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眠りから覚めて

彼女視点の話です。

「ここは、どこなの?」と

 あたしは疑問を浮かべた

 目が覚めたら見知らぬ部屋で

 ベッドのなかで眠っていた

 知らない部屋というのは

 とってが分からず居心地が悪く感じてしまう

 

 ベッドから上半身を起き出して

 服装を確認する

 忘年会で着ていた服装のままだ

 どこかで脱ぎ出さなかったから良かったと思う

 ……酔ったら脱ぐなんて、あたしにはないし

 あったら恥ずかしくて、仕事にも行けなくなる

 

 気晴らしになるか分からないけど

 昨夜の記憶を辿ってみる

 昨夜は確か初めての忘年会で

 お酒に弱かったあたしは

 少し呑んだだけで

 その場で眠ってしまったんだった

 

 じゃあここは、会場の一室?

 それにしては、生活感が漂っている

 ならここは、誰かの部屋?

 酔って眠ってしまったあたしは

 迷惑をかけてしまったのだろうか?


 そう考えたあたしは心が不安に狩られた

 誰かに迷惑をかけてしまうことは

 時として、多大な負担になってしまうから

 間近でその破滅を見ていたあたしは

 その愚かさを目の当たりにした

 そのことが今も心から離れず

 悪夢となってこびりついている

 

 忘れてはならないと

 縛りつかせるように

 次はお前だと

 宣言しているかのように

 

 あたしは怖いのだ

 蛇に睨まれた蛙と同じだ

 恐怖で身体が竦み上がる

 悪夢の内なら

 まだ良いのかも知れない

 

 心が考えが暗く沈んでいると

 音が聴こえた

 この音色はピアノだろうか?

 その時、デジタル時計が目に入った

 時刻は朝の六時半

 忘年会の翌日は仕事が休みと

 上司が言っていたから

 遅刻の心配はない

 

 ピアノの音色は鳴り止まない

 耳を澄ましながら部屋を見る

 音色は部屋の死角から

 見えない場所から聴こえてくる

 

 なぜだろう

 あたしはピアノの音色が気になった

 好奇心が刺激された子供みたく

 ピアノがどこで鳴っているのか

 知りたいという欲求に駈られていた

 多分、あたしが今いる見知らぬ部屋で

 何らかの手がかりというか

 きっかけを得たいと思ったからだと思う

 

 あたしはベッドから起き上がり、床に足を着いた

「ひゃっ」

 あまりの床の冷たさに

 思わず声をあげてしまった

 フローリングの床だから仕方ないと思うけど

 予想外と言えば予想外だ


「あ、これってスリッパよね」

 床に目を向けると、足元の近くに藍色のスリッパがあった

 しかもきちんと揃えてある

 なんだろうか。見知らぬ部屋だけど

 部屋の主の気遣いを感じられる部屋だ

「あったらお礼を言わないとね」

 小さなことでも感謝することは大事なことだと

 誰かが言っていたことを思い出す

 『わずかなことでも責任を持って行えば、感謝を受けるに値する。

 逆に、わずかなことに責任を持たなければ、誰にも感謝されないものだ』

 どこで聞いた言葉なのか思い出せないけど

 言葉の意味は今でも心に残っている

 あたしの座右の銘だ

 

 あたしはスリッパを履くと

 警戒心を抱いて

 ピアノの音色が鳴っている

 部屋の死角へと向かった

「これは……クローゼット?

 しかも、中に明かりが点いているわね」

 そこにあったのは、部屋の扉とクローゼットの二つ

 本来なら明かりがないクローゼットに

 明かりが点いているのが気になった

 しかも、ピアノの音色はクローゼットの中から聴こえている

 疑問は深まるばかりで、警戒心が強まっていくのが分かる

「意味が分からないけど、開けなければ分からないままよね」

 でも、このままじゃいけない気がするため

 あたしは勇気を出して、クローゼットを開けたのだ――

誰かの言葉の件は、聖書の一節から取りました。


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