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きよじ  作者: 東 清二
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第四十五話 船出【全宇宙の支配者からの脱出】

一ヶ月半以上いた、瀬戸内海の小さな島を、やっと脱出する話です。

俺は、孤児院サレジオの子供達と瀬戸内海にある、小さな島にいる。夏目なつめ 雅子まさこさん主演の映画の、撮影のためだ。その映画の撮影も、とっくに終わっているのに、ゴタゴタ続きで、なかなかこの島を出る事が出来なかった。だが それも、雅姉まさねえの奮闘で 終わろうとしている。


「この島とも、今日でお別れか。クソ監督とクソ大和田おおわだがいなければ、いい思い出だけなのに」と、俺。「ああ、だな」と、小3の番長 サイトウ ハヤト君。

「ヤトさんは 喧嘩に負けたけど、闘った相手が強かった。島田紳助しまだしんすけさんは、ヤクザのトップ集団『銭屋一家ぜにやいっか』の、相談役になる事が決まっている。もちろん、俺の側の人間です。ヤトさんは、闘う相手を間違わないようにしてくださいね」

「ああ、分かった」


そんな中、夏目なつめ 雅子まさこさんが、この島に来ている 孤児院サレジオの子供達に、野球のグローブをプレゼントしている。精一杯の笑顔でね。俺の分のグローブは、何種類も用意してくれたみたいだけど、投手用のグローブだけ もらっておいた。「残りのグローブは、この島の子供達にプレゼントしてあげて」と、一言添えて。ここが、雅姉まさねえとのお別れだった。


もう 2、3時間すれば、昼のフェリーの時間というところで、監督が俺に話しかけてきた。下卑た笑みを浮かべてね。「いやよお、次の俺の監督する映画には、お前を主役として撮るからよお」

「断る!もう、役者は御免だ。『白い巨塔』で、だいぶ 痛い目に遭ったからな」と俺。

「役者になりたくない奴なんて、いるのかっ!?」と、監督が狼狽する。

「ああ。ここに1人。もう クソ監督とは、二度と会いたくない」

「待てっ!雅子まさこに、別れ話を切り出されたんだ!このままじゃ、駄目なんだ!」

「知らん!それは、当たり前の話だ!クソ監督と雅姉まさねえじゃ、つり合わねえだろ」

「いやよお…。これじゃ、破滅だ…」と言って、監督はその場に しゃがみ込んだ。知ったこっちゃねえ!


そう言えば、そんな奴もいたなあと、全宇宙の支配者 大和田おおわだの方を見ると、何やらだいぶ焦っている。この時代では珍しい、携帯電話を使って 交渉中みたいだ。確かに、 大和田おおわだの側の人間のクソ監督の失敗は、大和田おおわだの失態でもある。そう、いつもの失敗と失態。それに関わりたくないのに、居場所がバレると 俺も巻き込まれる。難癖付けて、俺のせいにしようとする。


「いやよお、時間を巻き戻してやってもいいからよお」と、大和田おおわだが恩着せがましく言う。

「時間を巻き戻させて下さいだろ」と、俺。

「そんな言い方しなくちゃいけないなら、このままでも いいんだぞ!」

「別に、それでもいい。俺としては」

「待てっ!このままでは、こちらの失態になる!時間は、巻き戻してやる。だから最後、お世話になった監督に お礼とお詫びをして来い」

「断る!そもそも、俺は来たくてこの島に来たわけじゃない。修道女シスターが、夏休みが欲しいと言った。俺がこの島に来れば、夏休みが取れる。結果、苦肉の策で俺はここにいる。監督も、さすが大和田おおわだの側の人間だけあって、クソ野郎だ。ビジョンがない。ギャラは払わない。脅迫する。暴力を振るう。忘却剤入りの、特製の注射まで打つ始末だ。子供に対してね。それなのに、謝れと言うのか?ああっ!怒」

「いやよお!こんな人目のある所で、突然そんなこと話されてもよお。こっちにはこっちの、全宇宙の支配者としての立場があるからよお。そんなもの、なかったことにしておけばいいからよお」

「謝る必要、ねえじゃねえか!」

「待て!時間を巻き戻す必要が、あるみたいだからよお」

「知らねえよ、クソが!」


すると大和田おおわだが、ポケットから針が2つねじ曲がっている、時計を取り出した。そして、それを動かす。どうやら、念能力みたいだ。大和田おおわだごときでは、時間を変える事など出来ないはずだが、全宇宙の支配者の権限を行使すると、そんな事も出来るみたいだ。誰と話していたのかは、分からないけど、もしかしたら大和田おおわだの携帯電話も、未来から持ち込んだのかも。俺には、知りようがないけどね。あと その上、大和田おおわだの都合で、動かした時間分 記憶も消去される。だから、その事を知らない人も、多い。残念ながら。


時空が動く。俺の周りの景色が、まるでビデオの巻き戻しをしてる様に、変わっていく。雅姉まさねえをみると、この状況に困惑している様だ。ヤトさんも、戸惑っている。他の人達は、前に居た所へと自動で、振り分けられていく。あまり知られてないが、ずっと以前から 大和田おおわだは、全宇宙の支配者としての特権で、時間を早送りしたり巻き戻したりしている。それを、今回俺は 目の当たりにした。そして、夏休みの終わる少し前の日付けになった。島を出るフェリーを待つ、昼間にね。それも、いつも通りの大和田おおわだの都合でね。


《俺の唯一の子分 菅原文太すがわらぶんたが、昔はタイムキーパーをやっていた。その頃は、時間を勝手に変える事など出来なかった。タイムキーパーとして、文太ぶんたが取り締まっていたからね。でも、文太と一緒にタイムキーパーをしていた同僚達が、どんどんいなくなっていった。いなくなる理由の一つが、家族を人質に取られる。もう一つが、殺される。大和田おおわだの軍師 クソ木村公一きむらこういちが徹底的に調べ上げ、大和田おおわだの側の人間達が実行する。タイムキーパーが文太ぶんた1人になってしまった時に、俺の子分にならないかと俺が誘った。渡りに船と、快諾してくれた。文太ぶんたがタイムキーパーを辞めてから、時間も時代も、大和田おおわだとその側の人間達のやりたい放題になった。それでも、文太ぶんたが俺の子分になってくれただけで、十分だ。その後、文太ぶんたは、裏稼業のトップになり、極道の澤野さわの親分 小久保こくぼ親分という子分たちを持った。これで 極道は、裏稼業のトップ集団になったんだ。今は 文太ぶんたはいないが、文太ぶんたの子分たちを含む、極道が存在している。福岡にね。僕は、思うんだ。いずれ一緒にと》


清二きよじ、時間が!」と、複雑な顔をした 小3のサイトウ ハヤト君。

「はい。巻き戻されましたね。クソ大和田おおわだが自滅して、また反則を使いました。昼のフェリーで帰ることに、変わりがないので とっとと 先ずは本土へたどり着きましょう。話しは、それからにしましょう」

「生きて 帰る!か?」

「はい。やっと帰れます。あと、俺の腕の怪我が治りました。他は、ボロボロだけど。向こうが反則を使う分、こっちも五体満足になれたりします」

「そうか、良かったな 清二きよじ

「はい!これで、野球が出来る」と、ホッとした俺。


映画の撮影に来て、待ちぼうけを食らっていた 孤児院サレジオの子供達も、全員フェリーに乗った。ちなみに 夏目なつめ 雅子まさこさんは、本土に着いたら 即入院とのこと。残念ながら、美人薄命を字でいく人だ。監督と大和田おおわだは、これからについて話し合うらしく、内輪揉めをしていて、フェリーには乗らなかった。


こうして、やっと島から脱出出来た。かと言って、東京にある孤児院サレジオで、いい暮らしが待ってる訳ではないのだけど。ただ この時の俺は、野球のグローブが手に入り さりげなく浮かれていた。顔も身体も、ボコボコに殴られ 熱を持ち、俺にも入院が必要なんじゃないのかというところなんだけど。次回の話は、フェリーに乗って 大好きな 雅姉まさねえとの、お別れの話です。以上。



事実や真実とは、若干違うところもありますが、大体こんな感じでした。よろしければ、続編も楽しみにしてくれると、嬉しいです。

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