第十三話 爆誕!コンプレックス童貞男子×歳上長身美女カップル!
「あの、実はこのアクション映画見たかったんすよ、いいっすか!?」
「私も!ずっと見たかったの」
「良かった~ですよね、このシリーズ好きっすもんね」
「うん、行こ行こっ」
店を閉めた後、早速近場の映画館へと向かった。
レイトショーが充実していて、その中でも満場一致(?)で、以前から観たかったアクション映画に決めた。
小春は普段どおり、いやちょっとテンションが上がっており、幼くて可愛らしい。
ポップコーンとジュースを購入し、意気揚々と席につく。
前回とは雲泥の差だ。
「マジこの主人公、格好いいっす~小春さんは誰が好きっすか?」
「私は相棒かな。いざという時、助けてくれるの最高!」
「ああ、いいっすね!特に2が良かったな~」
「そうそう。これも評判いいから、楽しみっ」
上映が始まるまで、尽きることのない会話。
これこれ、これだよ。
こんな風に楽しみたかったんだ。
期待通りの展開に、翔太はすっかり舞い上がっていた。
映画自体も大当たりで、二人して百面相になりながら見入っていた。
終わってからも、やたら興奮してしまい、今宵は語り明かそうと居酒屋に入って。
「評判どおり、最高でした……やっぱりあのラスト……続編ありますよ……!」
「うんうん、事件が解決したように見せて、さりげなく伏線を置いておく……本当によく出来てる。それにあの迫力!スクリーンで観て正解!」
「っすよね!新キャラも最高でした~どうなるかと思ったけど、馴染んでました」
「次も出るのかな?人気出そうだわ」
酒を酌み交わし、声高に盛り上がる。
改めて、こんなに趣味の合う異性とは、なかなか巡り会えないと思う。
すると隣に座っていた年配の男性達が、呂律の回っていない口調で、
「お~二人はカップルかい?仲良いな~お似合いだね!」
と。
声を掛けられ、顔を見合わせてー同時に真っ赤になった。
ああ、でも。
悪い気はしない。
むしろ、……嬉しい。
俺でも小春さんに釣り合うようになるのかも、なんて。
単細胞なのは承知の上で、あっという間に上機嫌になった。
「あは、ははは、お似合いだって」
照れ臭そうに言う小春を見て、更に胸がキュンと締め付けられる。
何だよ、俺。
もうちゃんと、小春さんのこと好きじゃん。
大好きじゃん。
そりゃ不安なこともあるけどさ、うん。
この気持ち、大切にしなきゃ駄目だ。
そう痛感した。
「本当に楽しかった。ありがとう、翔太」
別れ際。
散々お喋りを堪能し、それでも小春は名残惜しそうにしていた。
伏せた長い睫毛が、艶っぽく影を作る。
翔太はグッと拳を握り締め、自身に活を入れる。
よし、渡 翔太よ。
今こそ、男、いや雄になるべき時が来た!!!
「こ、小春さん」
「ん?」
「お、おお、おおお俺と……つ、付き合ってjdwtptj」
……噛んだ……しかも、盛大に……。
どうしよう!?仕切り直すべき!?
内心焦燥に駆られ、次の言葉が見つからない。
恥ずかしさのあまり、小春の表情を窺えない。
すると。
「……私、……胸、ペチャンコだよ?」
oh……いきなりそこ??
驚いた翔太は、思わず顔を上げた。
小春はこちらから目線を逸らし、不安の色を濃くしている。
そっか。
彼女だって、心配なんだ。
鈍感ながらに察し、再び勢いを取り戻して。
「そんな、全然いいっす!」
確かにロリ巨乳は憧れだけど……それはそれ!これはこれ!
「結構歳上だし……」
「んなもん、分かってます!」
同い年でも年下でも、話が合わなきゃ意味ないし。
「やたら身長、高いし……」
「俺がシークレットブーツ履きます!背伸びもします!」
あと歳上長身美女系のAV借りまくって、やり方は勉強するつもりっす!
無論心の声は胸に秘めておいた。
断っておくが、翔太は至って真剣だ。
しかし小春は未だ逡巡していた。
先日逃げ出されたのが、相当トラウマになっているのかもしれない。
ここは一か八か。
「小春さん、ちょっと屈んでもらえます?」
「え?う、うん」
小春が少し膝を曲げると、ちょうど眼前にその整った顔がきた。
ええいままよ!、と。
額に唇を、ふんわりと押し当てる。
滑らかな感触に、気持ちが昂る。
徐に体を離すと、彼女はポカンと口を開けていた。
あまりに愛らしくて、自然と頬が緩む。
「俺なりに、分かったんです。こんなに一緒にいて楽しい人、他にいないって。好きなんだなって。だから……付き合って下さい!!!」
一世一代の告白だった。
情けないが、少し声が震えている。
小春は暫し虚空を見据えーじんわりと、瞳を潤ませた。
そして。
「……はい」
小さく頷くその様は、さながら可憐な少女のようで。
翔太は満面に笑みを湛え、拳を突き上げ、
「やったー!!!」
眩いばかりに星が輝く空に向かって、思い切り叫んだ。
こうしてコンプレックスの塊である童貞男子×歳上長身ペチャパイ美女のカップルが、爆誕したのであった。
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