第六十二話 新入り~入園~
児童養護施設 東京サレジオ学園 ねむの家に、新入りたちが入って来て、恒例のI.Qテストを受けさせられるところです。
東京都の西部 多摩地区にある、児童養護施設 東京サレジオ学園。そのサレジオ学園には、敷地内にいくつかの家があり、もうすぐ小学校二年生になる俺やもそうだし、小学校一年生から小学校三年生まで 暮らしているのが、『ねむの家』と呼ばれるところだ。そこに新しく 小学校一年生になる新入りたちが、入ってくる。ただ ここ東京サレジオ学園が、良いところだとは思わないし 新しく入ってくる子供たちにとって、サレジオ入りが 良いことだとも、思えない。それでも、親のいない子供や 親が育てられない子供、そして鑑別所がわりに 不良な子供も入ってくる。そんな中での、新しく小学校二年生になる 俺、東 清二の物語。
新しく 東京サレジオ学園『ねむの家』に 入って来た子供たちは、『ねむの家』の見た目の綺麗さに 目を奪われ驚いている。そして 今年は、三宅シスターの「私は、エイズです」という話がなく、大部屋が二つある『ねむの家』の、とりあえずの部屋割りが決まる。有り難い事に、俺は今までのまま 佐藤シスターの担当する部屋で、同じ部屋には 新しく小学校三年生になる 番長の横山 ケンジ君や 俺と同学年の中山 カツオ等と、同じ部屋割りだ。そして新しく 東京サレジオ学園に入ると受けさせられる、恒例のI.Qテストを新入りは、園長 村上 コウスケの手によって受けさせられる。
このI.Qテストは、俺も去年 ここ東京サレジオ学園に入る時に受けさせられ、見事 最後の難問までたどり着き、歴代史上最高得点をたたき出している。ちなみに最後の問題は、警察の刑事が犯罪者をつくった という答えで、問題は東京大学出身者がつくったとのこと。俺はその問題を考える中で、体の震えが止まらなかった。警察がこんな事をしていたら、社会は駄目になるし、罪を犯した刑事は のうのうと生きているとの事だったからね。俺が 最後の難問を、警察の刑事が犯罪者だ という答えを導き出すと、サレジオ学園の園長 村上 コウスケは「私が、解いた事にしてくれ」と、俺の手柄を奪おうとする。どうでもいいので 俺が許可すると、喜び勇んで 村上 コウスケは、I.Qテストの本に書かれた連絡先に電話をする。しかし 村上 コウスケは、自分で問題を解いた訳ではないので、問題をつくった 東京大学出身者と、話が噛み合わない。どっちかと言うと 最後の問題は、倫理観の問題だったからね。倫理観が著しく欠如している、村公には、理解出来ないだろう。エイズウィルス保有者の村公こと 村上 コウスケは、神父のくせして 修道女と、肉体関係を持ち エイズウィルスの拡散にも、一役かっているからね。神父としての資格も、怪しいものだ。
結局、東京大学出身者の事務所の電話に、俺が出させられた。I.Qテストの最後の問題で、犯人は警察の刑事だという結論を俺が伝えると、事務所の人に「それを裁判で、証言してほしい」と頼まれる。聞けば 実際にあった事件で、手を下した犯人は有罪だが、警察の刑事は無罪放免とのこと。刑事が犯人を追い込んで、手を下させたのにね。東京大学出身者の人に 年齢を訊かれ、新しく小学校一年生になると伝えると、若過ぎて 証言は出来ないとのこと。最後に俺が、このI.Qテストに出てきた 俺が有罪だと判断した、警察の刑事はどうなったか尋ねると、今も刑事をしていて 似たような事件を巻き起こし、犯罪は巧妙に隠してるとのこと。こんな事では、警察なんて信用出来ない。そして、その刑事の名前は 大和田と伝えられる。
俺は電話を切り、一呼吸置いて 納得した。全宇宙の支配者 クソ大和田。俺と俺の側の人間たちを苦しめるだけじゃなく、犯罪も犯し 罪をなすりつけているんだなと知った。そして 、そんな大和田の親友 村公の一人 村上 コウスケが、俺の暮らしている この東京サレジオ学園の園長をしている。もちろん 村公は 四人とも、大和田の側のクソ野朗だ。でも 念能力者ではない俺は、何もできず この最低最悪の人生を、大和田の掌の上で、生き地獄に のたうちまわることしかできない。俺としては この最後の最後の人生は、終わった人生だと 捨て人生だと認識している。そして I.Qテストを、新しく『ねむの家』に入る 小学校一年生にこれから成る 新入りたちが、受ける。
ただ 、俺はI.Qテストは去年受けたし、関係ないので 佐藤シスターと「今年の新入りは、不作っぽい」と、話し合っていた。が、この東京サレジオ学園の園長 村上 コウスケに、呼ばれる。新入りが村公の言うことを聞かず、暴れているとのこと。正直、知ったこっちゃない。
「俺は、山中星美ホーム出身なので、星美ホームの子供のことしか分からない。来て早々暴れるなんて、こども寮出身か どっか他だろう」と俺。
案の定、こども寮出身で 、三宅シスター担当の大部屋の子供だ。俺と同じ 佐藤シスター担当の大部屋の子供なら、ある程度 どういうガキか、俺は把握している。まあ つっても、『ねむの家』に入って早々 テストで、村公と一対一の状況なんて、暴れてもいいとも 思うけどね。
すると 、暴れてたと思われるガキが「何なんだよ、コイツはっ!何で、テストなんて受けねえといけないんだよ!」と、わめき散らしている。
〈コイツとは、園長の村上 コウスケのことだろう。村公を困らせる。なかなかやるな。だけど 後々は、俺にとって厄介なガキだろうな〉と思いながら、俺は黙って 静観している。飛び火なんて、嫌だからね。
「お前は、誰の言うことなら聞くんだっ!」と、当児童養護施設の園長 村公が、怒鳴る。
「ちゃんと、おとなしくしてっ!園長先生の言うことを聞いてっ!」と三宅シスター。
〈うーん、こんな事 思っちゃいけないのかもしれないけど、俺の嫌いな 村公と三宅シスターが、困っている。胸がスカッとして なかなかいい気分だ〉と、殺伐した状況の中 俺がのほほんとしていると、わめいていたガキと 偶然か、目が合う。そして そのガキが、「この人と一緒にいるために、おれはここに来た」と俺に向かって言う。
「また お前かっ!」と、当東京サレジオ学園 園長 村上 コウスケが、今度は俺に向かって 怒鳴る。案の定、飛び火した。おとなしく、いい子にしてたのに…。
「新入り、新しく ここ東京サレジオ学園に入る子供は、みんな そいつを試験官にI.Qテストを、受けさせられてるんだよ。そんで お前がキレた そいつが、ここ『ねむの家』だけじゃなく、他にも 色んな家のある ここ東京サレジオ学園の園長 村公こと、村上 コウスケだ。あとは、自分で判断しろ」と俺。
「こんな奴が、園長なんですか?待ってください!名前を教えてください!」と、新入りのわめいていたガキ。
「人に名前を聞く時は、まず自分が名乗れ」と俺。
「こんなところで…。おおくぼです。大きいに久保で、大久保です」と名乗るガキ。
「俺は、東西南北のひがしで、東だ」と俺。
「名字は分かりました。名前は?」と大久保。
「教えん。ここで暮らすなら、そのうち 分かるだろう」と俺。
〈厄介なガキが、入って来た…。ただでさえ、厄介なところなのに〉
《2016/10/22 今現在の俺は、目標だった クソ大和田のいないところへ行けた。だが、決して幸せなんかではない。むしろ不幸と言えるだろう。金もなく、暗く狭い部屋で暮らしている、孤独な男だ。寿命までは、俺の人生 生き地獄だ。せめて 俺の宝物、ピノコ・ナディア・哀姫が、会いに来てくれれば。そうすれば この暗くて狭い部屋も、ちょっとはマシに思えてくると思うんだ。あとは、もう いつまで待てばいいのかも、いつになれば 復活するのかも分からない 念能力。この人生では、たった四日間だけしか、俺は念能力を保持していられなかった。あと3日 念能力を保持していられたら、クソ大和田を完全に消せたのに。哀姫、念能力、ずっと待ってる。そして、いつまで待たすのか…。》
こうして、厄介な所に 厄介なガキが入って来た。この時もこの先も、全てが悪い方悪い方へ 転がっていってしまう。運命には抗えないと言っても、俺の運命をクソ大和田が、全宇宙の支配者の権限で決め、監視と大和田のやりたいようにする。抗いたいけど、抗いようがない。次回の話は、新入りのI.Qテストがあり、何故だか 俺も立ち会わされます。さて、どうなることやら。以上。
読んで頂き、どうもありがとうございました。宜しければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!