実践
ある満月の夜、僕は悟った。
“弱者は死に強者は弱者を屠る”それが世界の理と。
だから強くなった、暗殺者として。
そう僕は弱者だった、あの日までは.....
『おら、さっさと働け』
『そこの男、殺されたいのか』
『はぁ...はぁ...はぁ...』
僕は奴隷だった。毎日休む暇も無く働かされ、食事もまともには貰えなかった。これも全部親のせいだ。親は借金の一部を払う為に僕を売り払って、どこかえ消えていったからだ。
それから数年間毎日働いていたが、もうこんな所で働くのは嫌だと思っていたある日、突然僕を裏で奴隷にしていた会社が倒産した。僕は不思議に思ったが、そんな事はどうだっていいと雑念をかき消して逃げるチャンスを伺った。
それから、他の会社に移るために車に連れ出さていた所をここしか無いと思った僕は、警備の隙を見て逃げ出した。
大雨の中、どこかに行くあてもなく、途方に暮れていると、ある身長の高い男に声を掛けられた。
『どうした?帰る場所が無いのか?』
僕は黙って頷いた。
『名前は?』
『 綾斗。』
『どこから来たんだ?』
『逃げてきた...』
『...............』
『なら、俺と一緒に来ないか?君に帰る場所をあげよう。』
その日から僕は強者になった。
バン、バン、バン、僕が放った銃弾は的の真ん中を射抜いていた。どうやら、僕は銃を扱う才能があるらしい。しかも暗殺者の中でも相当腕がいい、とNが言っていた。 『N』と言うのは、僕を拾ってくれた人で『メビウス』と言う暗殺組織に所属しているそうだ。本名は伏せているらしい、
“暗殺組織”と聞くと、依頼を受けたら、依頼者が殺して欲しい人を殺す組織と思う人も多いかもしれない。だがメビウスは違う。弱者を強者から守る為につくられた。そう、僕を裏で奴隷にしていた会社のような所からだ。
僕がNに拾われて、数年の年月が経った。僕は数年の間にいろいろな暗殺術を学んだ。体術、剣術、話術、など。
『よし、綾斗そろそろ実戦にいってみるか。』
『実戦?』
ガタゴトガタゴトと鳴る車の中は静寂に包まれていた。
『なー、N。実戦って言うのは暗殺の事だよな?』
Nは不敵に笑った、
『あぁ、そうだ。しかも以前お前がいた所のボスだ。』
僕がいた所と言うことは、あの会社か、
『どうした?あーすまん。思い出させてしまったか?』
『いや、大丈夫だ。』
『実はお前が前にいた所は、その会社のほんの一部なんだ。』
『しかも、そのボスは、違法ドラッグや人身売買などの悪事を行っている。』
『メビウスの会議で、一つ一つ潰してもキリがないという事でボスを暗殺することになった。』
『よし、事情はわかった。で、今はどこに向かっているんだ?』
『さー何処だろうねー。何処だと思う?。』
『どうせ、ターゲットを狙い打つ場所、だろ?』
『お!、流石。察しがいいね。それとも最初から分かってた?』
『あぁ、車の向かってる方向から見て、ターゲットの会社とは、少し違う。だとすると、他は狙撃する場所しかないだろ』
それから、数十分後に目的地のビルに到着した。
『ここがターゲットを狙撃するか。なんでここなんだ?』
『ここのビルが22階でダーゲットが泊まるホテルも22階なんだよ。』
『まっそんな所だと思ったよ。』
『それで?いつも1人なのか?』
『あー、その事だけどね、いつもは3人なんだけど、今回は2人だよ。』
『じゃあ、俺以外の2人は、今何処に?』
『あー、2人はちょっと違う仕事にいってるから、また帰ってきたら紹介するよ。』
『そうか、分かった。』
『それじゃあ、使う銃を渡そうか。はい、これ狙撃銃だよ。遠距離射撃に向いている銃だ。』
『これで敵を狙撃すればいいんだな。分かった。』
『よし!早速、仕事と行こうか。』
現在、時刻午後10時30分。
ターゲットを狙撃するための準備をし、目標が泊まっているホテルに銃を向けた。
『あ、そうそう。1つ言っておかないといけないことがあったんだった。』
『僕らの組織を敵対視する組織があるのは教えたよね?』
『あぁ、前にそんなこと話してたと思うが。』
『今回のターゲットがその組織と絡んでる可能性があるとメビウスから連絡があった。』
『........つまり暗殺後に追撃されるかもしれないと.......分かったよ。』
『そうだよ。じゃあ気おつけてね。』
と言う言葉の後に無線が途切れる音がし、さっきまで聞こえていはずのNの声が消え、辺りが静まり返った。
『よし。そろそろ始めるか。』
僕は静かに息を整え、狙撃する体制に入った。すると、ターゲットはすぐに目に入ったが、あることに気がついた。
『おい、N。』
『どうかしたか?』
『なんだか、警備が薄くないか?』
『警備が薄い?』
とそう言うとNは、黙り込んでしまった。何か考えているんだろう
『理由が分からないならいいんだ。』
『そうかい?一様メビウスに報告しておくよ。』
Nの言葉を聞き、何か嫌な予感がした。
『まぁ、ターゲットさえ暗殺出来ればそれでいい。』
僕は再びターゲットに目を向け、ターゲットの動きが止まるのを待った。
すると、ターゲットは椅子に座り、スマートフォンを触り始めた。その瞬間、僕は銃の引き金を引いた。銃声と共に銃の先から火花が飛び散った。
僕は引き金を引いた反動に耐え、再びレンズを覗き込んだ。
『N、聞こえるか。』
『聞こえてるよ。』
『任務は完了だ。』
『分かった。すぐに車に戻ってこい。』
僕は銃を片付けているとあることに気が付いた。
ターゲットを狙撃する前に感じた嫌な予感はまだ消えていなかったのだ。
だが、ターゲットは暗殺出来たのだから特に気にすることは無い、とそんな事はを思いながら、車に戻ろうとすると、何故か無性にターゲットが気になり、もう一度ターゲットに目を向けた。その瞬間、僕が左に飛ぶと同時に銃声が響きわたり、目の前が赤色に染まった。
僕は地面に横たわっていた。その状態で数秒考えこみ、やっと状況を理解出来た。




