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04 これは試練なのか……

「それじゃあ参加させてもらおうかね」


 女子にしては低い声に目をやれば、ポニテで長身の女子が立っていた。あともう一人、イメージ的には雪女みたいな、色白で長い黒髪の女子。

 ……うん、もしかするとこのポニテのほう、俺よりデカい?


「ふーむ」


 俺は二つの意味で深々と息を吐いた。

 これはカミサマの粋な計らいか? パーティメンバーが俺以外女子。狙ってできるもんじゃないぞ……というのが一つ。

 マジメに生存率を上げたいとわけで、少なくとも男手があと二人は欲しかった……というのがもう一つ。


 いや、わかってる。みなまで言うな。

 二つ目の言い分は、俺みたいなネット弁慶でリアルのステータスはゴミ以下な人間が口にしていいことじゃない。

 ただ……わかるだろ? この状況。現に目の前で人が死んでいる。自分は何が何でも生き延びたい。そんな明日をも知れない運命の上に立っているのを自覚しながら「やったー、ハーレム状態ー! うぇ~い!」などと、本当に……心の底から思えるヤツがいるんなら、そいつは早くもこのストレスに耐えかねて心が壊れているに違いない。

 現実逃避を許してくれるほど、事態は甘くないんだ。


「で、お二人は腕に覚えがあると?」

「はぁ? あんたわたしのこと知らないの? 猪狩美紀いかりみきってんだけど。同じクラスなのに? 一応、空手の国体行ってる。こっちは」言いながら、雪女めいた女子を指差す。「家が道場の鹿野綾女かのあやめ。え、マジで知らないの? お爺ちゃんが薙刀のお師匠さん」

「わかった。今からシミュレーションするから、ちょっと待ってくれ」


 そう言って時間を稼ぎ、俺はぐうっと考えた。

 オートリーダースキル持ちなら、誰もが一度は経験したことのあるシチュエーションだろう。アタッカーで募集したら、およそパーティ向きスキルを持っていない不遇職が参加してきたり、一応狙い通りの職業が来たけれど装備がめちゃくちゃショボかったり。

 パーティを自ら募集した以上、レベル上げにせよボス討伐にせよ、リーダーには目的を達成させる義務が生じる。だから出発前に明らかなお荷物が参加してきたり、攻略が超ハードモードになる要素がある場合、その原因を排除するのもリーダーの責任だ。

「テキトーに集めて出発したけど、やっぱムリだったわ。テヘ」なんてことをしたら、あっという間にサーバじゅう「こいつのパーティには参加するな」との悪評が広まり、次にパーティ募集をしたときに有力な人材に見向きもされなくなってしまう。

 一部に「縛りが厳しい」と言われようとも、ある程度の職縛り、装備縛りをするのが、本当にデキるリーダーなのだ。


 俺は今、決断を迫られている。

 今のパーティでは、圧倒的に火力が足りない。もし俺が身長一八〇くらいあって相撲部に所属しており、丸太ん棒のような腕を振り回すだけで人が吹っ飛ぶようなスペックを持っているなら、まだ望みはあったかもしれない。

 今の自分を客観的に形容するなら、モヤシ眼鏡だ。

 椅子の上が戦場。鬨の声の代わりに軽やかなタイピングで攻撃命令を発する指揮官。それが俺。


 改めて考えなおすまでもない。このパーティは、ナシだ。

 どうしても要求を満たすパーティが作れなかった場合、潔く解散を宣言するのもまた、リーダーの務め。

 だから俺は、ええと……並木茜なみきあかね望月亜沙美もちづきあさみ清水しみずカナエ、猪狩美紀、鹿野綾女――だめだ、覚えられる気がしない。名札かなんかつけてくれないものだろうか――の五人を順繰りに見渡し、きっぱりと言った。


「よし、このパーティで行動する。今から俺の言うとおりに準備してくれ」


 ……アレ?

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