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3話 腕枕の盗人(?)

3話目です。



「我は剣なり。汝、我と契約せよ」


まただ。また聞こえた。

今のはなんだったんだろう。

玄十はいつもの平日より早く目を覚ました。

 右腕に少し重みを感じる。

昨日、少し重いのを受けたからだろうか。

「ふあ〜あ…ん?まだこんな時間かよ、二度寝すっ…………??…」

 違った。右腕の重みの正体である。

 玄十は唖然とした。


 それはまさに天使だった。

眠れる天使が玄十の腕に頭を乗せていたのである。

あぁ、いや天使というのは比喩で白く綺麗な髪を肩の辺りまで伸ばした可愛らしい女の子だ。

つまりまとめると、可愛い少女が俺の腕枕で寝ているのである。


「………………………えぇー…いや…は?」

 なにこの状況。誰こいつ。

泥棒か?いやでも家には盗まれるもんなんて何もない。それに寝る前に鍵はかけたはず。鍵をかける前に侵入された…?

ありえねえ。俺に気付かれずにここに侵入するとか、無理に等しい。じゃあ外から鍵を開けた?それはある。もしその手の方法を知っていれば不可能ではない。

っていやいや、まず泥棒だったらここに寝てる意味がわからん。トンズラだろ普通。

いや、もしこいつが俺に気づかれずに侵入するというその無理に等しいことをやってのけ、その上で俺を舐めきってここで寝てるという可能性も…。それをする意味がわかんねーよ。

何なんだマジで。

もうわっけわかんねぇ、なにこれ…?


「…ん………………?…」

「…………」

 天使(仮)が起きてこちらを見た。


「……えっ??え?ここどこ?何?なんなの?」

「な、何でしょうね」

 びっくりしてらっしゃる。まあそうだろう。

知らない所で知らない男と一緒に寝てたとあれば誰だってびっくりするだろう。……っておい、びっくり?

しかもこいつ今ここどこって言ったぞ。

じゃあ何?こいつ泥棒じゃないってことなのか。

……それはまずい。かなりまずい。いや泥棒でも十分まずいんだけど。何がまずいかというと、

つまり天使(仮)は泥棒説が消えた。いや消えてないか?ただ単にこいつがしらばっくれてるという事もありえる。でも起きたばっかでそんなに機転が利くとは思えん。だったら狸寝入りって考えも……だからなんでだ。んなことする意味が分からん。

…てかこれ考えても無駄じゃね?なんなの俺。

ああ、話の線がずれた。まあ何がまずいかっていうと、天使(仮)は俺やこの場所に見覚えがないとしよう。その上で天使(仮)はこの部屋で寝ていた。

ということはつまり、俺は全く身に覚えがないし、記憶もないが、もう一度言う。俺は全く身に覚えがないが、これはつまりだ、必然的に俺がこの天使(仮)を誘拐したことになってしまうのではないだろうか。

これがまずいところだ。

まあ、そうじゃない線もあるわけで。ってか普通に考えればこいつがしらばっくれてて泥棒って線のが当りだし、それに俺は誘拐なんてしてないし天使(仮)も知らないってんだったら天使(仮)はどうしてここにいるんだっつー話になるわけで………


「えっと…ゆ、誘拐?」

「してない」

 ビンゴじゃねぇか畜生。そして即答する俺である。


「それならなんで私はここにいるの?」

「知らないよ。それに、んなこと俺が聞きてえ」

「じ、じゃあ外に出してよ」

「ああ、いいよ。てかさっさと出てってくれ」

 呆れ気味に答える。

一度、盗んだもん置いてけ、的なことを言おうとしたが、ここには盗まれるような物は無く、大事な物はギルドに預けてあるし、それ以前にめんどくせえので止めた。

見た目がえらい美人でも泥棒かもしれないようなやつと一緒にいるなんて不愉快極まりない。

さっさと出ていってほしい。


「私の靴は?」

「だから知らない。気づいたら隣にあんたがいたんだから」

 靴が無いらしい。無いわけが無いと思うが。

確かに玄関には見覚えのある靴しか無い。


「じゃあどうして私はこんなとこにいるのよ」

「知らないよ」

「だから誘拐し…」

「してない」

「だったらもうこれでいいだろ。早くどっか行ってくれ」

 玄十はあまり履かなくなった靴を1組出す。

天使(仮)はその靴を履き、玄関のドアを開けた。

 そこには石畳と、形はさほど変わらないが大小さまざまな家が建ち並んでいる。

今の時間帯ではまだ外は静かだ。


「どこ?ここ…」

「セイヴの南街、の中心より少し西の方」

「?? どこ?」

「ルーンベルグ大陸のルーン大渓谷の近くの街」

「知らない…」

 知らないのはおかしい。ルーン大渓谷も、この街もかなり有名な場所のはずである。


「………………………」

「んだよ。さっさと出てってくれ。俺にだっていろいろ…」

「…なに、これ…?街の名前どころか、何も思い出せない…」

「は?」

 今度は一体なんなんだ。

これも芝居か?

玄十はいい加減にしてくれと思うものの、これはそうは見えない。


「ってもうこんな時間かよ…」 

 気づくと、外にも人が見え始め、少し騒がしくなってきていた。

時計を見るとすでに8時を回っており、いつもならすでに家を出ている時間である。

寝巻だった玄十は部屋に戻り、急いで身支度を整える。


「一応聞くけど。あんたさ、ほんとにこの場所に見覚えないのかよ?」

 なぜかは分からない。しかし玄十は気づくとそんな事を聞いていた。


「あなたが誘拐したんでしょ」

「だからしてないっつの…ま、俺はもう行くからあんたもさっさと出てってくれよ」

 天使(仮)が出て行き、そのあと玄十もすぐに家を出た。

 彼女の言葉を信じるなら、彼女は記憶がなく、本人も知らないままここに現れたことになる。

あり得ない話だが。

現れたとしても、なぜここなのだろう。

何か、何かあるのだろうか。


「我は剣なり。汝、我と契約せよ」

 あれはなんだったのだろうか。

ただ、その言葉がひどく耳に残った。

読んでくれてありがとうございます。


3話目にしてやっとヒロイン的人物が登場です。


感想等くれると嬉しいです。


頑張ります。

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