期待
扉を開けた先に待っていたのは、荷物や人を乗せて走る馬車、日本ではありえない髪色や獣耳がついた人間。その全ての異物感や、好奇心の前に僕は立っている。掲示板に貼り付けられた地図を見ると、教会と冒険者ギルドを発見する。
教会に行ってテミスにお礼を言いたかったが、僕は仕事の方が大事なので冒険者ギルドへと向かうことにした。冒険者と言えば、前世の時ゲームでやっていた勇者のようなものだろう。とはいえ、あそこまで危険な地へと赴くことはしたくない。
それにこういう世界では、冒険者ギルドで職を貰うものだ。
冒険者ギルドは、僕が出た場所から5分程の場所にあり、意を決して扉を開ける。
「お邪魔します。」
僕の声は、喧騒にかき消されてしまう。立ち話をするものや、長テーブルに座り、飲み明かすもの。様々な人間がいて、僕は嬉しくて仕方なかった。入口で立ちつくしていた僕に、水色の髪の色をした男性が近寄ってくる。
「おめぇさん、ここら辺じゃ見ねぇ顔だな。何しに来た。」
「仕事を探しに来たんですけど、どこに行けばいいんですかね。」
「なんだ、新入りか。変な格好してるからお偉いさんかと思ったぜ、ついてきな。」
こうして僕は、この男性について行くのであった。鎧を身に付け僕を先導する姿はかっこよく、それでいて僕に異世界に来た実感を与えるのだった。