第四十二話 宿命の戦い 【幸福の王子対全宇宙の支配者】
全宇宙の支配者 大和田との、戦い。それを見守る人達の話です。
《腕が肩が、重い。まるで、ただの棒だ。とても重たいね。だけど俺は、この憎っくき敵を馬乗りになり、殴り続けることに決めたんだ。沖田 総司が、いつもそうするように。そして 俺の身体が、この負荷に耐えられなくなり 悲鳴をあげる。やっぱり、天才中の天才 沖田 総司は凄いんだなと、改めて思い知らされる。俺じゃ 所詮、こんなものか。これっぽっちしか、殴り続けられないのか。これで、戦っていると言えるのか!》
夏目 雅子さんが見守る中、かれこれ2時間ちょい、俺が最も憎む男 大和田を馬乗りになって全力で、大和田の顔面に俺の拳を叩き込む。どうやったら 沖田みたいに、三日三晩徹夜で 凄いパンチの回転の速さで、全宇宙の支配者 クソ大和田を、殴り続ける事が出来るのか?ただ 俺がガキで、弱くて脆いだけなのか?
「ダーリン、もう十分!このままじゃ、ダーリンの身体が壊れちゃう」と、夏目 雅子さん。思いつめた顔をしている。
確かに、俺の身体は 自分の限界を越えてしまったのかもしれない。俺の拳なんて、皮が剥け肉がちぎれ、骨まで見えてる。指も おかしな方向を向き、多分 折れてるだろう。でも、今殴り続けなくては!憎しみを込め、恨みを込め。ただ ただ、腕を下す 拳を叩き込む。
「清二!もう 終わりにしろ!」と、小3のサイトウ ハヤト君の怒鳴り声がする。
「だって、ヤトさん!こいつのせいで、俺も俺の側の人間も、生き地獄のような状況されてるんですよ!」
「それでも、やめろ!お前、自分の手を見てみろ。手も腕も、おしゃかになるぞ!大和田が、クソ野郎なのは知ってる。だけど このまま殴り続けたら、お前の手も腕も 使いものにならなくなるぞ!プロ野球選手に、なりたいんじゃなかったのか!」
「潮時か」とつぶやき、俺は 大和田を殴るのを止め、近くの床の上に転がった。
「清二、次は 俺がそいつを殴る!」と、ハヤト君。
俺は床の上で、脱力しながら「やめといた方が、いいですよ ヤトさん。俺達が帰る 孤児院は、大和田が俺を自殺か自決させる為に、作られたんです。そいつを殴ったら、ヤトさんまで、被害を受けますよ」
「そうなのか!」
「俺には 家族はいないけど、ヤトさんには父親がいるので、大和田には関わらない方がいいですよ。ヤトさんの家族や大事なもの大切なものに、危害を加えるなんて、大和田や大和田の側の人間達の常套手段ですよ。だから 本当は、殴れるうちに戦えるうちに、やってしまわなないと」
「分かった。止めとくよ」と、怖い顔をしながらのハヤト君。
「看護婦さーん、手がボロボロになりましたー」と、俺。看護婦さんに、「ボロボロどころじゃない」と、怒られる。看護婦さんに応急処置をされ、俺は 床に大の字で寝っ転がる。このまま 死んで消えてなくなれたらと、切に願う。もう俺は、心なんて とっくに折れているのに!
そうこうしている最中、大和田の身体の再生と修復が始まる。崩壊していた大和田の顔面が、徐々に治っていく。全宇宙の支配者の権限で、大和田が傷を負った場合死んだ場合、自動で再生すると 勝手に大和田が決めた。不死身の大和田。誰に聞いても、何でこんな奴が全宇宙の支配者なんだと言う。
じゃあ、こちらの条件と、大和田と大和田の側の人間達とのを比較をしてみよう。こちらは、俺も俺の側の人間達も、念能力を禁止されている。大和田と大和田の側の人間達は、汚い手口で みんな念能力を手に入れている。その上、俺が 這い上がりそうになると 難癖をつけられ、俺の才能や金を奪い、大和田自身や 大和田の側の人間達に渡す。もう ずっと、搾取されてきて こんなんじゃやってられない!けれど、全宇宙の支配者の権限で決められると、なかなか抵抗すら出来ない。そして、今に至る。
「雅姉、もう撮影なんかとっくに終わっているので、この島から出て行こう」
「はい。ダーリン、手が…」
「こんなもの、唾つけときゃ治るよ。雅姉だって、夏なのに長袖じゃないか」
「白血病だと、あちこち傷むのよ。だから、夏なのに長袖なの。それより ダーリン、このままだとダーリンまで、白血病にされちゃうの」
「問題ない。別に長生きしたい訳でもないし、死んだら 本当の自分にも念能力者にもなれるので、寿命が短くなるのは むしろ望むとこだよ」
「さすが、ダーリン!」
「あとは そこで、自己修復している ゴキブリ以下のクソ野郎ゴキブリ以上にしぶといクソ大和田と、無駄かもしれないけど、話し合いだね」
「うん」
「清二、夏休みなんて とっくに終わったよな?」と、ハヤト君。
「はい。その点も、そこのクソ野郎中のクソ野郎 大和田と、話し合いです」
こうして この時もそうだが、今も 俺対全宇宙の支配者 大和田との消すか消されるかの戦いが、繰り広げられている。俺の場合は、死んでも 設定はそのままで、消えてなくならない。大和田の場合は、殺されることが大半だが輪廻転生で、再び生き返り 不幸を振りまく。大和田の念能力は、幸福のひとの幸せを奪って、念能力を発揮するように 大和田自ら設定した。その結果、今 この時代、不幸な人は容易く見つかるが、幸せな人を見つける事が、困難な時代になった。ただし、こちらの勝利は目前だ!もう 俺は、そろそろ寿命だからね。永くても、あと16年待てばいい。あとは、気力と体力が続くかだけだ。以上。
何時になったら、この消すか消されるかの戦いが、終わるのだろう。宜しければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。それでは!