11 社員旅行2
成田空港から那覇空港までは、飛行機でおよそ2時間半かかった。
那覇空港につくと、天気には恵まれ、一気に焼けるような日差しと、空港の道路沿いに一列に並ぶヤシの木が、俺たちを歓迎してくれた。
初めてヤシの木を見たときは、本当にここは日本なのだろうかと疑ったりもしたが、地域の特徴を体感できるのは、きっと旅行の醍醐味だろう。
俺はこの後どうしようかと思いあぐねていると、智佳の姿が見えた。
以前、帰り道で旅行の話をしたことだし、少しくらい一緒に行動してもいいよなと思い、話しかけようとしたところ、出鼻をくじかれた。
「よう、若き部長さんよ、調子はどうよ」
アロハシャツに短パン、それでいてがっしりとした筋肉を身にまとっている男性社員に声をかけられた。営業部の部長だ。筋肉のせいか、その服装がすごくしっくりきている。
「お疲れ様です。まだまだ不慣れですが、お陰様でなんとかやってます」
「そうかそうか。それは良かった。まあ、そんな、社交辞令みたいな挨拶はさておきよ、これから会長と社長とゴルフに行くんだけど、一緒にどう?」
俺の倍の太さはあると思われる腕を肩に回されて、まるでナンパをするかのように俺を誘ってくる。
「ご……ゴルフですか。やったことないんですが……」
「いいって、いいって、気にしなくて。それくらい教えてやっからよ! 行こうぜ! な?」
そうだ、部長に昇進してからのこの旅行、他の幹部陣や上役の人の接待も兼ねているんだ。むしろここで声をかけてもらったのはチャンスではないか。
一瞬、智佳の顔が浮かんだが、約束していたわけではないし、大丈夫だよな。
「それとも、先約でもいるのかな?」
「いえ、ご一緒させていただきます!」
俺は全力の営業スマイルで快諾し、ゴルフに行くことにした。
俺の返事に対して「おーそうかそうか、さすがは期待のエースだな!」と背中をバシバシ叩かれて、会長と社長のいるところへ同行した。
そのまま夜の宴会まで、俺はゴルフを教えてもらいながら、上役のご機嫌を取り、全力で接待した。
接待はさておき、ゴルフもやってみるとなかなか楽しかった。
◆
「すごーい! 沖縄だ! ヤシの木だ!」
初めての沖縄で目に入ってくるすべてのものが新鮮に映り、私のテンションが上がりまくる。
飛行機の中ではあの後、近くにいた女性社員も混ざり、後輩に便乗して私をいじってきた。
私は恥ずかしさで半泣き状態ではあったが、飛行機を降りて外の空気を吸った瞬間に気持ちが切り替わった。
さて、私を間接的に泣かせた張本人はどこにいるのかな……?
辺りを見渡しても部長の姿が見当たらない。どこに消えてしまったんだろう。
先に飛行機を降りて、もう別の人と遊びに行ってしまったのかな。
もしそうだとしたら、腹が立つ、というか、寂しい……
「約束はしてないけどさ、少しくらい気にかけてくれても……」
そう思った瞬間、急に背中が重くなった。
誰かが私に後ろからのしかかってきたのだ。
部長のことを考えていたので、一瞬部長かと期待してしまったが、部長はそんなことはきっとしない。
すぐに冷静になって、背中の圧力の犯人を確認する。
私の同期入社の女性社員、一ノ瀬 結衣だ。
結衣は同期の中でも一番仲がよく、よく一緒にご飯を食べに行ったり、休日も一緒にでかけたりしている。
「ともか~ お疲れ~ どうしたのかな? 誰かをお探しかな?」
「ううん。大丈夫。これから何しようかな~って考えてたところ」
「おやおや、事前に行く宛も決めておかないとは、係長が聞いて呆れますね~」
結衣は「にしし」と笑いながら冗談めかして言い、私の背中から離れた。
「はいはい、計画性がなくてすみませんでした。そういう結衣はどこに行くか決めてるの?」
「もちのろんですよ! わざわざ沖縄の雑誌を買ったのですから、下準備はバッチリよ!」
結衣が自慢げに雑誌を取り出してドヤ顔するが、私はその勢いに少したじろいでしまった。
「気合入ってると言うか、テンション高いね。じゃあ、私も一緒に行っていい?」
「むしろウェルカム! 一緒に回ろ♪」
「うん!」
結衣と会話している最中も周囲を見渡してはいたのだけれど、部長の姿は見えない。
私は部長を諦めて、結衣との沖縄旅行を楽しむことにした。
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