第八話 想像と違う!?波乱の初デート
歳上長身美女とのデートは、どのような格好にすれば良いのか。
翔太は悩みに悩んだ末、少し大人びた、ストライプのシャツに黒のパンツにした。
普段はパーカーにジーンズだったりするが、ここは相手に合わせた方がいいだろう。
小春はきっと男性経験が豊富に違いない(大いなる誤解)。
恥をかかせない為にも、夜通し考えたのだった。
あとは万が一に備え、フリ◯クを持参している。
「まぁ、いきなりキスはないと思うけど……うん、一応マナーだし……」
待ち合わせ所で佇んでいる間、延々一人で呟き続ける。
気合いが入り過ぎて、30分前に着いてしまった。
これから映画を観て、ランチに向かう予定だ。
どちらも既に下調べを終え、シミュレーションもばっちりしてある。
実はプライドを捨て、拓真にも助言を得ようとしたが、
『え!?誰と行くの!?か、彼女!?え!どんな子ー!?』
と執拗に迫られたので、放置して自分で決めた。
小春は喜んでくれるだろうか。
心身を落ち着かせようと、深く息を吐いていると、
「お、お待たせっ!」
小春の上擦った声が聞こえ、目線を遣った。
その先の光景に、翔太は言葉を失った。
彼女はえ?それ何処で買いました?と訊きたくなるようなヒールを履き、髪の毛をこれでもかと言う程ぐりんぐりんに巻き上げ、メイクも間違ったキャバ嬢のような、濃いメイクをしている。
おいおい、何があった。
普段のノーメイクの方が、余程素敵なのに。
しかもこのヒール……い、嫌がらせ……??
これだと小春さん、180越してるよ……。
並んだら連行される宇宙人じゃん……。
心の中でツッコミを繰り返していたら、小春が怪訝そうに、
「ごめん……変だったかな」
「!い、いや、いつもと雰囲気違うなって、驚いただけっす。じゃ、行きましょうか」
「……うん」
正直者な翔太は、お世辞にも『似合ってる』とは言えなくて。
申し訳ないと思いつつも、濁してしまった。
これは、想像以上に波乱の幕開けだ。
ってか小春さんの頭がいつも以上に高い!顔見れねぇ!!首いてぇ!!!
何となく無言のまま歩き、映画館に到着した。
「映画、どれにしましょう」
「あ、えっと……これにする??」
小春が選んだのは、超ド級の、ドストレートな、甘ったるい胸焼け100%の恋愛映画。
あれ?
前アクションが好きだって、話がめちゃくちゃ盛り上がったから、そのつもりだったのにな……。
落胆の色が顔に出たのか、小春の表情が曇った。
「嫌かな?別のにする?」
「えっ、あ、大丈夫っす!これにしましょう!」
慌て首を横に振るも、何となく微妙な空気が漂っていた。
チケットを購入し、席に腰かける。
人気の男性アイドルが主演なので、周りはほぼ女性ばかり。
少々肩身が狭かったが、これも小春の為だと自身を鼓舞した。
訪れる沈黙を何とかしようと、
「主演の人、好きなんすか?人気っすよね!」
「あ、そういう訳じゃないんだけど……」
「へぇ~、……」
「……」
「……」
オワタ。
会話、オワタ……。
いつもは止めどなく続くのに、今日はぶつ切りになってしまう。
小春さん、どうしたんだろう。
格好は変だし、笑顔も少ないし、別の人みたいだ。
でも大人の女性って、こんな感じなのかも。
だとしたら、……俺でいいのかなー……。
翔太はその横顔を一瞥し、今後を案じた。
次第に辺りの照明が落ち、眼前にある大きなスクリーンに、美形の男女が映し出された。
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