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氷撃のカイ・フィリード  作者: 狼花
1章 【北の果て フローレンツ】
8/202

◇最果ての地で出会いしは(7)

 物音がしたので目を開けてみると、カーテンの隙間から日光の光が僅かに差し込んでいた。軽く目をこすって身体を起こすと、隣のベッドにカイが腰かけていた。丁度、昨夜眠る前と同じ態勢だ。

 カイはまだローブ姿のまま。寝起きのようには見えないが、差し込む日光に煌めく銀髪は少し跳ねている。そして右足だけベッドの上に乗せて片胡坐をかいていて、その膝の上に大きな紙を広げていた。イリーネが聞いた物音は、その紙を広げる音だったようだ。


 カイは顔を上げた。イリーネとまともに目が合う。


「おはよう」

「お、はようございますっ」


 妙に息が詰まって、簡単な朝の挨拶で噛んでしまった。かあっと頬を赤くしてしまったが、カイはまったく意に介していないらしい。


「起こしちゃった?」

「いえ、大丈夫です……あの、もしかしてまた寝てないんですか?」


 昨日も一晩寝ていないはずなのだ。二日もそんな状態が続けば、身体がもたないだろう。

 そう思っていたのだが、カイは予想に反して首を振った。


「少しは寝たよ」

「それなら良かったです」

「……三十分くらいだけど」

「えっ!?」


 それは寝たうちに入るのか。入らないだろう。


 カイは立ち上がると、後ろの窓のカーテンを開けた。窓の方を向いていたイリーネの目にまぶしい光が突き刺さる。夏という割に優しい光だったが、薄暗かった部屋に急に光が入れば目が痛くなる。

 ついでに窓まで開けたらしく、一気に風が室内に吹き込んできた。朝の爽やかな風を浴びてしばらく心地良さに浸っていたイリーネだったが、はっと我に返ってベッドから足を下ろした。


「か、顔を洗ってきます……」


 着替えを持って、部屋の出入り口の傍にあった洗面室に入る。後ろ手で扉を閉めると、自分でも驚くほど息が上がっていた。なぜだろう。

 顔をあげると、簡易洗面台の上の壁にかかる鏡に自分が映っていた。赤みのある長い髪、白い肌、そして――緑の瞳。

 ああ、これが自分なのかと、イリーネは初めて認識した。銀髪に紫の瞳という、どこか儚さすらあるカイの容姿とはまるで真逆。


 とりあえず顔を洗い、夜着を脱いだ。着替えるのはヘラーに譲ってもらった、ニットのワンピースだ。

 新しい服を着るというのは、どこか気分を良くしてくれる。ご機嫌なまま洗面室を出て戻ると、カイもさっさと着替えを済ませていた。昨日と同じ服装だ。


 カイは服装の違うイリーネを見て、微かに眉を動かした。


「その服、どうしたの?」

「ヘラーさんにもらったんです。あの青い服と交換で」

「ふうん……似合ってるよ」


 まるで感慨の欠片もない儀式的なその言葉に、イリーネは苦笑するだけだった。

 カイにもらった耳飾りを右耳につける。肌身離さずと言われたからには、それに従うほかにない。けれど、この耳飾りに一体なんの役割があるというのだろう。


 カイはベッドの上に広げていた紙を持ち上げ、机の上に置いた。イリーネもそれを覗き込む。紙に書かれていたのは地図だった。巨大なひとつの大陸と、西側に小さな島がいくつかある。国境線は島を含めて七本あり、世界は七つの国に分けられているようだ。山や川、砂漠などの表記もある。東の国には険しい山脈が多いらしい。西の国には大きな湖がある。南西の国は国土の半分近くが砂漠のようだ。一番広い国は、南東の国だ。西にある島々はひとつの国を形成しているらしい。


「俺たちがいまいるのは、ここ」


 カイが指差したのは、最北の国。「フローレンツ」と書かれている。

 それを確認したうえでカイは地図を裏返した。すると今度は、フローレンツ王国の地図が大きく載っていた。


 フローレンツ王国の海岸線は他国に比べるとなだらかで、半島はひとつ。昨日までいたオスヴィン半島だけだ。東と西と南にはそれぞれ三カ国と国境を接していて、北は一面が海だ。国土面積は大陸の中で一番小さいといっていいだろう。

 突き出したオスヴィン半島の少し南に、青い丸がある。ヘベティカだ。青い丸は集落を表しているらしい。オスヴィンの廃墟の位置に、もちろんその印はない。

 青い丸と丸の間には線が書いてある。街道だろうか。


 国の中央部、やや西寄りには赤い四角があった。カイはその四角を指差す。


「フローレンツの王都、ペルシエだよ。とりあえずはここを目指そうと思う」

「王都……」

「君の記憶を探すためには、いろんなところを見て回るべきだから」


 探し物。それはやはり、イリーネの記憶のことだったのか。そんなに、考えていてくれたのか。

 感動していると、カイはちらりとこちらを見る。


「……記憶探しなんてどうでもよくて、どこか気に入った街に定住したいってことでも、俺は構わないからね」

「いえ……! 記憶は、取り戻したいです」


 カイは頷き、ヘベティカの青丸にすっと指を動かす。


「ヘベティカから街道は二本……西のエフラに行くか、東のルウィンに行くかだ。エフラに行くのが王都への最短ルートだから、それでいい?」

「はい」

「……ほんとに?」

「は、はい」


 なぜ念押しされたのだろう。頼りなかっただろうか。


 地図を小さく折りたたんだカイはそれを上着のポケットに突っ込んだ。


「ヘラーが朝ご飯用意しているって。行こう」





「おはよう、おふたりとも! 昨夜はよく眠れた?」


 食堂には朝から元気なヘラーがいた。食卓には既に朝食の皿が並べてあって、非常に食欲をそそる。イリーネはにっこりと微笑んだ。


「はい、おかげさまで」

「なら良かったわぁ。朝ご飯、冷めないうちにどうぞぉ」


 バスケットに盛られたクロワッサンにサラダ、そしてハムエッグ。コーヒーまでついてお洒落だ。

 席についたカイが微妙な顔をしているので視線の先を追ってみると、それはハムエッグに注がれていた。そういえば菜食主義だった、この人は。


「えっと……ハム、食べれます?」

「……これくらいなら、なんとか」


 菜食主義というより、単なる好き嫌いなような気もしてきた。本当に菜食主義なら、ハムだろうと食べないはずだから。

 ヘラーはまたイリーネの隣の席に座ってキリアの実をナイフで切り分けながら尋ねた。


「これから王都のほうへ行くの?」

「はい、その予定です」

「そう……」


 なぜかヘラーは表情を曇らせた。イリーネが首をかしげると、キリアを盛った皿を食卓の真ん中へ押しやりながら、ヘラーは黙々とサラダを食べるカイを見つめた。


「首都にはハンターが多いから、気を付けてね」


 カイはちらりとヘラーに視線を送る。ヘラーは苦い笑いを浮かべた。


「この街に来る人の大半が、ハンターだから。お兄さんのことは、話に聞いたことがあるわ」

「……分かってて泊めてくれたの?」

「だって、私はハンターじゃないものぉ」

「俺はもう未契約(フリー)じゃないけど、それでも?」

「最近はそんなの関係ないわね。強い化身族を狙って、ハンター同士でも争いが起きてる」

「あらまあ」


 溜息をついたカイはフォークを置いた。


「……ま、大丈夫だよ。伊達に一人で生きていたわけじゃない」

「そうよね、お兄さん強そうだものね! イリーネちゃん、良かったわねぇ」

「え、えっと……何がです?」


 訳が分からないのはイリーネだけだ。カイがヘラーを見る目は鋭く、一触即発のような雰囲気が確かにあった。『ハンター』という言葉がいやに耳に残る。

 自分は、あまりにこの世界を知らなさすぎる――そう痛感した。


 食事を終えるとすぐにカイとイリーネは宿を発った。外まで見送りに出てきたヘラーが、昼食用にとパンと果物を持たせてくれた。有難い。


「元気でね。また遊びに来てねぇ」


 にこやかなヘラーには、別れを惜しむような色はない。宿屋を営む者として、客をもてなし、そして見送るという心が染みついているのだろう。こちらも変に切ない気持ちにならずに済むと言うものだ。


 街の入り口に展開していた市場へとふたりは向かう。旅に出る前に、色々と物資が必要だ。ふたりの荷物といえばイリーネが持っている衣服とヘラーからもらった昼食の包みだけで、必要なものが何もない。特にヘベティカと、次の目的地エフラの間は徒歩二日かかる距離だ。食料と寝具は最低限必要だった。


 欠伸をかみ殺しながら隣を歩くカイに、イリーネはずっと気になっていることを尋ねた。


「カイ、ハンターってなんです? 貴方は誰かに狙われているんですか?」

「ああ。俺、賞金首だから」

「……は、はい!?」


 イリーネは思わず素っ頓狂な声をあげて足を止めた。カイは気にせずすたすたと歩いていく。小走りでまた彼の隣に肩を並べ、声を潜めて問い質す。


「ど、どういうことです!? 賞金首って……何か悪いことをしてしまったんですか!?」

「簡単なことだよ。ハンターと呼ばれる人間族の組織がある。ハンターたちは、化身族を自分たちに従わせるために狩っているんだ」


 本当に、それはまるで『お腹が空いたから食事をする』みたいに簡単なことのように言われてしまった。どういうことだ。化身族は、存在するだけで狩られる存在なのか。


「俺は長いこと、フローレンツ北部に棲みついていた。顔や名前は知られている」

「……えっと、それは大丈夫なんですか……?」

「そうだなぁ……一刻も早くフローレンツを離れたほうが良いのは、確かだね」


 そんな状態でペルシエへ行こうというのか。この国で最も人の多い国都へ。


「心配しなくていいよ。俺、強いから」

「いや」


 とてもそんな風には見えません。

 その言葉をかみ殺すのに、イリーネはそれなりの努力を要した。それを見抜かれてしまったのか、カイはじとっとした目でイリーネを見下ろす。


「……疑ってるでしょ」

「そ、そんなこと」

「賞金かけられるのは強い化身族だけだよ。誰だって弱い化身族とは契約したくないはずだし」

「なるほど……って、『契約』ってなんですか?」


 また知らない単語だ。大層な呼び名だが、どんな契約をするというのだろう。

 カイは口を開きかけたが、前方に視線をやって口をつぐんだ。そこはもう市場で、朝の買い物をする住人たちでごった返していた。


「続きは街を出たらにしよう。まずは買い物だ」


 さすがに人ごみの中でカイについて話すのはまずいので、イリーネも即座に頷いた。


 まずカイが向かったのは衣服を売る店だった。自分とイリーネの分の上着を購入するためである。マントやコートがあれば防寒や防護に役立つ。フローレンツの女性ものマントは踝のあたりまですっぽりと覆い隠すもので、イリーネはそれを選んだ。カイは薄手でフード付きのものである。カイはその場ですぐにマントを羽織ってしまう。銀髪に黒の外套はよく似合う。


 ついでにその店で大きめの鞄も買い、次に向かったのは食料調達。

 次の街まで五食で足りる。旅人向けの携帯食料を買い、なぜかカイが持っていた水飲み袋に水も補給した。その際念入りに袋を洗っていたのは、『新しいものを使う時は一度洗うでしょ』ということらしい。


 そのあとは火打石やらナイフやらという雑貨を買った。ナイフはこれで二本目だが、どうやら新しく調達したそれはイリーネの護身用らしい。持っておけと渡されたので、マントの内ポケットに忍ばせている。


 それらをすべて鞄に詰めると、鞄はそれなりの大きさになった。だがカイがひょいと肩に担いでしまえば、驚くほどの大荷物ではない。むしろ旅装としては軽い方だ。


 ところで――カイは非常に気前よく一ギル銅円や十ギル銅板、百ギル銀円などの金銭を使っているが、果たして残金はどうなっているのだろう。まだ財布の質量的に、余裕はありそうだが。



「さて、買い物も済んだし、出かけようか」

「はい」


 にっこり微笑んだイリーネを見て、カイが首を傾げる。


「楽しそうだね」

「楽しいです。いろんな場所を見て回れるのが……不謹慎、かもですけど」


 素直にそう答えたときの、カイの表情は――いつになく、穏やかだった。


「……そっか」


 カイはくるりと踵を返した。彼らの前には街道がある。オスヴィン半島から入ってきたのとは違う、街の南西にある街の出入り口――エフラへと向かうただひとつの道。

 ヘベティカ、と書かれた木の門を見上げ、イリーネはそれをくぐる。怖さもあったけれど、初めて出逢った街と、これでお別れだ。





★☆





 ヘベティカとエフラを繋ぐ街道は、国内でもかなり長い距離に入る。途中に休憩所らしいものはあるが、ひたすら代わり映えのない道を歩いていくのは肉体的にも精神的にも辛い。

 フローレンツの景色というのは、一面が『荒野』と呼ぶにふさわしい。色を失った草がぽつぽつ生えるだけで、樹木は勿論花の一本さえもなかなか見つからない。南へ行くほどにその環境は改善されていくらしいが、非常に貧しい自然であることに変わりはない。


「でもまあ、冬じゃなくて良かったよね。雪原なんてまともに歩いて旅できないから」

「冬はどうやってこの街道を通るんですか?」

「馬車が運行していてね。その人たちが一生懸命除雪して、馬車が通れるだけの道を作る」

「そうなんですか……その馬車、今の時期は動いてないんですか?」

「そんなことないよ?」


 街道を進むふたりの背後から、なにか音が聞こえてきた。足を止めて振り返ると、土煙をあげて街道を駆けてくる馬が見えた。馬が二頭で引いているのは大きな馬車だ。

 カイがイリーネの手を引いて街道の脇へどくと、馬車は街道を駆け抜けていく。御者の男性がこちらに「どうも」と手を挙げたのが見える。馬車の中には何人か客が乗っていた。


 駆けていく馬車の後姿を見送ったイリーネは、沈黙しているカイを見やる。


「……馬車、乗って移動しても良かったんじゃないですか?」

「……あー……」


 カイは頬を指でかいた。また失念していたらしい。

 やがて鞄を担ぎ直し、歩き出す。


「お金の節約ってことで」

「もう……」


 イリーネは苦笑してカイを追いかける。


「それで、なんだっけ。契約の話?」

「あ、はい」


 覚えていてくれたらしい。カイはポケットに右手を突っ込んでから話し始めた。


「化身族はみんな、自分の身体の一部で作った道具を持っているんだ。契約具というけど、それを人間族に渡すこと。これが化身族と人間族の『契約』」

「契約具?」

「俺の場合は、その耳飾り」


 イリーネは驚いて右耳に手をやった。固い感触――この紫色の耳飾りが、契約具だというのか。


「土台になっているのは俺の牙だ。それにまあ、近くにあったから綺麗な鉱石を埋め込んだだけ」

「……えっと、つまり私は、知らない間にカイと契約してたってことですか?」

「うん」


 そんなあっさり。オスヴィンの廃墟を出る時に、『似合いそうだから』とか言ってこの耳飾りを渡してきたではないか。そんな重要な意味を持つものだとは思いもしなかった。


「といっても、難しいことじゃない……俺はイリーネの力になりたい。そう思っただけだ」

「カイ……」

「昨日も言ったでしょ。戦いのスイッチが入った俺を止められるのは君だけだ。それは、君が俺の主だから。俺がそう認めたからだ」


 カイはふわと小さく欠伸を漏らした。日が高くなっていくにつれて、眠気も大きくなっていくのだろう。


「ただひとつ問題なのは、化身族は契約具を持っている相手に必ず従わなきゃいけないという掟があることだ」

「それはつまり……私がこの耳飾りを誰かに渡してしまったら、その人がカイの主になるってことですか」

「うん。たとえばその誰かが『イリーネを殺せ』と言ったら、俺は君を殺さなきゃいけない」


 今の今までの主を殺せと言われ、実行するのか。実行できてしまうのか、化身族という種は。けれど、それが『契約』で、『掟』なのだろう――。


「……だから、その耳飾りは肌身離さずつけていて。今のところ俺は、君以外に従うつもりはない」

「は、はいっ……」


 カイは、自分の意思でイリーネと契約を交わしてくれたようだ。それはやはり、イリーネが傷を治したからなのか。カイと一緒にいられるのはとても心強いが、そのせいで危険な目に遭わせてしまうのではないだろうか。

 とは言っても――イリーネにそんなことを言えるわけがない。カイがいなくなってしまったら、生きて行ける自信がない。彼が大丈夫だと言っているのだから、信じることにしよう。



 二時間ほど歩いていると、ぽつんとひとつ家屋が見えてきた。街道の途中にいくつか建てられている休憩所だ。カイとイリーネはそこに立ち寄って、ヘラーが持たせてくれた昼食の包みを広げた。パンと果物で手早く食事を済ませる。というのも、途中で休憩所の中に大所帯の旅人が入ってきたためだ。

 カイは彼らを見て、「ハンターだ」と言った。彼らの半数が人間族で、半数が化身族。ハンターとは、人間族と化身族がふたり一組で認められる職なのだそうだ。


 カイを見てもそうだが、だれが化身族なのかがイリーネにはさっぱりだ。それほどまでに化身族は人間族と同じ容姿をしている。ただ、ハンターに限ってはイリーネにも簡単に見分けがつく。己の牙や爪で戦う者、それが化身族。その中で猟銃を肩に担いでいるのは、牙も爪も持たない人間族だ。


 初めて間近で見た化身族は非常に柄が悪く、恐ろしかった。始終顔を見せないように下を向いていたカイが、すっとイリーネの腕をとって休憩所を離れた。カイが賞金首だとは気づかれていないらしい。


「……化身族の間では強さがすべてだけれど、人間族もそれは同じだ」


 用心のためにカイはマントのフードを被った。彼の銀髪はあまりに目立つ。


「人間族にとって、化身族と契約しているっていうのはある種の勲章らしい……獣という『武器』を手に入れたという、強者の証だ」

「武器だなんて、そんな……」

「力仕事から喧嘩、国同士の戦争まで。化身族は武器として駆り出されている世の中なんだ」


 食べきることができなかったパンの欠片を、カイは口の中に放り込んだ。


「だから俺は誰とも契約したくなかった。でもイリーネは、そんな風に俺を使わないと信じてるよ」


 使うも何も、カイは頼もしい旅の仲間だ。道具のように見るつもりなど、これっぽっちもない。この世界のことを知るたびに少なからず衝撃を受けているイリーネは、気丈に顔をあげて微笑んで見せた。


「信じてください」


 それが今できる、カイへの意思表示だ。


 頷いたカイは、視線を前へ戻す。一直線に街道は果てしなく続いている。


「次の休憩所で夜を越そう。願わくば、ハンターと鉢合わせないように」

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