表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/29

甘い嘘

今日はエイプリルフールですね!

ということで、よろしくお願いします。

「ねぇルディ、しばらく私たち会わない方がいいと思うの」


 そんな重大なことを何でもないことのように言ったのは、青みがかった銀の髪を持つ美しい娘。ルディが唯一愛する人間、ティアレシアだ。


「おいおいちょっと待て。どういうことだ?」

 本気で焦って、ルディはティアレシアに詰め寄る。華奢な両肩を掴むと、ティアレシアに睨まれた。

「もう、痛いわ」

「悪ぃ……」

 愛しい人にそう言われては、ルディは手を離すしかない。しかし、しばらく会わないなど、納得できるはずもない。

「王女だからか? それとも、フランツか? 俺が何かしたか?」

 矢継ぎ早に問い詰めると、ティアレシアはうんざりしたような顔になる。こういうところがまずかったのかもしれない。そう思い直し、ルディは一度大きく息を吸う。

「……すまない。俺が悪かった。だから、浮気は絶対するな!」

 懇願するように勢いよく頭を下げると、ティアレシアにおもいきり怪訝そうな顔をされた。

「は?」

 ティアレシアは美しい。白く透き通った肌も、大きな紺色の瞳も。復讐に燃えていた頃よりも、雰囲気は柔らかくなり、さらに美しさは増した。今までルディは、ティアレシアの美しさに磨きがかかったのは、自分がたっぷり愛しているからだと疑わなかった。しかし今、その自信は崩れつつあった。


(俺の愛が足りなかったのか……? それとも、重すぎたのか?)


 ティアレシアほどの女を、ルディは知らない。というか、ティアレシア以外興味がない。自分は悪魔で、永遠にティアレシアだけをみる。

 しかし、ティアレシアは違う。人間だ。心変わりもあり得る。もしかしたら、あまりにも可愛すぎるから、他の男がルディの知らないところでティアレシアに近づいたのかもしれない。そんな男がいたら、即潰しに行くが。それがセドリックのような変態だったら、生かしてはおけない。

 狂いそうな嫉妬心に駆られた時、目の前のティアレシアはふふっと笑った。人が真剣に話しているというのに、何故かとても楽しそうだ。


「私が浮気なんてするはずないでしょう」


 ティアレシアはいつになく上機嫌に微笑んだ。悪魔であるルディを悩ませて微笑むとは、とんだ悪女に成長したものだ。

「でもそうね、ルディよりも大切な人ができたから……かしら」

「それを浮気というんだろ。どこのどいつだ! 今すぐ連れて来て、俺以上の男か見極めてやる。まあ、俺を超える男なんていないだろうがな」

 愛しいからこそ、むかつく。こんなに愛しているのに、自分以上に大切な存在ができたなど。しかし、ティアレシアを責めることはできない。だから、相手の男に地獄をみせてやる。

「あら。もうここにいるわよ」

「……何言ってんだ。どこにもいねぇだろ」

「ここよ」

 そう言って、ティアレシアはルディの手を引いて、自身の腹部に触れさせた。まったく、意味が分からない。しかし、幸せそうに微笑むティアレシアの顔を見て、とある可能性に気付く。

「嘘だろ」

「えぇ。嘘よ」

 喜びと戸惑いと共に発した問いに、ティアレシアは即答した。その答えに、ルディは内心がっくりと肩を落とす。

「ルディ以上に大切っていうのは、嘘」

 ルディの手を、ティアレシアがぎゅっと握った。


「私、あなたと同じくらい、生まれてくる子どもを愛するわ」


 その言葉を聞いた瞬間、ルディはティアレシアをおもいきり抱きしめていた。


「俺も。ティアと同じくらい、愛する」

 ふふ、と微笑む可愛らしい唇に、ルディは自らの唇を重ねた。柔らかな唇をついばみ、次第に深く、深くと求めていく。

 しかし、キスの途中でティアレシアから抗議の声が聞こえてきた。


「ん、もぅ……っ、やめて頂戴!」

「それも嘘、だろ?」

「ちがっ……」

 溢れる愛しさが止まらない。ルディは逃げようとするティアレシアを捕まえる。

「俺がどれだけお前達を愛してるか、しっかり分からせてやる」

「もう! これだからしばらく離れようって言ったの!」

 冒頭の一文は、嘘ではなく本気だったということだ。

 ルディは不満をおもいきり顔に出す。


「そんな顔しても駄目よ。まだお腹は膨らんでないけれど、お医者様には安静にしてろって言われてるもの。ルディと一緒にいたら、どきどきしすぎて赤ちゃんがびっくりしちゃうわ」


 かわいいことを言ってくれる。結婚して半年以上経つが、ティアレシアはずっとルディにどきどきしてくれているらしい。そのことが、ルディの独占欲を少しばかり刺激した。

「駄目だ。そういうことなら尚更、俺がお前を甘やかしてやらねぇとな」

「どういう理屈よ」

 と、顔を背けながらも、ティアレシアの口元は緩んでいる。おいしそうに赤く色づいた頬に触れて、ルディはそっと囁いた。


「愛してるよ、ティアレシア」

「……私も、愛してる」



 ――そうして、結局二人は熱いキスを交わしたのだった。



読んでいただきありがとうございました!

楽しんでいただけていたら幸いです。

らぶらぶな夫婦に、新たな命が誕生します!きゃっほーい!

本当におめでとうございます(笑)


奏 舞音

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ