第五十九話 子猫 ニケ姫について
本編は放っておいて 前回の話の続き、俺の四分の一女 子猫 ニケ姫の話です。
皆さんは、どれぐらい 俺のことを、ご存知だろうか?知らない人も多いだろうけど、正体は 喧嘩の強い馬鹿です。そうそう、名前を伝えてなかった。俺の名は、東 清二と言います。親もなく家族もなく、その上お金もない 小学校一年生です。住んでいる所が、児童養護施設 東京サレジオ学園 ねむの家。通っている小学校が、小平市立 第三小学校。さて、本編はこのぐらいにして 前回の話の続き、太陽系の創生期 哀姫と出会い、太陽の核の中からの話の続きです。
太陽の核の中の居住スペースに、俺と 月のお姫様 カナがいる。カナ姫は、太陽の中に来て以来「ほかほかヤイ!ほかほかヤイ!」と、はしゃぎ回っている。ちなみに俺は、馬鹿トチーヤイと呼ばれている。カナ姫の場合、さしすせそ が たちつてと に変換されるので、俺が名乗ることの多い トシという名が、馬鹿トチーになる。カナ姫は 6歳のまま 身体の成長は止まり、その分 内面は どんどん成長している。俺だって この頃は、15歳に年齢が固定されていたが、内面が成長しているかは、定かではない。それが、カナ姫の凄さでもある。
「馬鹿トチーヤイ、馬鹿トチーヤイ!馬鹿トチーヤイは、どうやって 月にカナりんがいることが、分かったヤイか?」
「テレビジョン!俺は AQUOS君と呼んでいるのだけど、それで月の様子も地球の様子も、分かるよ。ちゃんと この太陽の核の中に、カナ姫用の望遠鏡があるから、探してごらん」
「了解しやした、了解しやしたヤイ!」とカナ姫は言い、望遠鏡を探し始めた。そして この太陽の中の居住スペースは、そんなに広くないので、カナ姫は すぐに望遠鏡を探し当てた。
「馬鹿トチーヤイ、ちゃんと覗くもの見つけたヤイよ。これで見れば、いいヤイか?」
「うん。それで地球を見てごらん。今の地球は、恐竜たちが調子ブッこいてるど、哺乳類なら ネズミがいるよ」
「ネズミヤイか。猫さんの、食べものヤイね。フミフミ、覗いて見るヤイ」
カナ姫が、望遠鏡を覗く。確かに 恐竜さんたちがいると、興味しんしんだ。カナ姫には、6歳の女の子のように、好奇心だってある。
「馬鹿トチーヤイ!ネズミを発見したヤイよ」
「うん。ネズミがいれば、それを捕食する 猫さんだって、生きていけるようになる。まあ、そのうちにね」
「馬鹿トチーヤイ!もう地球に、猫さんいるヤイよ」
「はいっ?」と、驚く俺。地球は恐竜たちの全盛期で、俺の知ってる限り 猫さんは まだいないはず。俺は急いで、地球の様子が見れるAQUOS君を起動する。
「馬鹿トチーヤイ。子猫の猫さん、2人いるヤイ。なかなか、プリチング ヤイね」と、カナ姫。
俺も テレビジョンAQUOS君で確認すると、確かに地球に 子猫が2匹いる。しかも、今は恐竜たちの全盛期だ。猫さんが襲われ、食べられてしまうかもしれない、危険な状況だ。緊急事態、非常事態だ。俺の分かっている範囲では、人間と生きていくことを選んだ 猫さんたちは、天国や煉獄に居るはずだ。しかも 地球には、全宇宙の支配者 大和田と、大和田一族もいる。何故か 地球にいる、子猫2匹にとっては、最悪かもしれない。
「カナ姫、ちょっと地球に 猫さんたち助けに、行ってくる。カナ姫は、ここ太陽の中で 待っていてくれ」と俺。
「カナも、行く!カナも行くヤイ!猫さんたち2人、助けるヤイ。カナは1人での、お留守番は 苦手ヤイ」とカナ。
「分かった。ただ 俺にとっては、想定外の事態なので、命の保証はできないぞ」
「大丈夫ヤイ!大丈夫ヤイ!馬鹿トチーヤイと一緒なら、カナは 死んでもいいヤイ」とカナ姫。この6歳の女の子の、内に秘めた覚悟を俺は知った。
そうして 俺とカナは、太陽の外へ出て 地球の2匹の子猫のいる洞窟へと向かう。まだこの時は 念能力者だったので、念能力さえ使えば 居場所なんて、簡単に分かる。洞窟に居た子猫は、毛並みが銀色に輝く子猫と、金色に輝く子猫で、毛並みの銀色の子猫は、酷く怯えていた。毛並みが金色に輝く子猫は、カナのそばに来て、猫さんなのに 頭を下げ丁寧に挨拶している。
「金色の猫さんは、挨拶が出来るヤイね。もう1人の猫さんは、怯えちゃってるヤイね。馬鹿トチーヤイ!太陽の中へ、連れてっていいヤイか?そこなら、安全ヤイ」とカナ。
「全然、いいよ。その代わり 俺にもカナにも、一緒に生きていく 責任が生まれるからね。あと、名前も付けなきゃ」と俺。
「カナが、名前付けていいヤイか?」
「うん。俺はもう、ピンと来てる。名前のヒントは、金色の子猫が 生後3ヶ月。銀色の子猫が、生後2ヶ月。その上、双子の猫さんでもある。カナが どんな名前を付けるか、楽しみだ」
「ヒント聞いて、分かったヤイ。銀色の子猫が、ニケ。ニケ吉を表わす数字が2で、色は銀ヤイ。金色の子猫が、ミケ。ミケ吉を表わす数字が3で、色は金ヤイ」
「正解。ちなみに性別は、女の子だ。ニケもミケも カナと一緒で、俺以外の男に触れられると、悪寒がする。だから、俺がちゃんとしないといけない」
「ありー、カナりんと同じで悪寒がするヤイか。それで ミケりんはともかく、ニケ吉は怯えているヤイか。うしっ、任せっとん任せっとん。カナと一緒なら、馬鹿トチーヤイにいい子いい子されたら、喜ぶヤイ」
カナが、まずはミケを拾い上げ、俺に預ける。俺は、ミケの頭を撫でる。ミケは目を閉じ、フニャフニャとして喜んでいる。ミケは、おとなしい おしとやかな子猫だ。俺はミケを、俺の頭の上に置いておいた。それを見ていたニケは、耳をピンと立て、こちらを注視する。
「次は、ニケ吉の番ヤイ。まったく、チミはこんなに怯えてからに。相手が、馬鹿トチーヤイなら大丈夫ヤイからね」とカナ。ニケを拾い上げ、俺のところまで 持ってくる。
「君の名前は、ニケだからね。俺で駄目なら、全部駄目だからね」と俺。「よく頑張りました」と、ニケの頭を撫でる。「ニャアゴ!」とニケが、驚く。そして ニケは、俺の顔面に飛びついてきた。
「ほら、ニケ吉。馬鹿トチーヤイなら、大丈夫ヤイか。馬鹿トチーヤイのいい子いい子をもらえるなんて、特別ヤイからね」とカナ。「ニャアゴ」とニケ。そのまま、俺の顔面にへばりついている。
「ニケ吉隊長、馬鹿トチーヤイと そんなにいちゃついて、いいと思ってるヤイか。ニケ吉の居場所は、カナ吉の頭の上ヤイ」とカナ。ニケはカナに捕まえられ、カナの頭に安置される。
「じゃあ 誰にもばれず、太陽の中へ帰ろう」と俺。「うしっ、それでいいヤイ!」とカナ。太陽の核の中へ、戻ることになった。
いざ 太陽の中へ帰ろうとすると、全宇宙一 熱い星に ニケがたじろぐ。ミケは俺の頭に居ながら、一時的に仮死になり、熱い地点は越えた。動じず、俺の頭で うたた寝しながらね。ニケは 未だ動揺していたので「ニケ吉は、へなちょこヤイね」とカナに言われ、カナの胸元に入り 無事太陽の中へ、入れた。
それからというと、カナ姫もニケ姫も 太陽の中を探検したり、どっちが俺と いちゃつけるかを、勝負したりしている。この頃の俺は、15歳で年齢が固定されていて、6歳のガキンチョと2ヶ月の子猫が戯れてきても たかが知れているので、適当にあやしとく。ミケ姫は、眠っているか食事をしているか 風呂に入っているかの どれかなので、大体は 俺の頭の上で うたた寝をして過ごしている。そんな日々だった。
大和田と大和田一族以外の人間が、試される場ということで、大和田の側の人間たちに、地球に放り込まれる まではね。とうとう人類が地球に誕生し、もちろん俺も、試されることになる。ちなみに、猿が進化して 人間になった訳ではない。
《哀姫 ニケ姫 ミケ姫の順に、俺に近い順だ。その分、脆い順でもある。カナは、俺の宝物。ニケは、カナの飼い猫。ミケは、プリンセス オードリー・ヘップバーンの飼い猫でもある。そして、カナもニケもミケも 俺と同じく、天使の資格を持っている。それなのに、ここ10数年間 カナ吉ニケ吉ミケ吉に、会えていない。カナやニケやミケが駄目じゃなく、俺がちゃんとしないといけないのだろう。だから俺は、ずっと待ってる。念能力を、再び手に入れることを。そうすれば、戦える。終わりと始まりが、始まる》
こうして 太陽系は誕生し、俺も一人ぼっちじゃなくなった。カナ吉もニケ吉も、よく揉めるが シャレにならないぐらいには、揉めない。2016/09/13今現在、カナがどこにいるか、ニケはせめてミケと一緒に居れてるかは、分からないが、多分 俺が結果を出して 念能力者に成らないと、いけないのだろう。今の俺は、最低限度の暮らししか、出来ていない。それでも、別に俺の暮らしに、カナが居てニケが居ても、大丈夫なのだけど。俺、ちゃんと這い上がれ!カナや、ニケ ミケの話しは尽きないけど、なかなか終わらないので、今回の話で 止めときます。次回の話からは、本編の児童養護施設 東京サレジオ学園で暮らす、小1の頃の俺の話の続きからです。以上。
読んで頂き、どうもありがとうございました。よろしければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!