◯ 6 魔導少女は近接戦闘の夢をみる その7
「…………」
仲が良いって言えるのか? これが? この「同じ空気を吸ってるだけでも嫌なんですけど」とか言いたそうな視線を送ってくる奴との関係性が? 良い? 仲が?
「……良いのか……」
「なんでよ!」
今度の蹴りは優しかった。なんなんだこの加減の違いは。
「長い付き合いなだけですけどね。エシリヤさんとエミリアには程遠いです」
実の妹を引き合いに出されて比べられたとしても同じように答えるだろうなぁ、僕は。
あいつは実の兄を兄どころか人間と思ってない節があるから。
結梨以上に同じ空気を吸うのを嫌うから。マジで。
「私は……あの子の力にはなれません。この旅に同行することも、その身を守ることも……立場というものを差し置いても恐らくは……」
「……?」
なにやら複雑な事情があるらしいが情報が不足しすぎてる。
ただなんとなく「国王様」や「お妃様」を見かけないのは不思議だったし、まるですべての決定権をエシリヤさんが握っているような状況に違和感は覚えていた。
「聞いてもいい話なんでしょうか」
デリケートな部分に踏み込む上での弁えぐらいはわかってる。……つもりだ。
結梨に蹴飛ばされなかったってことは間違ってなかったんだと思いたい。
何ぶん学校では孤立無援に追いやられた(選んだ?)から人と真面目に関わるのは随分久しぶりな気がする。
痛みを伴う部分にまで踏み込むのは……それこそ結梨を剣道部から引き抜いた時以来だろう。
「なんてことはありませんよ。あの子はこの国の象徴にならなければならないという話です。……私は……そんなあの子を見守りたい」
答えになってない、と思うのは僕の理解力が足りないだけだろうか。
「そもそもその象徴ってなんなんですか? この旅の目的……儀式ってのももイマイチわかってないんですけど」
問題続きでドタバタしていたし、妹の命がかかってるとなれば他の事は後回しになるだろうから仕方ないとは思うけど。
それでもそろそろはっきりさせておきたい。
「僕らはエミリアを何から守ればいいんです」
それぐらい聞く権利はあるだろう。
って言うか聞かなきゃ守れない。犯人の見当はついてるんじゃないのか? こんなところで秘密の会話をするぐらいなんだから。
エシリヤさんの表情は硬い。
言葉にするのを躊躇い、少しずつ、ほんの少しずつ言葉を砕き、僕の目を据えた。
「ドラゴン達からですーー」




