第十九話 松田 優作
3度目のお風呂のシーンの撮影です。
監督の横やりが入ったが、俺と雅姉との、一問一答は続いていた。
「監督をぶっ飛ばしたの?」と【夏目 雅子】さん。
「うん。いきなり顔面ぶん殴ってきたから、こちらもみぞおち思いっきりぶん殴ってやった。うんうん、唸ってた。パワーがなくても、ケンカに勝つ方法はある。ただ、今回の映画の撮影は、監督と揉めないことが、唯一の目標だったんだけどね」と俺。
「はははっ、そうだったんだ」
「よく雅姉は、こんなしょうもない監督と、映画撮ることにしたね」
「うん。いろいろあるのよ」
「いろいろかー。まあ、深くは聞かないけど」
「時間が3年戻されたよね。知ってる人と、知らない人がいるけど」
「知ってるよ。俺の3年間が、無駄になった。雅姉は、何で時間が3年戻されたか知ってる?」
「ダーリン、理由知ってるの?」
「うん。集中して、俺の顔を凝視して。見つめまくって」
「あっ!ダーリン、〔白い巨塔〕の子!」
「正解。もし、時間が3年戻されなかったら、俺はあのまま、役者を続けるつもりだったんだ。ちゃんと週一で一時間、子役としてフジテレビの連続ドラマ〔白い巨塔〕に、出演し続けたからね」
「私、初回以外、全部観た。アレ、台本どうなってたの?3年続くドラマなんて、聞いたことない!」
「10話くらいで、台本無くなった。もう何か、あとはアドリブで対応した。監督がクソで、田宮 二郎とも、演技中以外では口聞かなかった。役者として、頑張った3年間だったけど、時間が戻され、なかったことにされちまった」
「誰が3年戻すことに、決めたの?」
「クソ大和田だよ。クソ全宇宙の支配者のね」
「私、そいつ大嫌いっ。私も、過去に非道い目に遭わされたことがある」
「うーん、もう〔白い巨塔〕は、【高倉 健】さんが【田中 裕子】さんに『子役は大変だから』と言われ、会いに来て、俺の待遇が良くなったことと、【高倉 健】さんが得点と失点を、あげたことぐらいかな」
「【高倉 健】さんに、ダーリン会ったことあるの?」
「うん、大昔からの知り合いだよ。〔白い巨塔〕の時には、待遇を良くしてくれた。ただ、俺から【高倉 健】さんに会いに行かないといけなくされたので、あんまり、会った意味はなかったな。ちょっとのミスでも駄目なのに、大きなミスをしたからね。映画も、俺が主演で監督で、【高倉 健】さんが助演の作品も、撮ったよ。お蔵入りだろうけど」
「もったいない!私も、共演したことあるけど、【健】さん、優しかった」
「うーん、ただ山のように動かないから、使い物にならなくなっているけど、【高倉 健】さんは。【田中 裕子】さんも、会いに来て、【松田 優作】の話で盛り上がった。【田中 裕子】さんは、駄じゃれの好きないい人だった」
「もう私にとっては、雲の上の話。そういえば、撮影に来ている子供達の中に、ダーリンが【松田 優作】さんの、生まれ変わりって言ってる子供がいた」
「うーん、生まれ変わりというか、【松田 優作】は二重人格になった。その片割れが俺の過去にあたる。【念能力】の話になるから、確実に放映できないけど、いいですか?」
「うん。もうすでに、映画としては放映できないから、大丈夫。監督とスタッフが、聞いてるけど、話せる範囲で話して」
「ほいほい。えー、まず【ラスト ロシアン エンペラー】の話から。【唐沢】さんと【山口】さんの、血の繋がってない息子として、当時の俺が生まれた。ロシアの皇太子としてね。そんで、政変が起きた。【唐沢】さんはロシアに残り、【山口】さんと俺とで、朝鮮に渡る。そこで、【山口】さんがロシアに呼び戻され、俺だけが日本に来た。ここまでは、いい?」
「うん。大丈夫」
「日本に渡った当時の俺は、総理大臣に何とか会おうとしていた。北方領土を2億円で、日本の領土と認めることが、【唐沢】さんと話し合って決めていたからね。そんで俺は、子役を募集していた撮影会社に、日本語とロシア語の話せる、金髪のガキンチョとして、何とか入れてもらえた。あとは、結果を出して、総理大臣に会えるところまで、行こうとしていた」
「でも、ダーリン。確か、北方領土ってまだ問題になってる」
「うん。撮影所の監督に、念能力によって中身を、入れ替えられた。とりあえずって話しで。監督って、クソ野郎が多いのか?そんで、金髪のガキンチョになった方が、自殺しやがった。結果、【松田 優作】の体で統合され、死ぬまで二重人格になった。撮影所の監督に、お前のせいで日本の国益を損ねたんだぞ、と言ったら泣いて土下座してきた。何で、取引の出来ない念能力を、簡単に使うのか?【松田 優作】として、死ぬまで生きるのは、大変だった。役者として生きるしか、なかったからね」
「本当に大変、お疲れ様でした!!」と【夏目 雅子】さん。以上。
今回の話は、これで終わりにしときます。話が、飛び飛びになって、すいません。書きたいことが、多すぎまして。それでは!
よろしければ、続編も楽しみにしてくれると、嬉しいです。