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◯ 4 女の子のお風呂タイムです その2

 お風呂の淵からギャーギャー騒ぐ結梨に負けじと僕も言い返す。

 確かに悪いのは僕かもしれないけどここまで一方的に言われる筋合いはない!! って言うか謝ったんだから許してくれてもいいじゃん!!? いいじゃん!!!


「ぎゃー!!!」

「ぎゃーってなんだよぎゃーーって!!」


 もはやお互い何を言ってるのか分からないほどにヒートアップした頃。


「ほーらっ」


 しれっと結梨の体を後ろから持ち上げる者が現れた。


「ぁ」


 絶妙にきわどい部分を結梨とその尻尾で隠してるあたりエシリヤさんの女子スキルが見受けられる。

 思わず感服してしまう。もしやこれが世界の意思とでもいうのか……!?


「……じゃなくて」

「なっなによ!? 離しなさいよ!!」


 爪こそたてはしないもののバタバタと足掻く結梨は完全に猫だ。

 ……いや、猫だけど。


「あのー……離せって言ってますけど……?

「神獣様もきれいキレイいたしましょう?」

「いっ、やっ、だぁーっ!!!」

「えー……」


 何ていうか……猫がお風呂に入れられるのを怖がるのってこういう感じなんだと思った。

 プライドの問題なんだろうか。脇腹に手を差し込まれて持ち上げられるのが? それともペット感覚で洗われるのが……?


「なんとかしなさいよあかり!!!」

「って言われてもなぁ……」

「ふふーん♪」


 エシリヤさんに悪意はなさそうだし、実際結梨も結梨で砂ボコまみれなワケだし。そのままでいるよりも洗ってもらった方がいいんじゃないかな……。


「ちょっとー!!」

「クゥー」

「あ、ほら、クー様も洗ってもらえって言ってるし」

「なんでよー!!」


 ていうかいつのまに入ってきたんだクー様。と上を見上げたら湯気を外に逃がす為か僅かに隙間が空いているのが見えた。なんだ覗きかクー様。……ていうかオスでいいんだよな。


「……なぁエミリア」

「……? アカリ様? どうしてそっぽを向いていらっしゃるんしょう……?」

「せめてもの抵抗だ。気にしないで貰えると助かる」

「はぁ……?」


 変に意識するなという方が無理な話で、開き直って見てしまえばいいのかもしれないけれどいくら女の子の体だとはいえ、中身が男の僕が見るのは気がひける。ていうか後々バレた時が恐ろしいし。


「……やっぱクー様って偉いんだよな?」

「はい?」

「いや、なんとなく街の人たちの反応見てるとさ。ほら、ホワード様って呼ばれてたし……。竜の国なんだろ? それなりに神聖な存在なんじゃないのか?」


 子供たちは親しげに呼んでいたが大人たちの中には手を合わせて祈るものまでいた。

 さっきのドラゴンブレスといい、絶滅危惧種というだけではない気がする。


「クーちゃんはエミリアがおねしょしていた頃から一緒だったのですわよ?」

「お姉様っ!」


 なんだか静かだと思ったら結梨は大人しくエシリヤさんの膝に収まってワシワシ泡だらけにされていた。


「……わー」

「なによ!!」

「いえ……別に」


 あんまりジロジロ見るとエシリヤさんの見えちゃいけないものが見えそうなのでドバドバお湯を吐き続けるライオン(……しゃちほこ?)に目をやる。なんだか所々に和風な感じが混ざってるけど……なんだこれ。

 城の造り自体は中世ヨーロッパっぽいというか、いわゆる『王道ファンタジーっぽい』んだけど、このお風呂に至っては旅館か何かの造りを真似たようにも見える。ていうか、脱衣所なんてモロ「脱衣所」だったしな。


「……どうかされまして?」

「いや……」


 クゥーっ、とエシリヤの肩に乗ったクー様が小さく鳴いた。

 水滴が鱗に張り付いてキラキラ光って綺麗だ。


「じゃあクー様とエミリアは兄弟みたいなもんなのか?」

「兄弟……、どうかなクーちゃん?」

「クゥーっ」

「……わからん」


 正直ドラゴンの言葉は理解できん。

 なにやら楽しげに二人は笑っているけれどやっぱり通じ合うものがあるんだろうな。


「兄弟っていうか一心同体だよってクーちゃんは言ってますっ。私もそう思うよ、クーちゃん?」


 クゥーっ、と楽しげにひと鳴き。うーん、一心同体とはいうけれどハタから見れば完全にペットか何かだ。

 ていうか「偉いのか?」の問いに答えてもらってない気がするぞ……??


「クーちゃんはこの国の成り立ちに纏わるドラゴンの末裔。そしてそのクーちゃんと心通わせるエミリアはこの国の象徴と言ったところでしょうか」

「分かるような分からないような」

「とても大切にされている、ということですわ?」

「…………」


 落ちた影に振り返るとすっかり小さくなった結梨がエシリアさんに吊るされていた。


「……これからは自分で洗うわ……」

「洗えるんならそうしたら……?」


 流石に大浴場に浸かると溺れるので桶にお湯を入れて結梨専用とする。


「ふぁ〜……生き返るわぁー……」


 なんだかんだで気持ち良さそうだった。


「そりゃよかったよ……」


 流石にのぼせそうなので淵に腰かけ、結梨を見下ろしながら疑問の続きを投げかける。

 なんだかんだでこの国に世話になることになりそうだし、事情は知っておきたい。

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