第八話 白い巨塔 其の三
いやいやながらも、白い巨塔出演が決まり、監督と田宮二郎、そして広末涼子と話し合っているところです。
「白い巨塔 其の三」
リュシフェル
フジテレビのスタジオで、監督と田宮二郎と向かい合って座らされた。二人とも、表情は硬い。
「もう、リハーサル終わったので帰りたいんですけど」と、俺。クソ、面倒くせぇことになってきた。
「君を使いたい」と監督。
「私も、そう思う」と、田宮二郎。
「俺、別に、役者志望ではないので。では、では」面倒くさいことの嫌いな俺。
「君、普通、誰でも役者になりたがるぞ」と監督。
「俺、普通じゃないんで」と、俺。
「私も、普通じゃない」と、田宮二郎。
「たしかにお前は普通じゃない。だって大根役者だし」と、俺。監督、苦笑い。田宮二郎、悲しそうな顔をする。
「わかった。ちょっとだけでいいから出演してくれ」と、監督。
「じゃあ、広末涼子さんがいるまでなら」と、俺。
「どういう関係なんだ二人は?」と、監督。
「ただの運命の二人です」と、俺。んー、ちょっとかっこいいかも。
「どうしたら演技がうまくなるんだ?」と、田宮二郎。
「俺が辞める時教えます。俺が教える気があるならですけど」と俺。
「わかった。末永くよろしくな」と監督。
「監督、こいつ松田優作の生まれ変わりって言ってましたよ」と田宮二郎。
「ウチの涼子も、そう言っていた。なんとか使いたい」と監督。
(小さな声だけど聞こえているよっと)
広末涼子が呼ばれる。
「涼子、役交代だ。涼子が足の悪い役。こいつが目の見えない役。いいな?」
「はい、お父さん。じゃなかった監督。」かわいいー。
「おとうさん?」と、俺。
「ああ、私は涼子の父親だ。涼子が小さいころから、演技の英才教育を施した。なあ、涼子?」と、監督。そうだったのか。
「はい。でも、きよじに勝てない」と、広末涼子。かわいいー。
「勝とうとするんじゃない。どっちが目立てるかでもない。脇役でもいい要は自分のフィールドに持ち込めればいい」と、俺。
「フィールド?」と、広末。
「領域という言葉でもいい。自分なりの世界観を出せればいい」と、俺。
「なんとなくわかったような気がする。きよじの世界観は?」
「女こそすべて」
「ふふ」と、広末。
「ウソぴょーん」と俺。
「ふたりの本番の演技を見てみていい方を長く使うからな」と、監督。
「はい」と、広末。いい返事だ。
「涼ちんが辞めたら、俺も辞めるんですけど。女こそすべて」と俺。書き直された台本を渡される。
「なるべく早く本番入りましょう」とスタッフ。
「こいつらが台本、覚えたらな」と監督。
「本番はいりまーす」以上。
グズグズですいません。次からはリハーサルではなく、本番が始まります。次も、よろしくお願いします。