頼み
「君、本当にうまそうにたい焼き食うなあ。」
店主は、微笑ましいという感じで言った。
しかし、本当にうまいのだ。
突然、店主が神妙な顔をして言った。
「高校生。修也くん、だっけ?今日は頼みたい事があって、君をここに連れてきてもらったんだ。」
人に何か物をたのまれた経験はあまりなく、僕はいつになく緊張した。店主の視線が突き刺さる。僕は辛うじて言葉を発した。
「僕で…いいんですか?」
店主も山崎さんも、驚いた顔をした。
頼みを聞く前にこんな言葉が出てしまったのは、無意識に、"頼みたいこと"の内容の見当がついてしまったからである。
彼らの反応から、自分の予想通りだと確信し、自信満々に問う。
「最近よく見る、武装した警官の関わる組織の話ですよね?」
店主はだまって頷いた。
「もう気づいているかもしれないが、君は組織に狙われている。」
あの家で気絶させられた時からおかしいとは感じていた。
その時に倉木から「君はある組織に呼び出された」という発言で、その違和感は確信に変わった。
山崎さんが、すごく言いづらそうに、口をもごもごさせている。
「あの家であったことを覚えているか?俺は本当に、申し訳ないと思っている。 組織のやつらに脅されて、ああするしかなかったんだ・・・。実は、あの時のテレビキャスターや、カメラマン、テレビ関係者は全員グルだった。家に帰ると必ずテレビを見る君を、自然な形で呼び出すのにはテレビが一番都合が良かったんだ。そこで、最近お前とよく会っているのを見られたらしい。俺を使ったんだ。」
「僕は信じてたよ。山崎さんがあんな組織と関わりがある人間だとも思えなかったし、何より、人を騙したりする人間が、あんな美味しいたい焼きを作れるわけがない!」
山崎さんはまたニヤニヤして言った。
「ありがとな。」




