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三時のおやつ

苺たると様からのリクエストにお応えして、糖度アップの番外編です!

糖度アップ、そのままお菓子に変換されてしまってますが、楽しんでいただければ嬉しいです。

よろしくお願いします。

 ふわふわのシフォンケーキ、香ばしいアールグレイのクッキー、苺のタルト、甘いお菓子がテーブルには並んでいる。

 バートロム公爵家の一室で、主人のためにミルクティーを淹れているのは、悪魔であるルディ。人間としての生活に馴染みすぎるほどに馴染んでいる、と自負しているルディは、紅茶を淹れることに長けていた。

 そして、用意されたお菓子はすべてティアレシアのためにとパティシエが愛情を込めて作ったものだ。

「ん、おいしい」

 一口サイズのタルトを口にして、ティアレシアがにっこりと微笑む。

 あの革命の後、ティアレシアはよく笑うようになった。そして、ティアレシアの笑った顔が、ルディは好きだ。しかし、無防備なその笑顔が自分に向けられないことに苛立っていた。

(俺はタルト以下なのか……!)

 それなりに、人間の世界ではモテる容姿をしているし、魅力的な男性であるはずだ。ティアレシア以外には、受けがいい。時々、自分の容姿が変なのかと思い、その辺にいる女に声をかけたこともあったが、どの女もルディに好意を寄せていた。恋情とも言えるだろう。それなのに、ティアレシアは怒ったり、拗ねたり、泣いたりするばかりで、ルディに無防備な笑みを向けたことはない。

 とうとう、ルディも我慢の限界だった。

「俺にも食わせろ」

「どうぞ」

 ティアレシアはもうひとつ、苺のタルトを手に取ってルディに渡そうとする。

「そっちじゃねぇよ」

「……えっ」

 ティアレシアが声を発する間もなく、ルディはティアレシアの唇を奪う。そして、抵抗しようとするティアレシアの腕を掴み、強引に舌を割り込ませ、その甘い口内を犯す。逃げていたティアレシアの舌を捕まえると、苺の味がした。

「確かに、うめぇな」

 長い口付けの後、ルディはにやりと笑ってそう言った。

 頬を上気させて、ルディを睨むティアレシアが可愛くて仕方ない。


(俺をもっと感じて、その心をすべて俺によこせ)

 ティアレシアは何とか冷静になろうとしているようだが、なかなか潤んだ目も赤く染まった頬も元には戻らない。

「もう、どうしていつもそう強引なのよ!」

 また、ティアレシアはいつものように怒っている。きれいな形の眉を吊り上げて、ルディに感情をぶつけるティアレシアも好きだ。しかし、いつもならもうこれで満足するはずなのに、何か物足りない気がした。

「だが、嫌ではないんだろう?」

 さらさらと流れるような銀色の髪を一房すくい、ルディは口づける。その行為にティアレシアはまた赤面し、しどろもどろに答えた。

「そ、それは……急に、あ、ああいうことするのは、やめて」

 その反応がまたかわいくて、ルディはティアレシアの身体を引き寄せる。急に引き寄せたために、ティアレシアの座っていた椅子がコトンと音を立てて倒れた。そして、自然とティアレシアはルディの腕の中に納まった。


「お前がかわいすぎるのが悪い」

 ティアレシアの首元に顔を寄せ、ルディは鎖骨に吸い付いた。

 強く、強く、存在を示すために付けた、赤い印。

 ちろり、と舌でなめると、苺よりも甘い何かがそこには含まれていた。

「……な、何するのよ! 丸見えじゃない!」

 赤面しながら抗議してきたが、ルディの知ったことではない。わざと見える位置に付けたのだから。

「いい加減、素直になれ。俺を愛しているんだろう?」

 耳元で優しく囁けば、ティアレシアの抗議の声が止んだ。そして、密着している肌から、その鼓動が伝わってくる。どくどくと忙しなく動く心臓に、ルディは意地悪な笑みを浮かべた。少しだけ身体を離し、ルディはティアレシアの左胸に手を当てた。

「この鼓動は、俺を意識している証だろう?」

 そう言うと、ティアレシアの鼓動がさらに跳ねた。

「あ、愛してなんか……っんん」

 否定の言葉を口にしようとしたティアレシアの唇を、ルディは塞いだ。また抵抗されるだろうと思っていたのに、ティアレシアは目を閉じてどうにか踏ん張っていた。まるでルディの口づけに応えるように。

 その変化に、ルディは内心どろっどろに甘い心地になっていたが、表面に出すことはなんとか我慢した。

「意地を張るのはやめたのか」

 唇を離して、ルディが笑うとティアレシアが真っ赤な顔で答える。

「……愛してなんかやらないって、思ってたわよ。でも、こんな風にされたら、どうしようもないじゃない……!」

「それは、つまりどういうことだ?」

 遠まわしに言おうとしているティアレシアに、ルディはきっぱりとした答えを求めた。

「……もし私が愛するとしたら、きっと……ルディだけだわ」

 もっとストレートに愛していると言われたかったルディだが、ティアレシアらしい答えに満足した。ティアレシアを抱きかかえ、颯爽とソファに座らせた。やわらかなソファはきっと多少の衝撃を和らげてくれるはずだ。

「ティアレシア、愛してる」

 どうか“心”に届くように、とルディはティアレシアの額に、頬に、唇に、耳朶に、鎖骨に、腕に、手首に、足……彼女に触れられる場所すべてにキスを落とした。

 触れられない心に手を伸ばすように、彼女からの愛を求めて、自分の愛情でティアレシアを包み込む。

 恥ずかしさのあまり何も言えなくなるティアレシアに、ルディは追い打ちをかけるように優しく言葉を紡いだ。


「どんな菓子よりも、お前が一番甘く、おいしい」


 お菓子を楽しむティータイム、悪魔が楽しんだのは愛する者の甘い身体。

 テーブルに並べられたお菓子たちは、食されるのを今か今かと待っていた。



 

 


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