第二十話 渋川 剛気
映画の、お風呂のシーンでの話です。
もう、俺も雅姉も、何時間もお風呂に一緒にいて、ある程度情報交換は出来た。後は意思表示と、情報の擦り合わせだけだ。撮影していた、スタッフにも、この機会に、何か聞きたいことはないか、考えておいてもらうことにした。
「じゃあ、雅姉、もういい時間だから、そろそろ風呂を終わりにしよう。もう、のぼせてきた」と、俺。
「私にのぼせてきたの、ダーリン?」と、夏目 雅子さん。
「こらこら、お嬢さんご冗談を。馬場ちゃんの女に、惚れるわけないでしょ。ちゃんと、馬場ちゃんは雅姉を、待っててくれているはずですよ」
「うん。ダーリン、ダーリンには、待っててくれている人はいる?」
「いるよ。ピノコ・ナディア・哀姫。俺の、宝物だよ。馬場ちゃんが、どうしても守りたい女の子だよ」
「でも、その子が大きくなったら」
「哀姫は、永遠の6歳児だよ。適正年齢が、6歳だからね。それに、俺の側の女性陣は、12歳を超えたら、自分の身は自分で守るだよ。雅姉もね」
「うん。今のところ、出来てないけど」
「それと雅姉は、哀姫とは、大の仲良しのはずだよ。よく一緒にお風呂に入って、遊んでたよ」
「あっ、思い出した!哀ちゃん、ずっと子供のままで、私仲良かった!」
「うん。基本、俺の側の女性陣は、【哀姫】が大好きだよ。無邪気で元気一杯で、可愛い幼稚園の年長さんだからね。そりゃ馬場ちゃんが、どうしても守りたくなる訳だよ。その次に、雅姉を、守ってくれると思う」
「うん、私は、哀ちゃんの次でいい。自分の身は、自分で守る。了解しました」
「あと、【渋川 剛気】に、合気道を教わること。合気道は、俺の中で、史上最強にして最高の武道だからね。【渋川 剛気】と【ジァイアント馬場】は、どうしても、【哀姫】を守りたくて、なのでビジネス パートナーでもあるからね」
「合気道、どうしたら習えるの?」
「死んでからで、大丈夫。俺と【哀姫】は、【渋川 剛気】さんのことを剛ちゃんと呼んでいるのだけれど、剛ちゃんは、天国の異次元にいるので、直接教わりなよ。きっと馬場ちゃんも、そこにいるからさ。ちなみに、剛ちゃんは、俺の中では『賢者』だよ。賢さでは、敵わない。まあ、と言っても正体は、たわけた爺いだけどね。剛ちゃんは、信用できるし信頼できる。雅姉なら、きっと合気道を習得出来るし、ちゃんと自分の身も、守れるようになれるよ」
「うんっ。合気道を、しっかり身に付ける。馬場さんに、逢いに行く」
「雅姉は、強くなれるよ。すでに、優しさはあるしね。あとは、信じてもらうしかないかな」
「うん、私のことは分かった。ちゃんとする。ダーリンの方は、大丈夫なの?」
「正直、もう無理だー。念能力が禁止され、才能も奪われ、本当の自分でもなく、クソ大和田の側の人間達が、俺の行くとこ行くとこに配置されている。そんな最低最悪の人生を送っています」
「大丈夫じゃないじゃない。ダーリン、家来る?そんなに、いい家じゃないけど」
「魅力的な誘いだけど、断る。敵の側の人間達から、逃げたと思われる訳にはいかないし、それに何より、馬場ちゃんの女に、迷惑はかけたくない」
「うん、ダーリンらしいね」
「でも、ただこんな事はできる。これぐらいしか、出来ないけれど」そう言って俺は、雅子姉さんの左手を、ぎゅっと優しく握る。以上。
よろしければ、続編も楽しみにしてくれると嬉しいです。