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◯ 6 魔導少女は近接戦闘の夢をみる その2

「……んぅ……」


 クレープ屋が見つかれば少しは機嫌が戻るかな、と周囲に目を配るけどなかなか見当たらない。

 街中には石造りの建物が多いけど、木で建てられたものも混在していてなんだか新鮮だった、まるで異国だ。異国どころか異世界なんだけど。

 生憎、獣人とか、そういう「人間と何かの合わせ技」みたいな人はいなくてちょっとガッカリする。ほら、剣と魔法のファンタジーっていうとやっぱエルフとか期待しちゃうじゃん。

 まぁ、それがアリなら結梨の「月明かりの元だけ人間になる」ってのは狼人間的な生き物としてありっちゃありになるんだけど……。


「でもよかったじゃん、元に戻れる可能性があって」

「そーですね」

「んー……」


 たぶん原因は月明かりなんだ。あのとき、月に照らされて猫から人間の姿に戻った。ベットに潜った後は元どおりだ。

 もし「狼人間」がこの世界にいないとなると結梨にかけられた魔法(?)は月の光に当たることで弱まると考えて良い……?


「魔法少女と猫女か……」


 どうしてもゲゲゲのを思い浮かべちゃうから猫女よりかは「ただの猫」のほうがいいな……。


「ん……? なに、どうかした?」


 ぺしぺしと頭を叩かれて考えをとりあえず止める。あれこれ考えるにしても転移魔法と同じく、人を猫に帰る魔法に関しては知識がないからどうしようもないし。あとで王国図書館とか尋ねてみよう。……あればだけど。


「あれって昨日の騎士さんじゃないの?」

「あれ、ホントだ」


 あまりにも自然に溶け込んでいたから気がつかなかった。

 どうやら出店でパンか何か買ってるみたいだけど……何だか軽装だった。あんなことがあったばかりだというのに警備についてなくていいのかな。


「話かけないの?」

「え……だってなんか煙たがられてたしさ……よく知らない人に話しかけるのって勇気いるしーー、」

「このコミュ症っ」

「あっ、ユーリ!」


 そう言い残すとひょいっと飛び降りた結梨は人混みを抜け、あっという間にランバルトさんの元へと辿り着いてしまった。


「……? お前は昨日のーー、」


 ふと足元に寄ってきた黒猫に気がつき、そこから僕のことを連想したのだろう。険しい視線が周囲を探り、次の瞬間にはそっと逃げ出そうとしていた僕を縫い止めていた。


「……なんだ、こんなところで何をしている」

「何って……別に何もしてないけど……」


 前に立たれると相当の身長差があって見上げる形になる。

 いわゆる「イケメン」に部類されるんだろうが、こう高圧的だと正直ビビる。自然と腰がひけるのも許して欲しい。


「姫様の護衛につかなくていいのか」

「そりゃこっちのセリフだろ……あんたこそこんなとこにいていいのかよ。暇じゃねーんだろ」

「……暇だ」

「……は?」

「……暇を……出された」

「…………」


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