石の壁はもう見たくない。
僕は、草原の上に寝転がっていた、地球の草原とは違う緑の匂いが僕の心を踊らせる。特にこの世界でやりたいことなんてないけれど、とりあえず生きるために職を見つけなければいけないのだが、どこに行けばいいかも分からない。前方は一面の草原、後方は森。見知らぬ異世界の森を歩むくらいなら、草原を歩いた方が安全であると考え僕は歩みを進めた。
ほどほどの距離を歩いた先に壁があった、石で作られた綺麗な壁。恐らくこの中に街があるのだろう、僕はこの壁の入口を探すため壁伝いに歩くことを決めた。
草原よりも、壁の周りを歩く方が正直いってしんどい、右側に閉塞感があり、左側は開放感に包まれている。歩くだけでも奇妙な感覚になってしまうこの地で僕はそれでも歩み続ける。
僕が門にたどり着いたのは、歩き疲れた時だった。関所の中に入れてもらい、椅子に座りながら職務質問をされている。
「えーと、君は何者だい。変わった服装をしているけど、貴族にしては護衛もいないし。」
「僕ですか、僕は学生です。」
「学生、なんだそれは。学者とは違うものなのか。」
どうやらこの世界には学生という文化は無いらしい。学生が存在するのが普通であった僕は、違和感をどうしても覚えてしまう。
「学生というのは、学問を学ぶ者です。」
「なるほど、学者の弟子みたいなものか。まあいいだろう、この街に入ることを許可しよう。」
こうして僕は、この街に入る許しを貰えた。街に入るだけでも一苦労だったのだが、今の僕は金を持ち合わせてはいない。ゆっくり出来る時は、まだまだ遠いのだろう。木製の扉を開けながら僕はぼやくのだった。