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きよじ  作者: 東 清二
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第十話 続く撮影

フジテレビのテレビドラマ「白い巨塔」に出演して、撮影が進んでいるところです。

第十話 続く撮影

                     リュシフェル 

 広末涼子がいなくなったあとも、撮影は続く。だがこのむなしさは何だろう。毎日コンビ二弁当で、撮影が無い日でも目には包帯が巻かれている。役作りだそうだ。手探りで食事をとる。これじゃまるで動物だ。

 夏休みも終わり小学校も始まっているのにテレビドラマ「白い巨塔」は反響が大きく長きにわたって放送が続いていた。時にはこんな会話を耳にした。

「監督、このまま上手くいけば借金返せそうですよ」

「こんなドラマが数字取るとはな。あのガキが出るようになってからだ。上手く使おうぜ」主演の田宮二郎と監督の会話だ。文字どうり俺は飼い殺しにされ上手く使われていた。こんなドラマに、監督がそう思っているドラマに。出演料も無く自由もなく。その中で唯一、楽しみにしていたのが二日に一回のスタイリストさんによるシャンプーだった。美人というわけではないが性格のいい素敵な女性だ。

「きよじ君、何でいつも包帯目に巻いてるの?」

「それは君の美しさで目がつぶれないためだよ」役作りのために強制させられてるなんて言えるかい?それにいつの日も、冗談を忘れずに。

「ふふん。きよじ君、何でどんどん元気がなくなっているの?」

「それは素敵な女性がそばにいないからだよ」

「もう。きよじ君はいつまでいてくれるの?」

「それは、正直できれば今すぐにでも帰りたい。ウチ、孤児院だけど」

「きよじ君、家族は?」

「それは誰かと結婚すればできるんじゃないかと。あーあ」涙を目にいっぱいためて後ろからやさしく抱きしめてくれるスタイリストさん。おかげで俺はびしょぬれだ。そして邪魔者が。

「おい、お前らいちゃついてんじゃねぇ。台本できたぞ」それだけ言い残し立ち去るクソ監督さん。

「ねえ、きよじ君。ここはきよじ君にとっていい場所ではないの?」

「はい、残念ながら。シャンプーありがとうございました。びしょぬれですが」

「うん、私もびしょぬれ。ふふ」やさしいスタイリストさんでした。


 台本を読む。といってもいったん頭に入れるだけでことこまかく覚えるわけではない。いつも、流れしか頭に入れてない。テレビドラマ「白い巨塔」は最初は派閥争いがどうのとか教授選がどうのという話だったらしいが俺が出演して以来、俺と田宮二郎の絡みばかりになっていった。ただ、俺はすぐアドリブを言うので周りのスッタフからは好評だが、田宮二郎や監督からは苦情を言われていた。


「先生、きよじ君の目はいつ見えるようになるのですか?」と看護婦役の女性。そうそう、俺は実名で出演していた。

「もうすぐだ。時期見えるようになる」と田宮二郎。毎回、こんな会話だ。

「先生、見えるようになりました。先生に渡された薬が効きました」

これがアドリブ。目が見えるようになったとは書いていない。田宮二郎が混乱すると監督が撮影を止める。

「なあ、何で台本どうりにやらないんだ。これだけアドリブばかりだと収録の都合上、放送しないわけにはいかないだろう」と監督。ちなみにアドリブは収録の後半に限る。使わざるえないから。ほかにも田宮二郎に撮影中に家族のことを聞かれ、家族はいないと物心ついたころには東宮御所にいたと、疑うなら東清二ひがしきよじという名前で問い合わせてみろと言い、宮内庁も表向きにはそれは認められないとただ、早く戻ってきてほしいと答えられたこともあった。そんなこんなが評判を呼び大きな反響がとなり、撮影は予定外の長期にわたって続くことになってしまった。


 ちなみに田宮二郎と監督は視聴率がすさまじいため、当時の金額で一億のボーナスをもらっていた。俺はコンビ二弁当だけだったのに。

 ある日、フジテレビの社長に呼ばれフジテレビとしては今後、どうやってかかわっていけばいいのかと聞かれた。「白い巨塔」は大きな反響とともに俺のことを心配する苦情も殺到していたのだ。学校に行かなくていいのかとか、本当に東宮御所にいたのかとか、それが本当なら皇位継承権はどうなるのかとか。さすがに社長も苦りきっていた。宮内庁が、本人にその意思があるのなら皇位継承権があると非公式に認めるとフジテレビに通告してきたのだった。まあ、本人にその意思がなかったのだけど。そして、その話はいつのまにかうやむやになってしまった。フジテレビ側にはフジテレビ側の面子があったらしい。以上。

読んでくれて、どうもありがとうございました。今後とも、よろしくお願いします。

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