第二十三話 紳助
監督ともめたところの、話です。
夏目 雅子さんとの長風呂が終わり、もう時間はとっくに深夜なので、眠る準備をする。今回の映画の、撮影に来てる、孤児院の子供たちは、とっくに俺以外、全員眠っている。それもそうか、もう既に深夜だものな。俺も、とっとと眠らなければ。子供には、睡眠は大事だものな。うん?もしかすると、雅姉と同じ部屋で、眠れるかも。すると、俺の部屋に入ってきたのは、雅姉の母親だった。ガーン。なので俺は、2つ並べてあった布団を、思いっきり離して敷いた。
「夏目 雅子の、母親です。雅子が初対面の人に、あんなに心を開くなんて」
「もう、眠いので眠ります。部屋の真ん中から、こっちには来ないで下さい」と、俺。何で、知らない人と同じ部屋で、眠らなければならないのか。ただ、本当に眠かったので、会話を打ち切り、すぐに眠った。
翌日の朝に、監督がニヤニヤしながら近付いてきた。雅子姉さんも、何か言いたげだ。
「何だ、クソ監督。また、ぶっ飛ばされたいのか?」と、俺。
「いやっ、そういう事ではない。昨日の夜は、どうだった?」と、監督。
「卑しいばばあが、隣りにいたよ。布団を出来るだけ離して、すぐに眠ったよ」と、俺。
「ダーリン。その人、私のお母さん。私は、ダーリンと一緒に、眠りたいと言ったのに」と、夏目 雅子さん。悲しそうな、寂しそうな顔をしている。
「自分の母親ぐらい、しっかり管理しなさい。俺だって、卑しいばばあと、一緒にいるのは嫌だ。もちろん、クソ監督といるのも」と、俺。
「うん。昨日、一緒に居た子供は、しつこかった。あんなのと、同じ施設にダーリンがいるなんて」と、夏目 雅子さん。
「まあ、しょうもないのが、2人もいればこんな事になるか。雅姉の母親とクソ監督のことね。しかも俺が住んでいる、孤児院もしょうもない」と、俺。
「そんな事を言うようだと、もう映画に出演させてやらないぞ」と、監督。
「ああ、望むところだ。とっとと帰れればいいんだけど。撮影の邪魔にならないところで、暇人してるよ」と、俺。
「別に、お前が謝れば、出演させてやってもいいんだぞ」と、監督。
「断る!」と、俺。
「ダーリン、こんな事になって、ごめんなさい」と、夏目 雅子さん。
「まあ、いいさ。島をぶらぶらしてるよ。と言っても、俺方向音痴なんだけどね」と、俺。
「お前が出たシーンは、全部カットするからな」と、監督。
「ああ。クソ監督が、なるべく早く死ぬように、祈ることにするよ」と、俺。
こうして、俺だけ撮影がなくなり、瀬戸内海のちいさな島を、迷子にならないように気をつけながら、ぶらぶら散策して過ごした。その分外に出かけている分、お昼ごはんは抜きになったが。雅子姉さんとも、一緒にいる時間も、ほぼなくなった。このまま、この最低最悪の人生から、逃げ出すことが出来たらいいのにと、強く願った。撮影が続いていく中、ある人物が顔を見せた。
その人物は、「芸人としても頂点を極め、関西で絶大な力を持つ」と、クソ監督が絶賛する男だそうだ。監督が頑張って「夏目 雅子の裸が見れる」と、呼びよせたらしい。ろくでもない、誘いかただ。その人物が、口を開いた。
「しまだ 紳助と言います。夏目 雅子さんに、会いに来ました」
さて、どうなることやら。以上。
よろしければ、続編も楽しみにしてくれると、嬉しいです。