第二十六話 長身美女とロリ巨乳の友情の行く末
高校を卒業してからも、真里菜にとって小春は唯一の親友であり、絶対的な存在だった。
真里菜がどんなに乱れた生活を送っても、小春は諭すことはあっても決して見捨てず、笑顔で寄り添ってくれた。
そんな彼女と過ごす内に、次第に自身も考え方が変わってきて、小悪魔、いやもはや悪魔の如く周りを振り回し、傷付ける生活が改まった。
今では両親すら、感謝しているようである。
けれど渡 翔太の出現により、事態は一変する。
「私ね、職場のバイトの大学生の子、好きになったんだ」
そう小春に告げられた途端、全身が硬直した。
青天の霹靂だった。
小春はてっきり、歳上の落ち着いた男性が好みだと思っていたのに。
それが……大学生だと……!?
しかも話を聞いてみたら、外見も中身も年齢より幼く、頼りないことこの上ない。
おまけに、
「ロリ巨乳が好きみたいなんだよね……やっぱり無理かな……」
許せーん!!!
小春の気持ちも考えず、ロリ巨乳好きを宣言するとか……喧嘩売っとんのかワレ!?
翔太とのやり取りを聞けば聞く程、不信感は募っていった。
まぁでも、正直上手くいくまいと呑気に構えていたら、あれよあれよと進展していって。
慌てわざと嫌われるようなアドバイスをしたり、何とか阻止しようとしたものの、ついに交際が始まってしまった。
もうこうなったら、仕方あるまい。
ロリ巨乳を具現化したようなこの容貌を、有効活用するしかない!
そう心に決め、翔太に接近したー。
「石原さん、もう上がっていいわよ」
「あ、ああ、はいっ。お疲れ様です」
上司に声を掛けられ、回想は途切れた。
真里菜は数年前から小さな会社で事務員をしており、給与は微々たるものだが、休みが取りやすいし、定時に帰れるところが気に入っている。
何より人間関係が円滑なのが、最大の利点だ。
他の会社では女性社員からやたら攻撃され、長く続けられなかった。
ここは年配の人が多く、娘のように可愛がってくれている。
紹介してくれたのは、他でもない小春だった。
彼女の中華料理屋の常連が、先程の上司なのだ。
本当に救われてる、とシミジミ思う。
「お先に失礼します」
切ない想いを必死に隠し、その場を後にする。
夕暮れが辺りを包み込もうとしていた。
幻想的な朱色が目に染みる。
……小春に会いたいな。
会って謝りたい。
だがあれは貴女の為だったと言い訳しても、信じてもらえないだろうし、もらえたとしても、より軽蔑されるだろう。
自分でも厄介な性格だと、うんざりするのだから。
「こんな女、嫌われて当然だよね……」
自嘲気味の笑みを溢し、さて帰ろうと歩き出したら。
目線の先に、見知った顔があった。
一際目立つ長身に、昔から変わらない、整った相貌ー。
「……小春……」
何で。
どうして。
あんなに会いたかったのに、いざ目の前にすると、気まずさに逃げたくなる。
けれど緊張のあまり、体が言うことを聞いてくれない。
愕然としていたら、小春がゆっくりとこちらにやって来た。
そして。
「いったー!!!」
強烈なデコピンを見舞われた。
何これ!!??
くっそ痛いんですけど!!!
前叩かれた時より、数万倍きついんですけど!!!
あれ手加減してたのか!!!
どれだけ手酷く振った男にも、こんな仕打ちされたことないのに……。
涙目で額を押さえる真里菜を、小春はニヤニヤ笑いながら見据えていた。
「バーカ。勝手に浮気調査とかしてんじゃないよ」
「う……」
ば、バレてる。
あいつか、あの翔太のストーカーか。
奴だって大概だぞ。
結構な変態だぞ、多分。
つらつらと恨み節を呟くも、小春の晴れやかな表情を見ている内に、あれ、と疑問を抱いた。
もしや……怒ってないの??
許してくれるの??
そんな心の声に答えるかのように、彼女は口を開く。
「許さん」
って許さないんかーい!
大阪の新喜劇ならば、全員が綺麗にすっ転んでいるだろう。
ガックリと項垂れていると、小春はクスクスと含み笑いをし、
「だから、許してもらえるよう頑張って」
「え、え?」
「逃げないで、私の『親友』でいてよ。そしたら許してあげる。まぁ、お婆ちゃんになるまでかかるかもしれないけどね」
その言葉の意味を解した瞬間。
沸き上がる喜びが、涙となって溢れ出た。
ああ、やっぱり小春は私のヒーローだ。
優しくて寛容で、何でも受け入れてくれる。更に、誰より強い。
真里菜は人目も憚らず、その逞しい肢体に飛び付き、
「ありがとう!小春大好きー!」
「お、おお、ちょっと、胸が……やっぱでかいな……」
「え?」
「ううん、何でもない」
小春は何故か動揺している様相だったが、構わずギュッと腕に力を入れる。
傍にいた男性が羨望の眼差しを送っているとは、知る由もなかった。
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