1、第一村人?発見?
零とよばれた男は18歳。高校3年でサッカー部のエースストライカーだった。身長185のいわゆる細マッチョの体躯で少し茶色っぽい短髪で癖のないさらさらヘアー。少し切れ長のきつい目をしているが精悍な顔立ちの男前。昔いろいろあったため、基本女には冷たい。面倒見はいいため男同士や後輩には好かれている。
澪とよばれた女は16歳。高校1年。身長は160に少し届かないくらいで少しポッチャリ体型。真っ黒の少し癖のある柔らかめの髪を背中の中程まで伸ばしている。パッチリ二重で黒目がち、少し厚めの艶やかな唇。美人というよりは、おっとり可愛い系。見た目は…。
さて、そんな二人は街道を東へテクテクと歩いているのだが、森の植生やまわりを見渡し
「やっぱ異世界だよな」
「異世界ね」
などとあるまじき落ち着きっぷり。
まぁ二度目の異世界。前回は召喚されたので召喚主に掛け合い(脅し)魔王退治まで二年間いたが召喚された日時に還してもらったので無問題。
前回も二人で召喚され(零は巻き込まれ)その時のあれやこれやで将来を約束しているのでお互いがいればあとはどうとでもなると思っている二人である。
零の身体能力は森を抜ける時にある程度確認したので、ぶらぶら歩きながら澪の魔法の確認。
水の玉や火の玉。土、風や派生や結界など様々な魔法をためしつつ、魔力の確認。
前の異世界ではいわゆるチートだった二人だが、この世界ではわからない。
なにか適当な生き物に試すというのも倫理的に無理。襲われたらその限りではないが、食べる為でなくただ『殺す』というのは無理なのだ。
そこそこ確認も終わったのでゆっくり移動することもないかと零が澪を抱き上げ、軽く走り出す。軽くとはいえ、人外の身体能力である。4、50キロくらいのスピードでぐんぐん進む。
しばらく走ったところで零の感知範囲に人らしきものが引っ掛かった。人数的には7、8人といったところか…
とりあえず走るのを止め、澪を下ろす。
もう少し近くまでいかないと零の耳でも(…)話し声も聞こえない。気配を消しながら少しずつ近より、どうにか声が聞こえる所まできて止まる。
澪の魔法を使えばもう少し遠くても聞こえるが、相手に魔法に長けたものがいた場合、魔力で感知される恐れがあるため、人らしきものを感知したら、零が聞こえる(…)ところまで近よると決めていた。
感知もはっきりでき、人は8人。馬(?)が3頭。2頭は繋がれてるっぽいので多分馬車だろう。聞こえてくる話を分析するに商人と護衛のようだ。次の街まではあと一日かかるらしい。彼らのスピードで、ではあるが…
それを澪に伝えどうするかを決める。馬車とはいえせいぜい10キロ程度、零が走れば今日中には街につけるだろう。
結界も張れるし野宿でも問題ない。街に着いたところで一文無しなので宿には止まれない。
ならもう少し情報を得るためにこのまま話を聞きながら付かず離れず行こうときめた。
追い付いてもいいのだが、いかんせん二人の服装はまずいだろう。
零は濃いブルーのパーカーに黒のジャージ、ハイカットのスニーカー。
澪はライトブルーのパーカーに黒のジャージ、お揃いのスニーカー。
しかも手ぶらである。
怪しいことこのうえない。
前の異世界でも国によっては黒は嫌がられることもあった。
ファンタジーな小説などでもそういった設定のものもよくみたので、いきなり出て行くのは憚られた。
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「どうしたフィン?」
「なんか見られてる気がする」
「どこからだ?」
「右の林の方からなんだけど…」
「アルなんか感じるか?」
「いや?とくに引っ掛からないよ」
「この辺りで盗賊が出るって話も聞かんし、アルの探索にかからんってことは魔物でもなさそうだし、気のせいだろ」
今夜もう一度夜営したら明日の昼過ぎには街につくだろう。
油断はしないが気を張りすぎてもなんだしな。今回は少し期間も長かったから疲れもあるのかもしれないな、などとつらつら考えながら馬に揺られていた。
いきなり矢が飛んでくるまでは…
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「反対の林に20人くらい隠れてんな」
「近いの?」
「いや、そうでもないが…気づいてないのかな?」
「一発ぶちかます?」
「いや、お前ここからぶちかましたらあいつらの上通るからまずいだろう?!」
なんてうだうだ話してたら向こうで戦闘が始まってしまった。
弓矢で一人負傷し、一人は商人。チッ3倍以上の戦力差は厳しいか?
「いくぞ。側はなれんなよ」
「了解!」
異世界初戦闘が対人なのは面倒だなと思いながら、見捨てるって選択は『なし』だなと澪を抱えて走り出した。