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ニヤニヤ

僕は考えていた。昼下がりの教室。授業も聞かずに、中庭の、名前も知らない広葉樹を見ながら。(なにか面白い事ないかなあ)


何の趣味も無く、将来の夢も無く、何をやっても面白いと感じない彼は、いつもそんな事ばかり考えている。

考えるばかりで、何も行動には移さないが。


キーンコーンカーンコーン


また今日も、いつもと同じ道で帰る。


いつもと同じ風景に、少し嫌気がさしてきたな。

なんて事を思ってると、

「どうした~?高校生。」


横を見ると、見慣れない軽トラ。横に「たい焼き」と、でっかく筆で書かれている。その窓から、見知らぬおじさんが顔を出し、ニヤニヤと僕を見る。


「いえ、僕は元気です!」何言ってんだろう僕。


「へぇ。」

なおもニヤニヤは止まない。


「退屈だ!って顔してるぞ?」


僕はギクッとした。


人間の気持ちとはこんなにも簡単に透視できてしまうものなのか!!


「面白いもん見せてやるよ。」

手招きするおじさんの目が夕日を反射し、怪しく光る。


僕は黙って頷き、おじさんに歩みよる。

おじさんは、トラックからなにやら取り出し、僕に投げた。


半透明のビニール袋に、つぶあんたい焼きが3つ、投げ捨てた様に入っていた。


「中身はみでちゃってるんですけど!」


「まあ一口食ってみろ。」


僕は渋々と、あんのはみ出した鯛の腹部を口にした。


「!!!!!!!!」


あまりの美味しさに身震いした。

気付くと、僕は残りのたい焼きも頬張っている。

あっと言う間に3つのたい焼きをぺろりと平らげ、僕は余韻に溺れていた。


「どうだ?うまいだろぅ」

おじさんは嬉しそうにニヤニヤしている。


「うまい」

ただ一言、それしか言えなかった。そのたい焼きの美味を語るには、この世界の言語じゃ足りない。


もともと、さほどたい焼きは好きでもないが、それでもわかる。

こんなうまいたい焼き、人間の手で作れるはずがない!

表面は、うっすらとパリパリしていて、その中は、餅と錯覚するほどにモチモチふっくら。たい焼きの肝であるつぶあんは、冷め切った今でもわかるほどホクホクで、トロトロのあんとつぶあんのつぶつぶ感が絶妙な比率でマッチしている。


きっと、コレまでもコレからも、僕のゆりかごから墓場までを全部ひっくるめて、今この瞬間が一番幸せだ。


「これ、おじさんが作ったんですか?」

なんかもう泣きそうだ。声が震えてる。


「そうだよ。」

あまりにもあっさりと、そしてニヤニヤと、おじさんは答えた。

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