第二十一話 理性VS本能!勝つのはどっち?
ラブホテルー。
AVの中だけの存在だと思っていたが、こんな身近にあるものなのか。
何だこのピンク色の外壁は。やけに異国情緒溢れるデザインは。入って行く人達の怪しさは。
……って感心している場合じゃなーい!!!
「無理ー!それは無理無理!駄目だから!」
「入るだけ!入るだけだから!ここに一緒に入るとこ見たら、絶対諦めると思うの。ね?いいでしょ?」
「ううっ」
ちょっと待て待て。
き、巨乳が腕に当たってるんですけど!?
何この柔らかさ……oh……人体の神秘……不思議……。
翔太の心は揺れに揺れた。
いくら阿保でも、一緒にラブホテルに入って『何もない』なんてあり得ない、というより理性が保てないと分かっている。
何よりこれ以上、小春を裏切りたくなかった。
あの愛らしい笑顔が、脳裏を過って。
そうだ。
彼女の悲しむ姿は見たくない。
傷付けたくない。
今更遅いかもしれないけど、目の前にある境界線は絶対に越えてはならないのだ。
「ごめん!やっぱり無理!マジごめん!!!」
翔太は綺麗なまでに直角に頭を下げ、謝り倒した。
暫し間が空いて、普段より少し低い、マナの冷ややかな声が聞こえてくる。
「……そんなに彼女が大事?じゃあさ、ここまで付き合わなきゃ良かったじゃん。のこのこラブホテルまで着いてきた癖に」
ザ・図星だ……ぐうの音も出ねぇ……。
正鵠を射たツッコミに、悄然とするしかなかった。
「だ、だよね……本当に俺、馬鹿だと思う。ぶっちゃけマナちゃんはすっげータイプだし、心、揺れまくった。でも、でもさ……これ以上は彼女を裏切れない。大切、だよ。うん、めちゃくちゃ大切なんだ」
「……」
言った後で、あまりに臭い台詞に恥ずかしくなったが、嘘偽りない本心である。
マナのプライドをへし折ってしまったかもしれない。
もっと罵倒されるかもしれない。
と怯えながら言葉を待てど、返ってきたのは恐ろしいまでの沈黙だった。
さすがに不審に思い、顔を上げると。
「……こ、小春さん!!??」
思いもよらぬ展開に、腰を抜かしそうになった。
え、え、何で??
いつから??いつから見られてた??
動揺のあまり目を白黒させていたら、小春は無表情のままツカツカとこちらに歩み寄りーマナの前で足を止めた。
「小春……その……私……」
ってええーーー!!??
マナちゃん、小春さんのこと知ってる!?何故に!?
すっかり混乱しきっている翔太を余所に、小春は。
バシン!
とマナの頬を平手で打った。
ってええーーー!!??(2回目)
目の前で起こっている事象に、全くもってついていけない。
小春は抑揚を失った口調で、
「残念だよ。真里菜は本当の友達だと思ってたのに。……もう会うこともないね。バイバイ」
ん?マリナ?マナじゃなくて??
本当の友達、って。どういうこと??
まるで白昼夢を見ているかのような、怒涛のやり取りに、翔太は頭を掻きむしった。
すると小春はこちらに微笑みかけ、
「行こう、翔太」
「え、あ、え、え、はいっ!!」
あらゆる謎は残るものの、もはや忠犬の如く彼女を後を追うしか、選択肢はなかった。
マナーいや真里菜は、ただただ呆然と、その場に立ち尽くしていた。
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