第三話 近くて遠いロリ巨乳
やはりピッチリとした、ボディラインが露になる服はいい。
ふくよかな胸の輪郭に、つい目線がいってしまう。
って駄目だ、駄目だ!
下心丸出しじゃないか。
翔太は自身に活を入れ、ひとまずメロンソーダを口に含んで、気持ちを落ち着かせた。
昔ながらの甘味が、口内に緩やかに広がる。
「今日はありがとう、付き合ってくれて。ずっと翔太くんと話したかったんだ~」
そう微笑むのは、同級生の相原 玲奈。
くりくりの、小動物を思わせる円らな瞳に、主張し過ぎない鼻と口、それに相反する、大きなおっぱー豊満な胸元。
しかも身長は150センチと、かなり小柄で。
翔太の好みにドンピシャだった。
「こっちこそ!誘ってくれて、すっごい嬉しい!へへ」
大学内に併設されている、洗練された内装のカフェ。
なかなかの盛況ぶりで、辺りは喧騒に包まれていた。
玲奈は女の子らしく、パンケーキを食べている。
そういうところもまた、好ましく思えた。
口元についている生クリームに、一瞬ドキリとする。
「おいし~い!食べてみる??」
「ほえっ!!??」
な、何てことだ。
こ、これが噂の……か、かか、間接キス……か……。
と内心興奮したものの、ここは一つ、紳士的に振る舞わねば。
『間接キス程度でデレデレする卑しい男』の烙印は押されたくない。
「大丈夫、ありがとう」
「そーお?じゃあ今度食べてみなよ~」
笑うたびに揺れる胸の谷間。
無意識の内に伸びそうになる鼻の下を、慌て元に戻す。
さて、これからどう発展させよう。
まずは休日にデート、が王道な流れか。
無難に恋愛映画を楽しみ、流行りのカフェでランチ、そしてホテーいやいや、さすがに早すぎる。
焦りは禁物だぞ、翔太の翔太。ゆっくりじわじわと、まずは手を繋ぐところから。
「でね!その……翔太くんに話があって」
おおーっと。
見かけによらず、玲奈はかなり積極的だった。
向こうから誘導してくれるらしい。
翔太はフル回転していた思考回路を一端止め、緩む口元を引き締めて、
「何?何でも言って」
「……その、……カメラマンの渡 拓真って……お兄さん、なんだよね」
……ん??
んんー????
何だ何だ。
一気に不穏な気配が漂い始めた。
そんな、まさか。
あの悲劇が繰り返される訳、あるはずがないよな。
翔太は動揺を必死に隠して、それでも上擦った声が出た。
「あ、ああ。うん、まぁ」
「凄~い!私、写真集持ってるくらい好きなの。本人もめちゃくちゃ格好いいよね。ずっとファンでさ、それで……」
ヤバい。
何てことだ。
これぞまさに、デジャヴ。
数分前まで脳裏で繰り広げていた妄想が、脆くも崩れ落ちていく。
そんなことなど露知らず、玲奈は頬を朱に染め、実に愛らしい表情で、言った。
「もしお兄さんがフリーなら、紹介してくれない?」
嗚呼ー。
翔太は叫び出したいのを、精一杯堪えた。
まただ。
またしても、呪いには勝てなかった。
グッバイ、ロリ巨乳。
さようなら、童貞卒業。
皮肉にもあの日と同じメロンソーダが、切ない恋の末路を見守っていた。
ご閲覧ありがとうございます。
気に入って貰えたら、ブックマーク・評価して頂くと大変励みになります!