第六十四話 盗っ人になる少年
将来 盗っ人になる少年との、出会いの話です。
東京都の西部にある、多摩地区。そこにあるのが、呪われた地獄の児童養護施設 東京サレジオ学園。そこに収容されているのが、小学校一年生から 高校三年生までの男子。女子は、いない。学年ごと年齢ごとに、サレジオ学園敷地内のいくつかの家に 別れて住んでいる。そして 今回の話の舞台は、小学校一年生から小学校三年生までが暮らす、『ねむの家』と呼ばれるところだ。そこで、新しく小学校二年生になる 俺 東 清二も、親も家族もいなく もちろん家も無く、否応なく『ねむの家』で暮らしている。そこに幸か不幸か、新しく小学校一年生になる 新入りたちが入って来て、I.Qテストを受けさせられ、将来 盗っ人になる少年が、それを受けるところだ。
I.Qテストは、俺も東京サレジオ学園に入る時に受けさせられ、サレジオ始まって以来の高得点を叩き出した。天才レベルのね。I.Qテストは、犯人と警察 無実の人や関係者が出て来て、いったい誰が罪を犯したかという内容のテストだ。I.Qテストらしく、東京大学出身者が作成した。そのI.Qテストを、将来 盗っ人になり 少年院に送られるガキが、まさに受けようとしてる。
また 再び 4人いる村公の1人、エイズウイルス保有者で、ここ東京サレジオ学園の園長 村上 コウスケが、激烈に怒っている。「こんな頭の悪い奴は、初めて見た。何なんだ、こいつはっ!」とね。新入りがI.Qテストを受けて、試験官の村公がブチギレする。これを俺にとっては 後輩にあたる、新入りが入って来て以来、2度目のブチギレだ。俺は関係ないので、村公と目を合わさないように、おとなしくいい子のフリをし、黙っている。他の子供たちも 同様に、無言で黙っている。すると意味の分からないことに、園長 村公の怒りの矛先が、俺に向けられる。
「何、黙り込んでいるんだっ!」と、村公が 何故か俺に向かって言う。
「知らねえよ。普段から お前は、『ねむの家』のガキを黙らせてるじゃねえか」と俺。
「この小橋と言うガキは、自分の名前も書けないんだぞっ!」と村公。
「だから、知らねえよ。嫌だったら、サレジオ入りを断わりゃいいじゃねえか」と俺。
「出来ないんだよっ!」と言い、口角に泡を吹き トチ狂う、当 東京サレジオ学園 園長の村公。
「知ったこっちゃねえ」と俺。
「俺は お前を、部屋で待ってるからな」と言い残し、村公は I.Qテストの行われていた小部屋に、入って行った。
「じゃあ 新入りのコバシとやら、小部屋に戻れ」と俺。
「イヤですよ。なんで あんなヤツと一緒に、テスト受けないといけないのですか」と、コバシとやら。
「知らねえよ。だいたい、何で自分の名前も 書けない奴が、ただでさえ 厄介な所に、入って来るんだよ。I.Qテストは、何問目まで解けたんだ、新入りのコバシとやら?」と俺。
「いちもん…。待ってください!ここに来たら、幸せになれると聞いたのですよ」とコバシとやら。
「知らねえ。小部屋に戻って、I.Qテストの続きを受けろ」と俺。
「イヤです。だから、イヤだと言ってるじゃないですか。じゃあ 誰か、付き添いをしてください!一緒に、テストを受けてください」と、必死の抵抗をみせる コバシとやら。
「じゃあ 喧嘩で。誰と闘いたい?」と俺。
「待ってください!センパイや 強そうなヤツばかりじゃないですか!わかりました。部屋に、戻ればいいんでしょ」と、コバシとやら。1人で、村公の待つ 小部屋に戻る。
そして、 しばらくすると「何で、お前1人なんだよっ!」と、村公の怒鳴り声がした。
村公は、4人いる。ここ東京サレジオ学園 園長の村上 コウスケ。俺と同学年で、サレジオにいる 村内 コウイチ。俺の3学年年上の人、口ばっかり達者な 村瀬 コウイチ。全宇宙の支配者 クソ大和田の側の人間で、大和田の軍師並びにナンバーツーの木村 公一。4人とも 、村公と名前を省略できて、大和田の側のクソ野朗たちだ。この俺にとって、最後の最後の人生 その分、最低最悪の人生には、村公だけじゃなく、ほぼほぼ全員の大和田の側の人間たちが、手を替え品を替え登場し、俺を苦しめ 俺は、生き地獄を味わうことになる。
小部屋から コバシとやらが、半ベソで泣きながら出て来て、「何で、オレが怒られてるのか わからない」と言う。多分、俺が一緒に I.Qテストの行われる 小部屋に行かないといけないと、予測はつくが 村公には 会いたくもないので、俺は放っておく。「だれか、一緒に来てください」と、コバシとやらが泣き言を言い始める。だけど、誰も動かない。I.Qテストは、みんな 遅かれ早かれ 過去に受けてるし、園長 村上 コウスケの居る所には、『ねむの家』の子供は、近付こうとしない。ましてや、村公の機嫌が悪いときている。そして こういう時、厄介な事に 俺の出番となる。
俺の住んでいる 大部屋を担当している、佐藤シスターに「清二、何とかして。お願い!」と頼まれる。普段から お世話になってるし、なかなか断るわけにはいかない。俺だって毎日、15人分の食事の配膳と15人分の皿洗いをしてはいるのだけど。
「じゃあ 新入りのコバシとやら、俺が一緒に I.Qテストの小部屋に行くよ」と俺。
「ひがしきー、頑張れよ!」と、新しく小学校三年生になる 番長 横山 ケンジの声がした。何を頑張ればいいのだろうか?
俺が小部屋に入ると「やっと来たか」と、園長 村公の気持ちの悪い顔を、見なくてはならなかった。I.Qテストの本を開き、コバシとやらが考え込んでる。幼稚園児でも、解ける問題なんだけど。本に出てくる登場人物は 2人だけで、被害者と加害者しか出てこない。それでも このコバシとやらは、犯人がわからない。多分、生まれつき 頭が悪すぎるのだろう。そして 村公を指差し、「犯人は、お前だ」と言う。
「犯人は、本に出てくるやつだ!」と、園長 村公が激烈に、怒り始める。
「コバシとやら、一問目から 分からないのか?」と俺。
すると、コバシとやらは「じゃあ、犯人はお前だ」と、俺を指差す。
「昔だったら、尋常小学校にいけないぐらい、頭が悪いのだろう。まぁ ここ東京サレジオ学園は、園長の村公も含め、しょうもないところなので、しょうもない奴が入って来るのだろう」と俺。
それを聞いて 村公は、俺の隣で 拳をワナワナさせ、怒っている。知ったこっちゃないけどね。
机の上に小橋 アツシと書かれた、コバシとやらの来歴とデータの紙が置いてあったので、俺はそれを読み、名字が 小さいに橋で 小橋であること。母子家庭で、兄が存在し 知能指数が最低レベルな事を知った。
「じゃあ 小さいに橋で、小橋。I.Qテストは、歴代最低得点で終了。最低でも、自分の名前ぐらい 漢字で書けないと、しょうもない施設に送られるぞ。ここ東京サレジオ学園よりは、マシかもしれないけどな。じゃあな」と言い残し、俺は1人で、小部屋を出る。
「お前らなんか、俺の判断で どうにでも、出来るからな!」と、園長 村公がほざいた。小橋 アツシは、逃げるように村公の居る小部屋から、出て来たのであった。
《何だか 2016/11/15今現在の俺は、期待することが痛いことだと、知った。毎晩 眠る時には、明日こそは 俺の念能力が復活するんじゃないかとか、俺の宝物 ピノコ・ナディア・哀姫が、会いに来てくれるんじゃないかとか、期待して眠り 朝起きて、失望と共に うんざりする。もともと 古来から、寝起きは俺の機嫌が悪いから、何事もなく この最低最悪の人生が続くことにも、嫌気が指しているところだ。そして、毎日毎日 ドス黒い感情が、増大していく。これは、罪と罰なのか?それなら俺は、どこでどうしくじったというのか?もう、そんなに多くを望まない。だから 俺に、念能力をくれ!そうすれば 、失望と絶望の彩られた この世界を、希望へと変えてみせる。哀姫!もう 会いに来て、大丈夫だよ。奇跡ってヤツを、起こすんだ》
こうして 将来、盗っ人になる少年 小橋 アツシが、東京サレジオ学園 『ねむの家』に、入って来た。そして この後、着実に 盗っ人へと成長していく。児童養護施設の家の中に 盗っ人がいると、なかなか防ぎようがない。中学生になって、お金を自分で管理し始めると、この盗っ人 小橋 アツシが、盗みを働く。そう、ただでさえ 厄介なところに、また厄介なヤツが入って来た。次回の話は、お金に纏わる話しの予定です。さて、どうなることやら。以上。
読んでいただき、どうもありがとうございました。宜しければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!