第四十一話 宿敵現る
せっかく夏目雅子さんが来たのに、全宇宙の支配者 大和田まで来たところです。
瀬戸内海の小さな島で、俺は 監督とチンピラ達から成るゴミ捨て山に、蹴りを入れている。いや むしろ、蹴りを入れまくっている。隣では、俺の二つ上の 小3のサイトウ ハヤト君が、これもまた 蹴りを入れている。何でこうなったかと言うと、そもそも監督が映画のギャラを支払わないと宣言した。こちらとしては、戦う。見聞きした事を外で喋らないという契約書にサインをしろと、監督に言われる。そして、戦う。監督の発案で、両手両足を拘束され、忘却剤入りの注射を打たれる。そんでもって、今 その復讐をしているところだ。そりゃあ 戦ったり、復讐したくなるよね?
「ヤトさん、俺のロイヤルストレートキックを、見たくないですか?」
「何だ、それは?」
「ゴミ捨て山の頂上に、ロイヤルストレートキック!」と、言いながら ただ踏みつけただけの俺。
「ハハッ 笑。ただ 踏みつけただけじゃねえか」
「そうとも言う。あーあ、早く 雅姉来ないかなー。ゴミ捨て山の、監督とチンピラ達いたぶっても、何の得にもならないしなー」
「お前は、復讐はちゃんとするんじゃないのか」
「雑魚過ぎて、話にならん。弱いものイジメは、弱い奴のする事だ。まあ 今回は復讐だから、ある程度はしますけど」と、言いながら ゴミ捨て山に、ローリングソバットを決める俺。
「そういうものか」と、ハヤト君。重めな蹴りを、監督に食らわせている。
《小学生にして、こんな体験をした子供が 大人に成ったら、どんな男になるのだろう。既に、暴力の連鎖が始まっている。大人に対しては、憎しみの連鎖だ。どんな男になるにせよ、子供に暴力を振るわない大人に、ならなければ!もちろん、自分がぶん殴られたシチュエーションで、ぶん殴らないことは とても苦痛ではあるけど。ただ、いつか誰かが 断ち切らないと》
夏目 雅子さんが、ここに来た。この映画を作っていたスタッフと、看護婦さんと一緒に。雅姉は、相変わらず 美人だ。そして 俺が一番嫌いな男、大和田まで やって来た。全員 このゴミ捨て山の状況に、驚きを隠せない。何とか 蹴られないで済むようにしていた監督が、ゴミ捨て山の頂上から 顔を出す。そして「大和田っ、助けてくれ!こいつら こっちは、何もしてないのに、暴力を振るってくるんだ」と、監督が大和田に 懇願する。
説明しよう1夏目 雅子さんとは、言わずと知れた 大女優で、今は 白血病を患っている。俺は 夏目 雅子さんの事を、雅姉と呼んでいるのだけど、雅姉は ジャイアント馬場さんと交際する事が、お亡くなりになり 天国へ行った後なら、決定している。性格は 姉御肌で、その上 明るいお嬢様といった感じだ。もう寿命だとしても、ジャイアント馬場さんと一緒になれるなら、女優として まだ美しいうちに死ねるなら、俺としては 致し方ない。この時点で ジャイアント馬場さんが生きてたら、引き合わせたのに!
説明しよう2こんな奴の説明は したくないけど、大和田とは ほとんどの人は知らないだろうけど、全宇宙の支配者だ。性格も存在も、クソみたいで よく辛抱出来なかった我慢出来なかった人に殺される。ただ 厄介な事に、大和田は不死身だ。なので せっかく大和田を殺すという手柄を立てた人を、その対価として 殺すために消すために、大和田が現れる。そして どんな手を使ってでも、消そうとする。ほとんど全部が、汚い手口だ。しかもゴキブリのようにしぶとく、ゴキブリよりも 嫌われている。あとは、クソ野郎とクソ女が数合わせのために、大和田の側の人間として集められ、あちこちで悪さをし もはや収拾がつかない!世界中が不幸に、めちゃくちゃになった!『なので 俺の手で、いつか大和田は、完全に永遠にぶっ消してやる!不幸の王様 大和田を、いつか再び 幸福の王子様になる俺が、ケリをつける。不死身だか何だか知らねえが、死神の鎌【改】が手に入るまでは、この苦しみを耐え忍んで、いつか大和田とその側の人間達が、完全に消えて無くなったと、俺の側の人間達と 祝杯をあげる!それが、今の俺の夢だ』そんなとこです。
「ダーリン…」と、悲しげな 夏目 雅子さん。涙で、語尾が聞こえない。
「いやよお、大和田の側の人間の、日本一の映画監督に何やってるんだっ!」と、大和田が、俺とハヤト君に言う。
「雅姉、もう終わりにしよう」と、俺。
「はいっ!」
「いや、お前ら 人の話しをよお」と言う、大和田の言葉を遮る。俺の拳でね。膝から崩れ落ちる、大和田。
「ヤトさん、知ってましたか?こんなのが、全宇宙の支配者なんですよ。俺が 、このクソ野郎中のクソ野郎 大和田をぶっ飛ばすので、ヤトさんは、監督とチンピラ達が攻撃して来ないように、見てて下さい」
「ああ、分かった。お互い ボロボロだけど、頑張れよ 清二」
「はい」
こうして 相変わらず、俺対 大和田の永きに渡る戦いが、続いている。消すか消されるかの、戦いもね。こんな時に 沖田 総司が居てくれたら、三日三晩 徹夜で大和田を、殴り続けるんだけどね。今回 俺は、それに挑戦しようと思っている。ちなみに沖田は、役目を終え使命を果たし、安心安全なところにいる。次回の話は、不幸の王様 大和田対幸福の王子様にいずれなる 俺の戦いと、夏目 雅子さんとの終わりの話です。以上。
何か、暴力の話ばかりです。しょうがないか。よろしければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。