4話 月曜1限目ってやっぱり眠いよね。
「うっせぇ…」
学校の校門の前。
あと10分ちょいで1時間目の授業が始まろうという時間なのにもかかわらず、そこには主に女子生徒
による人だかりができていた。
女子生徒の騒ぎ声がうるさい。
「転入生だって!しかもイケメン!」
「らしいね。急ごう!」
また2人女子生徒が玄十の横を人だかりに向かって走っていった。
イケメン、ねえ…
玄十は先日会った最強男の顔を思い浮かべていた。何やらめんどくせぇことになりそうな予感がする。
とりあえず昇降口に向かうために人ごみのわきを通り抜ける。
「あの…えぇっと…ちょっ、すいませ…あっ?」
「………」
人ごみの脇を通る際、大勢の女子生徒に囲まれて困惑している件の転入生と目が合った。
そう。そこには、何か知らんがうちの制服を着たスカイがいた。
そして立ち止まる俺。
「玄十くん!助けてー」
「……」
助けを求められた気がした、が気のせいだろう。
早く教室に行かないと遅刻してしまう。
そして玄十は再び昇降口へと歩き出した。
「なんでさぁぁー……」
背後には誰かの叫び声が響き渡っていた。
まあ、助けた。一応。
助けたといっても、あの人ごみからおもいっきり引っこ抜いただけなのだが。
「いったー…あ、ありがとう。でもさ……」
引っこ抜かれたスカイは尻餅をついている。
「何?」
「もっと他にやり方…なかったかなーと思って」
「無かったな」
「絶対あったよね…玄十くん意外と酷い」
うぅ…と、若干涙目で立ち上がるスカイ。
「おうクロト。遅刻すんぞ〜。お?もしや最強闘手のスカイさん?なんでうちの制服?」
「おはよーございますクロトさん。」
「おはよう。てかお前らのが遅かったろうが、カイ」
そこへ、カイとミラもやってきた。
「はじめまして。実は今日からこの学校に…ってうわ時間!!職員室ってどこ!?」
「入ってすぐの階段を上がって右だ」
「ありがとう。それじゃあまた後でぇぇー…」
そう言いながらスカイは走っていった。
「なんていうか…最強って感じじゃないですね…」
「ああ、そうなんだ。まあ、俺たちも教室に急ごう。あと1分しかない」
「うお!?急げ!!」
そうして玄十とカイは同学校中等部のミラと別れ、自分たちの教室へと急いだ。
まったく、なんつー1日だ。今日は…
「スカイです。よろしく」
「じゃあ、あの席だね。座っていいよ」
なんなの、マジで。
なんで同じクラス…なんで隣の席。
昨夜スカイが言っていた「会うよ。早ければ明日にでも」という言葉を今さらながら思いだした玄十は、こういうことだったのか畜生、と肩を落とした。
別に何かが悪いとか、こいつが嫌いとかってわけじゃない。
ただなんとなく、知ってる匂いがする。
自分でもよく分からないのだが、匂いというのか、雰囲気というのか、一緒にいるときに感じる何か。
嫌いではない。いや、むしろどちらかというと心地良いとすら感じるくらいのこいつのそれがなんとなく知っている気がして、カイやミラの、自分が慣れているそれとは違う気がして、変な感じなのだ。
「よろしく、玄十くん」
「なんで隣なんだ」
「先生たち気前良くてね。クラスも席も指定させてくれたんだ」
玄十は「はぁ」とため息をつく。
「どうしてスカイはこんなに俺に構うんだ?」
「それは、だって玄…」
「はいじゃあ授業始めます。そこ静かになー」
と、ここで数学教師の一言で会話は途絶えてしまった。
「あ、じゃまたあとでね」
超どうでもいいことだが、こいつとの話には「またあとで」が多い気がする。
「んでここが2Xになるから、ここはこうなるよな。カイくん大丈夫け?」
「ぇあ?あぁ~…はい大丈夫っす!?」
数学教師はカイに説明が足りてるかと質問をする。
そして、毎度のことだけど絶対に大丈夫じゃないだろお前。と玄十は心の中でツッコミを入れた。
「はいじゃあ次は問12な」
しかしさっきの、どうしてスカイはこんなに俺に構うのか、という話の続き、小さい声で話すとか紙に書いたりすれば席も隣なんだから十分できるんじゃないだろうか。
一度そう思ったがスカイは妙に真剣な顔で授業を聞いていたため、それは止めることにした。
つくづくよく分からん奴である。
因みに玄十の場合授業中はほとんど寝ている。特に休み明けの月曜は舞闘技会で疲れてるから寝ずにはいられない。
そして、疲れのせいか、数学の授業のせいか、今日もまた眠い。
「玄十くん、ここってどうすればいいの?」
いつものように瞼を閉じ、船を漕いでいた玄十に隣の席、スカイから声がかかる。
解らない問題があったようだ。
「ん?あぁ、ここはこうして…こうなって…いや、こう…だな。」
「おお…!すごい、ありがとう」
解くとスカイは目をキラキラと輝かせこちらを見てくる。
「お、スカイくん出来たか? あーちょっと惜しいな。もっかいやり直してみ。分からないところは玄十くんに聞いてな。」
地味に間違ってたし。…すまん。
そして先生、それを解いたのは俺なんだ。
「悪い…」
「寝てるからだよ」
スカイがジトッと半眼で見てくる。
「ん。そうだな…」
担当の先生が過ぎて行ったのを確認すると同時、玄十はスカイの視線を半ばスルー気味に、自分の腕を枕にして寝る態勢をとる。
「ってなんで言ったそばから寝ようとするの?」
「眠いもんは眠いんだ。仕方ない」
本当に眠い。特に今日は今朝のこともあるからかいつもより一段と眠い。
疲労で死んでしまいそうだ。
そして玄十は再び重い瞼を閉じた。
「全く…よく寝るところも変わらないなぁ」
意識が薄れていく中、隣から何かが聞こえた気がしたが、俺は構わずに夢の中へと沈んでいくのだった。
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