オタク男女
「メガネで萌えないってどういうことなのよ」
「萌えないわけじゃない。ただメガネというパーツはあくまでギャップへの糧であって、その糧を取り払った時にこそ真の萌えが現れてくるんだ。だからメガネには萌えない」
「でもメガネをかけることによってドSになったり、特別な能力が備わるキャラだっているわけじゃん」
「だからそれはメガネそのものであって、キャラに萌えているわけじゃないだろ」
放課後の教室で、あーでもないこーでもないと語り合っている男女がいた。
傍から見れば青春そのものなのだが、話している内容が完全に残念だ。これも一つの青春だと言えるが、残念な青春といったところだろう。
「じゃあさ、メガネがそのへんに落ちてたとしたらどう思う?」
「『なんでこんなところに?』って思う」
「違うでしょー。そこは『誰のだろう?』でしょ?」
「まぁそれも一理あるかな」
「でしょ? そこで妄想が膨らむわけよ。このメガネをかけているのは誰なんだろう。で、そのメガネにもよるわけ。例えば黒縁だとしたら短髪でちょっと爽やかなスポーツ系かなーとか、縁なしだったら頭よさそうなクールな人なのかなーとか」
両手を頬に当てながら嬉しそうに話す女子に向かって男子が小さくため息をつく。
そのため息にキッと鋭い視線を向けるが、男子は全然動じてない。
「じゃあさ。お前はメガネかけたままキスとかするわけ?」
「キス? するんじゃない?」
「もしもメガネかけたまんま押し倒されたりしたら、メガネかけたままするわけ?」
「その時は取るでしょ。メガネは本体っていうくらいだし、割れたりなんかしたら危ないもん」
「ほら見ろ。結局はメガネは飾りでしかないんだよ。どんな同人誌とかでもメガネは外すだろ。そーゆーことだって」
「でもでも、メガネにぶっかけてるやつとかだってあるじゃん」
「おまっ! そんなのどこで見たんだよ! まさか、自分で買ったのか!?」
「違うって。前に遊びに行った時にベッドの下にあったの見つけた」
男子が慌てて聞くが、女子は何食わぬ顔で返した。
男子はホッと一息。
「なんだ。俺のか」
「結局はメガネキャラのものとか持ってるってことは、メガネ好きなんじゃん」
「だからさっきも言ったじゃん。そのかけてる時とかけてないときの差がいいんだよ。外してから『見えなーい』とか言われたら、俺はころっと落ちちゃうね」
「じゃあやってみてもいい?」
女子がどこからともなく取り出したメガネを自分に装備すると、男子の前にしゃがみこんだ。
そして床に向かってメガネを落とした。
「あれれぇ?? メガネがなぁいよぉ。これじゃあ全然見えないよぉ…」
迫真の演技で床をペタペタしながらメガネを探す女子。何度もメガネに触れているのだが、そこは気がついてないということにしているらしい。ドジっ娘アピールも含まれているようです。
そんな女子を見下ろしていた男子が一言。
「全然萌えない」
「えー! ちょっと厳しくない?」
「そんなことはない。どれ、貸してみろ」
演技交代。
男子は受け取ったメガネをまず自分に装備。
「このメガネを取り上げてくれ」
「ん? ほーれ」
女子がひょいとメガネを取り上げると、男子は目を『×』にして女子の方へと両手を伸ばした。
「ちょっと見えないから返してって」
妙に偉そうに言う男子。
それを見た女子がメガネを机に置いて男子の背後に回っておもむろに胸を掴んだ。
「うおっ!! 何してんのじゃ!!」
「ハッ!! ついうっかり」
「何がうっかりだ!」
「でもそれはなんかイタズラしたくなるね。言ってたことがわかった気がする」
「ふん。俺の演技力の高さに圧倒的勝利が見えたな」
「じゃあ今ので私にもう一回やってー」
「同じ土俵で勝負か? 望むところだ」
女子が机に置いたメガネを装備すると、男子の方へと顔を差し出して『取って』というように表現した。
それを察した男子がメガネを取り上げる。
「ほーれ」
「あっ…」
「はぁ!? ちょ…」
取り上げたと同時に女子が男子の首に腕を回して顔を近づけてきた。
そして男子の目の前で女子の笑顔が広がる。
「こうしてれば目が悪くても見えるね、んっ…」
思わず女子にキスをしてしまう男子。
「…んはぁ…」
「それは反則だ」
「私の勝ち?」
「お前の勝ちでいいよ」
「やったー」
そしてご褒美のキスをもう一度する男女であったとさ。
おしまい。
このオタク友達だった二人は、めでたくカップルになりましたとさ。
30分クオリティ。




