Star player.(スタープレイヤー)
試合後、陽菜ちゃんとわたしたちは校門前で合流した。
「陽菜選手! サインくれ!」
「うわぁ、なんだなんだ!?」
陽菜ちゃんの顔を見たとたん、激しくその手を取る緒方さん。
「大接戦ですっかり熱に当てられちゃってるんですよ、緒方さん」
「はぁ。つかうっとうしい!」
陽菜ちゃんに激しく引き剥がされる。
「とってもいい試合でした」
「ありがと。負けちゃったけどね」
すまなそうに頭を掻く陽菜ちゃん。
「いつものかわいい陽菜ちゃんと別の人かと思っちゃいました」
「え、そうなの?」
「すっごくかっこよかった!」
横で緒方さんも頷いてる。
「ただの小っちゃい音痴のおバカじゃなかったんだな」
「 お い ? 」
「あはは。陽菜ちゃん陽菜ちゃん?」
わたしはスマホの画面を見せる。
「あ、これ、あたしだ」
写真は試合中の陽菜ちゃん。相手のサーブに備えるきりっとした横顔がとても凛々しい。
「これが一番かっこよく撮れたので、壁紙にしちゃいました♪」
「ひゃあ」
「最初はもっと撮るつもりだったんですけど、途中から試合に夢中になって忘れちゃってました」
「うう、なんか照れる~」
それからしばらく緒方さんとわたしは陽菜ちゃんの活躍を褒めまくった。
身をよじってそれを聞いていた姿はいつもの陽菜ちゃん。
「あの、陽菜ちゃん?」
「なに?」
「最後、加嶋さんになんて声をかけたんですか?」
気になっていたことを訊ねてみた。
「ああ。あんな高いところあたしには行けないって」
「……高いところ?」
「最後のスパイク惜しかったんだ。加嶋さんのジャンプがセッターの想像よりずっと高くて打点がズレた」
「もし加嶋さんの高さにトスが上がっていたら……」
「相手ブロックを軽々越えてた」
「だから、高いところ」
「うん。あたしには羽根でもなきゃ無理」
陽菜ちゃんは笑う。
「身長はもちろん素質かなとは思うけど、陽菜ちゃんはレシーブが――」
「素質だけじゃなく加嶋さんはすごく練習する子だから。あたしはただのバイトだけど彼女は朝練にも出て夜も遅くまで練習してる」
「あ……」
陽菜ちゃん、以前同じことを礼ちゃんにも言ってくれた。
「これからのチームは加嶋さんに任せたぞって」
「ふむ。たしかに彼女の高さにボールが合わせられるようになればすごそうだな」
「そう! だから未来のエース!」
「…………」
熱っぽく緒方さんに語る陽菜ちゃんを見てる。
やっぱり陽菜ちゃんはすごい。
でも……こんなにかっこいい子がわたしの恋人でいいのかな……