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第四十四話 夢みたいな温泉旅行!脱・童貞なるか!?

古めかしい、けれど何処か洒落た風景の温泉街は、翔太と小春の好奇心を掻き立てた。

凌がお膳立てしてくれた旅館も、さすがと言うべきか、老舗の歴史あるところで、別世界に迷いこんだような気にすらなる。

これ、料金どうなるんだ……と密かに怯んだものの、女将さんがこっそり「立花様のご友人と承っておりますので、お代は大丈夫ですよ。ごゆっくり」と耳打ちされ、遠くにいる親友に感謝の念を飛ばした。

マジサンキュー……!!

絶対、お返しするからなー!!

安堵したら更に気持ちが高揚し、部屋に通されてすぐ、二人は浴衣に着替えた。

……あの、あの、全人類に叫んじゃっていいっすか。

浴衣を着た小春さん、可愛すぎるんですけどー!!

ってか腰の位置高っ!足長過ぎっ!凛とした顔立ちが、本当によくマッチしてる……!


「どうかな……?ちょっとチンチクリン?」


少し不安げな小春に対し、翔太はブンブン首を横に振って、


「いえ、最高っす!ちょー似合ってます!」

「ふふ。ありがとう。翔太も可愛い♡」


……可愛い??

うむ、そこは『格好いい』にして欲しかったけど……まぁいいや。

今夜は雄になるから!可愛いなんて言わせないぜ!!

そんな翔太の決意など小春は知る由もなく、鼻歌など口ずさみながら、


「んじゃ、早速温泉回ろう」

「はい!楽しみっす」


また当然のように恋人繋ぎをし、淫靡な温泉街を散策した。

そこにはあらゆる銭湯が設けられ、各々内装や湯の効能が違っており、入るたびに楽しめた。

混浴でないのは残ね……いや何でもない。

数多く軒を連ねている土産屋も一軒一軒巡り、凌と真里菜、家族や他の友人達にも購入しようと、両手がいっぱいになるくらい買い込んで。

小春がくしゃりと破顔しているのを見て、翔太も心が満たされた。

あ~こういうのを、何つーか、『愛してる』って言うのかな。

ドラマや映画でよくある、無償の愛、つーか。

ってもー!すぐ調子に乗るんだから、俺ってば!

だが今まで以上の感情を、彼女に抱いているのは分かる。


「ねね、翔太、射的してみて」

「え、俺がっすか!?」

「いいじゃん。ほら、あのぬいぐるみ欲しいな」


普段とは全く異なる環境に、小春も昂っているのだろう。

やけに幼い言動に、しかし翔太も満更ではなかった。

小春さんこそ可愛いじゃーん♡

こんな風にねだられるなんて、滅多にないから凄く新鮮!

これがギャップ萌えという奴か……ここに来て良かった……神様仏様凌様……ついでに真里菜も……ありがとうございます……。

日が暮れるまでたっぷりと堪能してから、部屋に戻ると。

食卓には豪勢な懐石料理が置かれー奥の寝室には、隙間なく二組の布団が敷かれていた。

oh……生々しいですネ……。


「わ~美味しそう!食べよ~お腹減っちゃった」

「で、ですね!」


小春の無邪気っぷりはわざとなのか天然なのか。

恐らく天然であろう。

翔太は出来るだけ布団から目線を逸らし、眼前にあるご馳走に意識を集中させることにした。

にしても、これまたさすが、文句の付け所がない。


「この刺身うまいっす!最高~!」

「煮物もすっごく美味しい!何で味付けしてるんだろ」

「お、さすが中華料理屋の娘。気になりますか」

「もう、茶化さないでよ。ふふっ」


良かった。

小春さんもめちゃくちゃ嬉しそう。

知らない土地に来て、温泉に癒されて、美味しいものを沢山食べて。

用意されていたイベントは、殆ど制覇した。

さあ、最後は。


「……こ、小春さん」


和気藹々としたまま食事を終え、不意に沈黙が訪れて。

翔太は真顔になり、目線を逸らすことなく、小春を見据えた。

彼女も逃げずに、真っ正面から受け入れてくれる。

何を言わんとしているのか。

言葉にしなくても、お互い分かっていた。

そして。


「よし……頑張ろっか!」


ってズコーーー!!!

こ、小春さん……それはあまりにも……。


「色気ないっす……空気丸潰れっす……」

「え、ええ!?そうなの!?な、なんかごめん……」


突っ込まれ、悄然としている姿がこれまた愛らしい。

うん、この人のこういうところ、大好きなんだよな。

いつでも嘘がない、素敵な人。

翔太は目を細め、そっと。

小春の頬に掌を当てた。

良かった、小春さんが小顔で。

俺の小さな手でも包み込める。


チュ。


唇と唇が触れ合う、囀りのような音が響く。

それから二人は、お互いをひたすら見つめてー。



渡 翔太、二十歳。

無事に脱・童貞を果たしました。

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