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きよじ  作者: 東 清二
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第七十二話 ゲオルグ兄弟 大木茂の兄退治

昭和の末期、児童養護施設 東京サレジオ学園で、俺にとっては初めてのかくれんぼが、何故か 先輩との喧嘩になってしまう話です。

時代は昭和の末期、場所は東京都の西部 多摩地区にある、児童養護施設 東京サレジオ学園。運営は主に、キリスト教の神父と、シスターと呼ばれるキリスト教の修道女の手によって行われている。環境は、鑑別所と少年院と孤児院の機能を兼ね備え、家があり尚且つ家で暮らせる少年は、サレジオなんか二度と入りたくないと、改心し家へ帰る。そんな所だ。そこに帰る家を持たない、俺 ひがし 清二きよじが暮らしていて、小平市立第三小学校の二年生になった。勿論 俺だって、帰る家さえあれば とっくに帰っているけどね。改心の意味が、わからない。これが罪と罰なら、どこでどう俺は 間違えたというのか?振り返ってみても、挫折と敗北の人生は、挫折と敗北しかないみたいだ。


家は家でも、『ねむの家』と呼ばれる家で 俺は暮らしている。其処は、東京サレジオ学園の敷地内にあり、小学校一年生から小学校三年生までが、暮らしているところだ。親のいない子や親が育てられない子が、全部が全部 悪い子ではないかもしれないけど、毎日 喧嘩が多発するし、悪い子の方が圧倒的に多い印象だ。勿論、俺だって常に 大人しくいい子ではないけどね。そして 一番厄介なのが、ここ東京サレジオ学園の園長 村上むらかみ コウスケだ。何の役にも立たないのに、しょっちゅう『ねむの家』に来て、俺を呼び出す。そして村公むらこうは、キリスト教の聖書を暗記させようとしたり、公文をやらせたりする。俺は【神は死んだ】とキリスト教を否定しているし、別に公文が悪い訳ではないけど、村公むらこうが教えられも出来ないくせに、どんどん先へと公文の問題のレベルが上がっていく。その時間、『ねむの家』の子供たちは、かくれんぼをしているのにね。そんなある日、佐藤さとうシスターの計らいで「お皿洗い終わったら、今日は公文なんてしないで、かくれんぼでもして遊んでていいわよ」と告げられる。出張か何かで、村公むらこうは、今日は確実に『ねむの家』には、来ないとの事。俺は、鼻歌交じりに数十人分の皿洗いを終わらせ、羨ましかった かくれんぼをする事にした。


「今日は村公むらこうは来ないし、俺も かくれんぼに入れてくれ」と、小3の番長 横山よこやま ケンジと小2の中山なかやま カツオに言うと、交じってもいいとのこと。ただしその場に、会った事も見た事もない、太っちょで気味の悪い ゲオルグのような顔と身体をした、見たところ大分 学年が上の中学生と思われる先輩が居た。俺としては、知ったこっちゃないので、初めてする かくれんぼのルールを聞く。浮かれ気分でね。するとそのゲオルグみたいな中学生が「今 ケンジと大事な話をしてるんだ。かくれんぼなら、他のガキとやれ」と言われる。それならそれで 問題はないので、「じゃあ ケンジ君抜きで、かくれんぼをしよう」と、俺はカツオに言う。カツオは了承した。

「ひがしきー、ひがしきが入るなら、オレもかくれんぼしたいぞー」と横山よこやま ケンジ。

「ケンジ!大事な話だっつてんだろ!」とゲオルグみたいな中学生が、怒りながら言う。

「じゃあ きよじ、ケンジ抜きで かくれんぼだ」とカツオ。

「お前ら 小ガキは、黙ってろ!ぶっ飛ばすぞ!」とゲオルグみたいな中学生。


「『ねむの家』では、最上級生の小3の番長 横山よこやま ケンジ。闘いますか?其れとも、番長辞めますか?」と俺は、ケンジに聞く。

「イヤッ、ひがしきー、大木おおきさんは中学生で、先輩だから言う事聞くしかないからよー」と、いつもとは打って変わって弱気な、小3の番長 横山よこやま ケンジ。

そして「お前、ごちゃごちゃ うるせえんだよ!」と、大木おおきという名のゲオルグみたいな中学生は、俺の顔面を思い切り ぶん殴ってきた。だが ここ東京サレジオ学園では、理由もなく 先輩が後輩をボコボコにするなんて よくあることなので、俺は動じない。

その上で「小3の番長 横山よこやま ケンジ。後輩の俺が、顔面を思い切りぶん殴られたけど、闘いますか?闘いませんか?」と問う。

「ひがしきー、相手は中学生で先輩だからよー」と、何の為の番長なのか?ケンジがそう答える。

「きよじ!大木おおきの兄は、ゲオルグと呼ばれると、ぶち切れるぞ」と小声で、カツオが囁く。

「じゃあ、大木おおきの兄 ゲオルグ!殴ったら殴り返す。蹴ったら蹴り返すからな」と俺。


「てめーっ!こっちは、先輩で中学生だぞ!オレがゲオルグと呼ばれるのが、嫌いなこと知らねえみてえだな!」と、当然ぶち切れる 大木おおき・ゲオルグ・兄。さあ いつもの、喧嘩が始まる。

もともと瀬戸内海の小さな島で、先輩で番長のサイトウ ハヤトと共に、大人のチンピラ相手に喧嘩を繰り広げていた 俺にとっては、喧嘩の相手が先輩で中学生の大木おおき・ゲオルグ・兄でも、何の問題もない。向こうから殴り掛かって来た分、戦闘開始の大義名分が立つ。なので、敵の顔面パンチはおでこで潰し、蹴りはいなし もっと強い蹴りを返す。鼻歌交じりで、充分に勝てた。ぶっ倒れて動けない、大木おおき・ゲオルグ・兄に、全くリスクのない蹴り 踏みつけ攻撃をして「大木おおき・ゲオルグ、ギブアップするか?」と俺は聞く。

「待て!中学生が小ガキに、ケンカで負けるわけにはいかないんだ」と、大木おおき・ゲオルグ・兄が言うので、うつ伏せに倒れているゲオルグの、後頭部を思い切り踏みつけると、大木おおき・ゲオルグ・兄は動かなくなり、うんともすんとも言わなくなった。


「勝った。弱え、大木おおき・ゲオルグ・兄」と俺。

「ひがしき!相手は中学生で、センパイだぞ!中学生たちに、ぶっ飛ばされるぞ」と、何も出来なかった 小3の番長 横山よこやま ケンジ。

「知らねえよ。そうなりゃ、戦うのみだよ。大木おおき・ゲオルグ・兄は、小2の大木おおき しげるの兄貴か?」と俺。

「ああ。両方、いらねえけどな」と中山なかやま カツオ。

「じゃあ 大木おおき しげるに、ゲオルグみたいな兄を倒したと、伝えておかないとな。隠れながら喧嘩を見ていた、元ゴリラのつばゴリ!大木おおき しげるとやらを、連れて来てくれ。俺が、ゲオルグみたいな兄を、喧嘩でぶっ飛ばして 退治したとな」と俺。

覗いていたのがバレた小2のつばゴリは、「かくれて見てたのが、バレてた」と言い、大木おおき・ゲオルグ・兄の弟、此方もゲオルグみたいな小2の大木おおき しげるを、呼びに行く。


『ねむの家』の中なので、直ぐに 恐れながら 怯えた様子で、小2の大木おおき しげるは、喧嘩の勃発していた『ねむの家』の廊下へやって来た。

大木おおき大木おおきを倒したからな」と俺。

大木おおきに、大木おおきを倒したと言う」と、カツオとつばゴリが笑う。

「ああ。構わない。オレはそいつを、嫌いだしアニキとも、認めてないからな」と小2の大木おおき しげるは言う。

「そんで 確かに大木おおき兄弟は、ゲオルグみたいだけど、何で其れだけで 俺が顔面を、思い切りぶん殴られなければいけないのが分からん」と俺。

「もしかして、お前1人で倒したのか!?」と小2の大木おおき しげる

「ああ。殴ったら殴り返す。蹴ったら蹴り返すと伝え、大木おおき・ゲオルグ・兄の攻撃に、反撃してたら余裕で勝てた。ケンジにカツオに、序でに隠れて覗き見してた つばゴリが証人だ。このゲオルグ・兄は 知らねえけど、横山よこやま ケンジにしろ中山なかやま カツオにしろつばゴリにしろ、お前 大木おおき しげるにしろ、全宇宙の支配者 クソ大和田おおわだの側の糞野朗たちじゃねえか。クソ大和田おおわだも含めて、俺が念能力者に成ったら 全員まとめて、ぶっ消してやる!」と俺。

「待て!きよじ、記憶が蘇ったのか?オレは見逃せ!」と中山なかやま カツオ。

「記憶なんか、刺激があれば 思い出すんだよ。あーあ、とっとと ここ東京サレジオ学園を、卒園してえなー。クソ野朗とクソ女ばっかしで、しかも俺の側の人間たちは、1人も居ない。じゃあ 大木おおき・ゲオルグ・しげる、この生ゴミと化したゲオルグ兄を、東京サレジオ学園内の住んでる家まで、捨てに行っといて。か、ゲオルグ・兄の敵討ちに お前も闘うか?」と俺。

「闘わない!アニキでも勝てないのに、オレがケンカで きよじに勝てる訳がない」と小2の大木おおき しげる

「しょうがねえなあ。じゃあ この大木おおき・ゲオルグ・兄を、『ねむの家』から放り出そう。何処に住んでるかは、佐藤さとうシスターに聞けば分かるだろうし」と俺。

結局 俺は、一度はしてみたかった かくれんぼを、喧嘩なんかのせいで 出来なかった…。


《全宇宙の支配者 クソ大和田おおわだも、大和田おおわだの側の人間たちも居ない所へ行ける 唯一の方法。其れは俺の側の人間たちでも、俺に辿り着けない所へ行き、落ちぶれるだけ落ちぶれて、落ちこぼれることで、最底辺の生活をする事だった。当時の俺が、尾崎豊おざきゆたかだった時に、最後の最後のこの人生を送る 俺に向けた歌、「ギリギリの暮らしなら 見つけられるはずさ」を経験している。2017/02/16今現在の俺は、正にギリギリの暮らしだし 良くもなければ幸せでもない。むしろ不幸だろう。ただし 数千年前から続く、俺と クソ大和田おおわだのお互いの存在そのものを、消すか消されるかの戦いの中、初めて 大和田おおわだも その側の人間たちも居ない、そして大和田おおわだも知らない場所へと辿り着いた。全宇宙の支配者 クソ大和田おおわだが、今 何処で何をしているか、俺は知らないし分からないけど、その代わり 大和田おおわだも、俺が何処で何をしているか知らないし分からないだろう。だから、あとは待つだけさ。あと15年もない 俺の寿命が尽きることか、念能力が復活する事をね。此処まで待って、此処まで来たんだ。もうちょっとの辛抱だ!》


こうして、此れから先も続く 先輩たちとの戦いが始まる。殴られたら殴り返す、蹴られたら蹴り返す といっても、其れは俺の先輩や せいぜい同学年に対してで、俺が先輩にボコボコにされて育ったといっても、だからと言って、俺は俺の後輩をボコボコにはしない。よほどの事が、ない限りはね。自分がぶっ飛ばされたシュテュエーションで、同じシュテュエーションで後輩をぶっ飛ばさないのは、忍耐がいるけど、東京サレジオ学園の暴力と憎しみの連鎖を、俺の代で断ち切りたかった。次回の話は、長沢ながさわ 清次せいじという、しょうもない勘違い男の先輩が出てきます。勿論、大和田おおわだの側の人間です。さて、どうなることやら。以上。

読んで頂き、どうもありがとうございました。宜しければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!

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