第六十六話 先輩と後輩の間
児童養護施設 東京サレジオ学園で、代が変わったにもかかわらず 相変わらず、戦いの日々の話です。
世の中には、色んな子供たちがいる。ガリ勉、秀才、天才、スポーツ馬鹿、運動音痴、不良、悪ガキ などなど。他にも、親のいない子供。親が育てられない子供がいる。その中で、小学校二年生の俺の入るカテゴリーは、親が完全に存在しない子供。太陽の堕とし子で、天涯孤独の身だ。そんな俺、東清二は、自分の家が存在しないので そうなると、行き着く先が孤児院 、今で言う児童養護施設となる。別に児童養護施設行きが、全部が全部 悪い訳ではないが、俺の住んでいる 児童養護施設 東京サレジオ学園は、俺にとっては 地獄の様相を帯びている。そして、新しく小学校二年生になった俺には、先輩だけじゃなく 後輩もできた。そんな中での、物語。
東京サレジオ学園の、小学校一年生から小学校三年生までが収容されているのが、『ねむの家』と呼ばれる家だ。『ねむの家』には、子供たちが寝起きする大部屋が2つあり、学年が偏らないようにバランスを取りながら、振り分けられている。子供たちの世話をするのが、キリスト教のシスターと呼ばれる修道女で、佐藤シスターが また俺の住む大部屋の担当だ。もう一つの大部屋は、俺と仲の悪い 三宅シスターが、担当している。そして 代が変わったからか、新しく ジャンボ・テレジアというシスターが、日曜日にドッチボールをさせるために、『ねむの家』のシスターに加わった。ジャンボ・テレジアとは、修道女に 神父が付ける名前で、本名は不明だ。肌は浅黒く、身体は大きく でっかい冷蔵庫みたいな女性で、のちに俺とも 因縁が生まれたりする。
佐藤シスターの担当する、俺も寝起きする 大部屋の顔ぶれが変わった。小3の番長 横山 ケンジ、運動神経のいい 喧嘩は強いが、勉強はまるで出来ない少年。俺と同学年の小2の 中山 カツオ、口ばっかりで お調子者の何事も、中途半端の少年。この2人と俺が、枕戦争の攻撃陣だ。枕戦争とは、俺が 東京サレジオ学園に入る前からの習わしで、夜中に1人だけをターゲットに枕を武器に、相手が泣こうが喚こうが、ボコボコにするというもの。シスターに相談しても 逃れられず、むしろシスターたちも 公認で、三宅シスターは 大いに煽り、俺がターゲットにされる日は、三宅シスターは調子に乗り機嫌がいい。ただ たかだか、ボコボコにされるぐらいで 俺は怯えたりしないので、俺が許しを乞いに来ると思い込んでいた 三宅シスターの落胆した顔は、見ものだった。こういうとこも、俺と三宅シスターの 仲の悪い理由だ。ちなみに三宅シスターの担当する大部屋には、小3の横山ケンジに、ボス猿の座を巡る ケンカに敗れた、同じく小3の熊谷 ツヨシと小3の村瀬フミオ 等がいる。
日曜日は、ジャンボ・テレジアの号令で、『ねむの家』の子供たち全員参加で ドッチボールをする。そして ジャンボ・テレジアの気分と判断次第で、プラスチック製のバットで 『ねむの家』の子供は、ケツにフルスイングされることになる。結構 痛いけど、慣れれば 心構えだけしてれば、耐えられないほどの事もない。ドッチボールは、大概 年下のスポーツの得意ではない子供から、ボールに当たり外野行きになる。次に 年下のスポーツが得意な子供もボールに当たり、外野へ行く。俺は別に、やる気がある訳ではないので、ドッチボールのコートの真ん中付近で、内野の子供の人数が少なくなるまで、ボールを避け続ける。ボールを投げる相手が、足をどう踏み込んでいるか、どんな投げ方をしたら どんなボールが飛んで来るか感覚で分かれば、それは可能だ。そして、コートに残っている者達が少人数になったら、避ける時は避けて、このボールならキャッチ出来ると思ったらキャッチする。そんな感じで、俺はドッチボールをしていた。もちろん、負けたチームの代表者は、何故か ジャンボ・テレジアから けつバットを食らうのだけど。
そんで 夜になったら夜で、枕戦争が幕を開ける。なんかもう、子供同士を どんだけ対立させて、どんだけ仲を悪くさせ 喧嘩をさせたいのか、この東京サレジオ学園『ねむの家』の仕組みが間違っている。まぁ 園長の村公こと、村上 コウスケは 全宇宙の支配者 クソ大和田の親友で、エイズウイルス保有者で、クソ野朗だからね。そんな奴が園長をしていたら、こんな事になるのだろう。村上 コウスケだけじゃなく、他の村公の村内 コウイチも 村瀬 コウイチも 木村 公一も、もちろんクソ大和田や 大和田の側の人間達も、俺が念能力者になったら 全員、ぶっ消す!しかし、この時もそうだし たかだか念能力を手に入れることが、俺の場合 出来なくされてる。全宇宙の支配者の権限を持つ クソ大和田と、クソ野朗中のクソ野朗 高倉健の邪魔と、クソっぷりでね。そんな高倉健も、やっと死んで やっとクソ大和田の側の人間になったと、風の便りで聞いたとさ。
枕戦争は、冷蔵庫に 各自の大部屋のベットの位置が書いてあり、日替わりで 攻撃しあう。枕で攻撃すると言っても、平気で グーパンチや 蹴りも、飛んでくる。ターゲットも、最終的に 全員被害に遭うことが 決まっているだけで、「今日はこの子、明日はこの子」と 、シスターたちが決める。そして、俺は 違う大部屋担当の三宅シスターと仲が悪いから、俺がターゲットじゃない時にも、攻撃を三宅シスターの命令で、小3の熊谷 ツヨシや小3の村瀬 フミオから、散々 受ける。なので 俺は、戦う事にした。
いつものように、熊谷 ツヨシと村瀬 フミオが、俺に パンチや蹴りを見舞おうとする。
「今度から俺は、相手が先輩でも 戦う事にした。ヤンならやんぞっ、こらっ!」と、俺は宣言した。当然 先輩の2人から、「てめーっ、こっちは先輩だぞっ!」と言われ、俺1人対先輩2人で 闘う事になる。最初は枕だけで 攻撃していたが、俺は 元 ルー・ゲーリック。枕を有効に使えば、十分に闘えた。すると 熊谷 ツヨシは、枕を置いて パンチと蹴りで、攻撃してきた。それでも 俺は、枕戦争のルールを知らないので、もう 闘えない もう 無理だというところまでは、枕で闘う事にした。熊谷の、顔面ばっかり狙ってね。「フミオも、きよじ の背後に回って殴れっ!」と、熊谷が叫ぶ。それを聞いて、村瀬 フミオが枕を置いて、動き出す。
〈知ってるかい?こういう時は、背後に壁がある所まで動く。後退を恐れずにね。そうすれば、目の前の敵とだけ 闘えば済む。背後からの攻撃は、厄介だからね〉
結局、 一晩中 喧嘩をして、最後まで立っていたのは俺だけで、熊谷と村瀬 それと、「枕戦争を、見学に来た」と言っていた 小1の大久保 スグルも、大部屋から追い出し 廊下に捨てといた。
翌る日、「もう 清二とは、闘いたくない」と熊谷が呟き、村瀬 フミオも それに同意した。俺は、戦いに勝った!
「何で 先輩2人がかりで、きよじ 1人に負けるのよ」と、三宅シスターがほざいた。知らん!
ちなみに俺と同じ 大部屋の、小3の番長 横山 ケンジも 小2の中山 カツオも、「怖くて、動けなかった」と、伝えてきた。そんなこったろうと、思ったよ まったく。
この日以降、一つ学年が上の先輩とは、この勝利をキッカケに そうそう戦わなくて済むようになった。
《2016/12/09 今現在の俺は、決して幸せではないし 孤独で、むしろ不幸と言えるだろう。それでも その分、最低限 全宇宙の支配者 クソ大和田の居ない 来ない所へと行けた。例えば、熊谷 ツヨシにしろ村瀬 フミオもそうだし 大久保 スグルも、横山 ケンジも中山カツオも、大和田の側の人間たちだ。東京サレジオ学園に居た頃は、毎日 大和田の側の人間に 会わなければならなかったから、俺は 東京サレジオ学園を卒園した後は、サレジオから なるべく遠い所に住もうとした。ただし 就職先の所長と従業員 全員が、大和田の側のクソ野朗たちだった。バイクで死んだり、餓死もして、何遍も引っ越して 今、大和田や 大和田の側の人間たちの居ない場所に居る。あとは、ずっと待ってんだ。俺の念能力が、再び 復活することを。そして、終わりを始め 戦うんだ。大和田の居ない世界、大和田の側の人間たちや、大和田によって創られた 黒人の居ない世界のために!武装戦線 3代目・頭として、自由をこの手に!をとね。》
こうして 枕戦争において、戦った事により 闘わなくてよくなった。そういえば「自衛のための暴力は、暴力ではない」とは、俺が創った 言葉だった。此の先だって 戦って行く事になるけど、降りかかってくる火の粉は、振り払わないといけなかったりする。次回の話は、しょうもないけど 俺のケツについての話です。さて、どうなることやら。以上。
新年明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします。読んでいただき、どうもありがとうございました。宜しければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!