第七話 親友はまさかのロリ巨乳
やってしまった。
小春はテーブルに突っ伏して、煩悶とした。
眼前にはタピオカミルクティが置かれているが、手につける元気がない。
食欲も沸かない。
「どうしたのよ、も~小春らしくない」
向かい側でそう微笑むのは、石原 真里菜。
高校時代の同級生である。
黒目がちの愛らしい瞳に、真っ白な肌、豊潤な唇は、艶やかに輝いている。
おまけに身長は148センチ、更には、……巨乳。
そう。翔太が求めるロリ巨乳というやつだ。
率直に言って羨ましい。
いや、それはともかく。
「……実は……告った」
「はい!!??」
突然の暴露に、真里菜は目を丸くした。
当然だ。
少し前まで、全くもってこの想いを伝える気などなかったのだから。
彼女はそれを知っている。
「え、あの、例のバイトの年下くん!?告白なんか絶対しない!って言ってたじゃん!」
この子、声まで可愛いなぁ。
私のハスキーボイスとはえらい違い。
なんて感心している場合ではない。
小春は深く息を吐き、分かりやすく項垂れた。
「うん、そうなの、そうだったんだけどね」
もう随分前から、翔太に惹かれていた。
ちょっぴり阿保だけど、とにかく優しくて、真っ直ぐで、一生懸命で。
日に日にその想いは募っていき、しかし胸の内に秘めておくつもりだった。
何せ自分は、彼のタイプとは真逆だったから。
飲み会でベロンベロンになった時、『俺~小さなロリ巨乳がタイプなんすよ~』と漏らしていたことを、鮮明に覚えている。
ああ、こりゃ脈なしだなと、諦めるしかなかった。
はずだった。
なのに。
「仕事中、酔っぱらいに絡まれてさ……彼、全力で庇ってくれて……私は女の子だから、守る!って言ってくれて……そしたら……」
止まらなくなった。
幼い頃から女性にしたら大柄で、男女と揶揄されてきて。
あんな風に庇われたのは、初めてだった。
堰を切ったかのように気持ちが溢れ出て、そして。
「好きだー!って言いたくて、堪らなくなったんだよね。今言わなかったら、一生後悔すると思って」
「……そっか」
真里菜は感情の読み取れない声で、相槌を打った。
恋愛経験が豊富で、常に彼氏が途切れない彼女からしたら、この不器用さは理解し難いだろう。
小春は男性と交際した経験が殆どない。
学生時代に一瞬付き合い、自然消滅したくらいだ。
翔太に対しては歳上ぶっているが、実績(?)はこんなものだった。
「ね、今度デートすることになったから、色々アドバイスくれない!?こんなこと、真里菜くらいしか頼めなくて……」
必死に手を合わせ、懇願する。
面白い程キャラの違う真里菜だが、昔とある『事件』をきっかけに仲良くなり、親友と言っても過言ではない。
何でも赤裸々に語れる、唯一の存在だった。
彼女はニッコリと、満面に笑みを湛えて、
「勿論♡今度買い物に行こう。服とかメイクとか、似合うの選んであげる」
「わ!ありがと~!助かるっ。よし、頑張ろうっと!」
小春は無邪気に喜び、ようやくタピオカミルクティに口をつけた。
真里菜が応援してくれたら、何もかも上手くいく気がした。
彼女の瞳の奥に、どす黒い感情が宿っているのも知らずに。
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