無くても魔術の才能はあった
基礎魔力の貯蓄は多く、制御や発動も高精度だ、故に入学までこぎ着けたというのに。
「ふむ、それも正しいな…教育に足並み揃わない可能性があるのは望ましくない
…では、此度のカルネの配属先は中央組とす!」
してやったと言わん顔で言い出しっぺ共が見ている、全く酷い嫌がらせだ
中央組と言えば、名前こそ大層だが、追い出された生徒のたまり場に過ぎない
東西南北組において一般的魔術教育の流れに添えない生徒を
適当に捨てて、大したフォローも無く暗に自主退学を待つ。
「ッ……」
貧民産まれの俺にとって、一般的な出世ルートを模索してここまで来たというのに
中央組になってしまったらゲームオーバーもいいところだ
しかし、貧民産まれの俺には異論を唱える権利はあって無いようなものだ
この王立騎士学園において金も利権も無い貧乏人に意見する力はない。
(いや、まだだ…中央組に入れられたとしても
スポンサーからの推薦を受けるチャンスはある!
ここは甘んじて受け入れろカルネ、そういう場所だ、そういう場所なのだ!)
唇を噛み怒りを堪える、ありもしない可能性に自棄になるよりも
少しの光明をモノにする方向でいくしかないのだ
無茶が出来ない妹の生きるための金を稼ぐためにも!
雪辱を誓い、家族の顔を浮かべつつクラス分けを終えた後
寮へ帰る事になった際、いやらしい顔を浮かべた貴族の坊主が
俺に向かってこう言った。
「カルネ、お前はこの学園には必要無いんだよ」
今にも殴りたくなるが、そんなことで評価を削るのは得策ではない
言い返すこともなく寮に向かって歩き出したのだった…。
■
中央組の寮もまた酷い物だ、四クラスと比べれば
あまりにも小さく、荷物を置いたり勉強出来る個室は兎も角
眠るのは雑魚寝、かつベッドすらないので布を敷かれてるだけだ
塗装もおざなりで、白くて高級感あるあちらさんの建物と違い
辺境の宿のようだ。
「兄ちゃん、頑張るからな…」
誰も管理すらしないボロ屋のすきま風厳しい部屋で
毛布に包まり眠りにつく…。
悪意をもって入り込んだ連中に気付くこと無く。
「…このガキか」
「同じ貧民産まれだが、同情はしねぇぞ」
「余計なこと言ってんじゃねぇ、さっさと仕事するぞ」
冷たい夜の中、三人のいかつい男たちが
麻袋と短刀と縄を持ち立っていたのだった…。
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