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きよじ  作者: 東 清二
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第三十一話 バチカン

映画の撮影も終わり、過去を思い出しているところです。

夏目なつめ 雅子まさこさんから、教室の中で 野球のノックを受けた。俺は 教室の端に置いてあった、机や椅子に 頭から突っ込み、俺は 左後頭部がへこんだ。それは 前にもあったことで、不意に俺は その頃のことを 思い出していた。

《左後頭部陥没した 俺は、リハビリを 医師が驚くくらい、順調にこなし「頭が水の中へ入る時は 気をつけるように」と、医師から 申し付けられ、退院が決まった。病院へ 連れて行ってもらった お礼に、東京大学病院の 医師と、外務省の人と、バチカン市国へ行けることになった。

道中の飛行機の中では、「神は 死んだ」と、俺と 付き添いの医師、「神は 見えないだけでいます」と 外務省の人。神を信じている人間には、何を言っても 無駄なのかもしれない。こんな幸せな人間を 探すのが、難しい 悲惨な世界を、神様とやらは高みの見物ってことかい?こんな話を、飛行機の中でして、平行線のまま空港に着いた。空港には バチカン市国の関係者が、車を用意してくれていて、俺を含め 3人とも、バラバラに 車に乗せられた。バチカン市国へ着くと、俺1人だけになった。まあ 警備の関係上、1人にさせられることは、よくあることだ。こんな事で、驚いたり 騒いだりはしない。幸い、日本語の話せる 通訳の方がいたので、「病院へ 連れて行ってもらった、お礼だけ言いたい」と、伝える。とりあえず 今は、バチカン市国は 大きな祭日の日だということで、見せられる範囲で バチカン市国を案内してもらうことになった。

「寄付金 がっぽりもらって、こんな綺麗なところに いるんですね」と、通訳に 話し、苦笑いをさせていると、ある神父と すれ違う。その神父は 驚いた顔で、何語だか 俺には分からない、奇声をあげている。

俺は 通訳の人に、「日本人が いるのがダメなのか、寄付金がっぽりの話しが ダメなのか」聞くが、通訳の人も その神父が 質問を まくし立てているので、なかなかコミュニケーションが うまくできない。その神父は 叩頭したり、とにかく頭を下げるので、どうやら 怒られてる訳では なさそうだ。

しょうがないので「とりあえず 落ち着くようにと、伝えてくれ」と、通訳の人に 頼む。いまだ地べたに 這いつくばって、何語かを 話している神父に、通訳の人が 話しかける。すると その神父は 少し体を起こし、俺の姿を見た直後、十字架を両手で 固く握り締め、また 叩頭を始める。通訳の人に「俺は キリスト教を、否定してるのだけど、それでも、それを信じて 突き詰めて 神父をやっていると、俺の価値が 分かるのかもしれない。とりあえず、素通りしてみよう」と、俺が 提案してみる。試しに 俺と通訳の人とで 先へ進むと、その神父も 頭を下げながら、ついてくる。そういうものか。通訳の人とで 教会や中庭など 見て回っていると、そこで また別の神父に会い、俺を見ると 歓声を上げ、叩頭をしたりしながら、ぞろぞろとついてくる。俺は キリスト教は、出来たばかりの頃しか 知らないのて、そこから幾千年経ったら どうなったかは分からない。その間に 俺の知らない 儀式だったり 対応の仕方だったりが できたのだろう。

「もう お礼は 伝えたので、どうせだったら 今バチカン市国にいる 司祭のトップに会わせてくれ。俺が 分かっている事と 知っている情報を 伝えよう」と、俺。

すると、「ここから 先へは、入れない」と、通訳の人。「もう あとは、帰国するしかないか。しょうがない」と、俺。その言葉を 通訳の人が、ぞろぞろと ついてきてる神父達に 伝えると、驚いた顔で バチカン市国のトップのいる広場へ、案内してくれた。そこには 多分きっと キリスト教の信者と思われる 聴衆と、正装をした 神父や司祭達がいた。何かの行事で、儀式かミサを しているみたいだ。広場まで 案内をしてくれた 神父が、長いテーブルの 手前側の端っこにいる 司祭に、何やら 耳打ちをする。耳打ちされた司祭が、俺の方を 訝しげな目で見る。そして その司祭は、椅子から 転げおちるように、俺に近づき 叩頭して 崇め始める。それが 司祭の間に 伝染していき、会場にいた 全ての司祭が、叩頭を始める。終いには、洗礼のパンを 食べさせられたり、赤ワインを 飲まされる。まだ、幼児だったんだけどね。会場の広場が、半ばパニックになり、神父達の 質問攻めに、通訳の人が さらされる。俺は「トイレへ行きたい」と、伝えるが どこにあるか 分からない。しょうがないから、隅っこの方で 用を足していると、司祭達は それを服に塗りたくる。確かに、イエス ・キリストに 過去の自分が、洗礼を与えたが、キリスト教を 突き詰めて 勉強し、実践してきた 司祭達は、きっと 念能力者で、一目見ただけで 俺が何者か、分かるみたいだ。

そこへ やっと、東京大学病院の人と 外務省の人が 到着したので、最後に この広場に 集まった、たくさんの キリスト教の信者の前で、演説をして 日本へ帰国することになった。ここに いては、命が危ないとのこと。

「神は 死んだ。神になるための人生で、絶対にやっては いけないこと、ゴッドファーザーに 話しかけること。それをした。たかだか、槍で刺されたぐらいでね。だから 一度 復活した後、消された。俺がしたことは、神に 洗礼を与えた。聖書を作る、手伝いをした。ただ コルレオーネ・ファミリーは、キリスト教を 否定しているし、俺も また同じだ。もう一度 言おう。神は、死んだ。ただ、天国は 確かに ある。地獄も、ある。せっかく、こうして 会えたんだ。しっかり ちゃんと、生きるように。以上」と、俺は 演説した。マイクの前で、通訳の人が 必死に翻訳しているなかで、帰国することになった。通訳の人が 最後に「ローマ法王に、なって欲しいと 言われているのですが」と、言っていた。そういえば、こんな時も あったな》

左後頭部の頭蓋骨が 陥没しているなかで、昔のことを 思い出していた。あとは 俺の頭が、へこんでしまったことを、雅姉まさねえに 気づかれないように しなくては!頭を グラグラ揺らして、上手く叩くと 酔っ払ったみたいに、足まで ふらふらになった。《なんだ、戻るじゃん》

こうして、昔のことを 思い出したり、頭も 何とか戻った。もう映画の撮影にも 終わり、帰るだけのはずが、そうは ならなかった。以上。

よろしければ、続編も 楽しみにしてくれると、嬉しいです。

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