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第十六話 やっぱりロリ巨乳がお好き

それから、小春との交際は順調に進んだ。

職場では周囲にバレないように、出来る限り普段どおり接しているが、毎日LINEは欠かさずやり取りしている。


『おはようございまーす!今日は1限からで眠いけど、頑張りますっ!』

『おはよう♪頑張ってね!私はこれからランチの準備。翔太がいないと時間かかる(笑)』

『そう言ってもらえて嬉しいっす(笑)夜はよろしくお願いします!』

『うん、よろしくね。待ってるよ』

『はい!楽しみにしてますっ』


はい、分かってますよ。

つまんないよね?

こんなやり取り、つまんないよね??

でも本人達はすっげー楽しいんだな~これが!!

翔太は講義が始まるまで、ニヤニヤしながら返信をしていた。

この調子なら、次のデートで唇同士のキス、また次の次の次辺りで……。


「ついに……卒業かぁ……!!」


20年守ってきた(訳でもない)貞操を、捧げる時が訪れるのだ。実に感慨深い。

それまでにマジ勉強しておかないと。

今までロリ巨乳のナースものしか観てないからな……。

悶々と、阿保らしい考えを巡らせていると。

スッと、隣に誰かが腰かけた。

誰だろ?

凌は遅れるって言ってたし、この講義は知らない奴ばー。


「ここ、座っていいかな?」


そう訊ねてきたのは。

翔太の理想であるロリ巨乳を具現化したような、愛らしい女の子だった。

一瞬、AV……いや漫画から抜け出てきたのかと思った程。

息をするのも忘れ、暫し硬直してしまった。


「?駄目だった?」

「!いや!全然!!どうぞどうぞ!!」

「ふふ、ありがとう」


おいおい、声まで可愛いんですけど!?

何これ、小鳥の囀り??

翔太は悠然と微笑むその横顔を、うっとりと眺めた。

今までこんな、ドンピシャな子を見逃していたのだろうか。

頬杖をつくと胸の谷間がより強調され、妄想が膨ー。

……ってあかーーーん!!!

落ち着け、翔太の翔太。

お前には小春さんがいるだろ!?

あんな素敵な人、もう出会えないぞ、バーカバーカ!!!

……よし、翔太の翔太が治まってきた……と安堵したところへ。


「ねぇ、サークルとか入ってる?」

「ふぇっ!?い、いや、入ってないけど……」

「じゃあ講義の後は、何してるの?」

「バイト、かな……」

「え、どこどこ?」

「ち、中華料理……」

「え~いいな♡中華、めっちゃ好き~」


見掛けによらず積極的な彼女に、ついつい胸が高鳴ってしまう。

これは俺に気がある、のか……??

ってバカー!やっぱりバカーーー!!!

童貞よ、大志を抱くな。

小春さんの笑顔を思い出せ。

あの愛らしい、可憐な笑顔を。

……よし(2回目)、これでもう大丈夫。


「うん、凄く美味しいとこだよ。賄いもついてるし。か、彼女もそこで働いてるし!」


やや強引ではあるが、『恋人いるぜ』アピールを織り込んでみた。

彼女はしかし、さほど気にしている様子もなく、「そうなんだ~」と甘ったるい声で相槌を打った。

これは……不発だった……?

それから他愛もない会話をしている内に、講義が終わって。

無論内容は一ミリも脳に入ってこなかった。

学費を出してくれてる親よ、一応兄貴よ、すまん。


「色々話してくれてありがと!あ、遅くなっちゃった。私、『マナ』って言うの」


と名乗られ、ならば自らも黙っている訳にはいかない。


「あ……俺は渡 翔太」

「翔太くんね。じゃ、またね!」


彼女ーマナは意外とあっさりと、その場を離れていった。

まるで嵐のようだ。

翔太は速まる心臓を治めようと、拳を胸元に当てた。

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