第二話 俺の周りは長身イケメンが多すぎる
翔太の通う大学は偏差値が高くも低くもない、至って平凡な学校である。
校舎は新設なので清潔感があり、外観も内装もお洒落で、時折ドラマの撮影にも使われてる。
教授はおっとりしている者が多く、さほど勉強を強いられないので、ぬるま湯に浸かっているかのような生活が、翔太には心地好かった。
「よお、翔太!今から飯?」
と声を掛けられ、振り返ると。
端整な顔立ちの青年が、片手を挙げて立っていた。
同級生の立花 凌だ。
拓真とはまた違うタイプの美形で、甘いマスクと細身の身体が見事にマッチしている。
身長も180センチ弱で程よく、女子に絶大なる人気を誇るのも頷ける。
ただいかんせん遊び人なので、一人の子となかなか続かず、とっかえひっかえしているらしい。
おまけに資産家の御曹司で、遊び放題。
なんて羨ましい。
憎たらしい。
そんな訳で彼には同性の友人が殆どいないが、翔太には何故か懐いていて、高校時代から付き合いが続いている。
「おう。これから学食行く」
「じゃ、一緒に食おうぜ。あれ、お兄様のお手製弁当じゃねーの?」
「も~やめろよぉ~あれはもうない!!!」
「ははっ」
甦る悪夢、その2。
大学に入学したばかりの頃、恥ずかしながらまだ兄に弁当を作ってもらっていた。
ある日それを忘れてしまい、するとやたら周りの女子が騒ぎ出して、ふとその目線の先を見遣ると。
拓真が満面に笑みを湛え、弁当箱を掲げていた。
『翔太~!弁当忘れてるよっ♡』
……あの時の恐怖と屈辱は、未だ忘れられない。
一部始終を目撃していた凌は、腹を抱えて爆笑していた。
涙まで流していた。
殺意が沸いた。
「しかしさ、翔太の兄貴は格好いいよな~女子が騒ぐの分かるわ」
凌は海老フライカレーを勢いよく掻き込み、シミジミとした口調で言った。
対して翔太はあからさまに機嫌を損ねる。オムライスを口一杯に頬張りながら、
「あんなの、身長がでかいだけだっつーの。てか何で俺が160であいつが185なんだよ!先に産まれたからって不公平すぎるだろ!」
「僻まない、僻まない。翔太はその大きさが可愛いんだって」
「……嫌味か。嫌味なのか!」
「いてて、叩くなよっ」
半分冗談、半分本気で凌の肩を叩き、ジロリと睨み付ける。
が、彼はそれこそ嫌味たらしく、含み笑いをするばかりだ。
まぁ長年の付き合いで、根は悪い奴ではない、むしろ友達想いのいい奴だとは分かっている。
翔太はふん、とふんぞり返った。
「ま、見てろ。俺だって今度こそ彼女作ってみせるから」
「ああ、例のロリ巨乳ね。今日デートだっけ」
「そ。向こうから誘ってくれてさ♡これは完全に脈ありだろ」
「やっと翔太も童貞卒業か……感慨深いな」
「おい、何さらっと余計なこと言ってんだよ!」
「はははっ」
応酬しながらも、翔太も内心満更でもない。
苦節3年、やっと巡ってきたチャンスに、すっかり舞い上がっていた。
この時は知る由もなかったのだ。
後に待ち受ける悲劇を……。
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